【あらすじ】
クリスマスの朝、ホームズの元に拾い物の帽子とガチョウが届けられた。帽子は預かり、ガチョウは拾い主に戻す。特徴ある帽子を材料に、その持ち主の人物像をホームズがワトスンに推理を披露していると、拾い主が、ガチョウの中から「青いガーネット」が出てきたと知らせてきた。それは新聞紙上でにぎわせている盗難された宝石で、盗んだとされる容疑者も既に逮捕されていたが、宝石はまだ発見されていなかった。
ホームズは帽子の持ち主から丹念に推理を辿っていき、「青いガーネット」の秘密を探り当てる。

【感想】
ひょんなことから意外な展開に移るのが、ホームズ物語の魅力のひとつで、この作品はその好例。
まずは拾い物から、宝石盗難事件に発展するところが素晴らしい。冒頭の帽子を巡る時間つぶしのような「推理合戦」が、本筋にいきてくる。ガチョウと宝石の組み合わせが意外で、その後の展開が読めない。
何よりも本来は「宝石盗難事件」だから、宝石の行方を追跡するもの。しかし本作品は宝石のありかが先にわかっているので、「ガチョウ」の足取りを追っかけていくストーリーになっているのが面白い。そのため、本人たちは真剣なのだろうがなぜか滑稽味を感じる。ホームズが「南向け南、早足前進!」と言ってガチョウの足取りを追いかけていくのも、そんな雰囲気を盛り上げている。
また「最後の1人」を除いて、宝石盗難事件とは全く縁のないバーや仲買人の主人とのやりとりが、生き生きと描かれている。特にホームズとガチョウの仲買人とのやりとりは、市井(しせい:世間)の生活をよく知るドイルの真骨調であろう。
*ミステリーチャンネル
この作品でほかに特徴的なものが2つある。1つは、「盗んだ物をある所に隠して、それを取り返すために右往左往すること」。この特徴は後に特化され、有名な作品に昇華する。
もう1つは「犯人を逃がす」こと。この作品の前にもあるが、ホームズが犯人を逃がす作品は意外と多い。本作品では犯人の性格をみて、逮捕したら「更生の見込みはない」と、かなり踏み込んだ判断をしているが、ほかの作品では人情あふれる判断をしている場面も多い。これも1つの「クリスマス・プレゼント」だろうか。
「私は警察とは違うから」とホームズはよく言っているが、市井の人情をよく知るホームズ(そして作者ドイル)。イギリス版の「大岡裁き」となっている。