名作少女マンガ『BANANA FISH』が2018年にアニメ化しますね。かつてアッシュ・リンクスに夢中になり、最終巻を号泣しながら読んだ老若男女は「マジかよ〜!」と叫んだことでしょう。私もその1人です。
ド傑作のアニメ化ゆえに、宣伝にも力が入っています。池袋駅のサイネージに大きく表示された「BANANA FISH」の文字。本作の連載は1985〜94年ですので、2017年にアニメ化の文字を街中で見ると、時空が歪んだ気持ちになってきます。ちなみに最近の池袋は時空が歪み続けており、「封神演義」(1996〜2000年)アニメ化や「少女革命ウテナ」(1997年)企画展の宣伝がバンバン出ていてドキドキします。
『BANANA FISH』は、主人公のアッシュと英二の絆、男たちのバトル、憧れや執着や嫉妬という男同士の濃密な感情、幸福な出会いと悲しい別れ、当時の病んだアメリカの社会背景――などなど、ありとあらゆる面白い要素をギュっと詰め込んだ“全部盛り”のエンターテインメント作品です。
アニメ化を契機に「原作沼」にハマるのもおすすめですが、世界により深く潜っていける本を読んでみるのはいかがでしょうか?
「BANANA FISH」ファンで、元書店員、現出版社の編集者であるロボさん(30代男性※仮名)に、架空のブックフェアリスト「『BANANA FISH』からひろがる読書」を教えてもらいました。
【ロボさんコメント】『ナイン・ストーリーズ』は言うまでもなく外せない1冊です。“BANANA FISH”の由来となる「バナナフィッシュにうってつけの日」が収録されています。ヘミングウェイの作品群は作中人物が愛読しています。「君はヘミングウェイの小説に出てくる豹の話をしてくれたね」――ヘミングウェイを読んだ後で「BANANA FISH」最終話を読むとさらに泣けるはず。
【ロボさんコメント】大友克洋の影響はよく指摘されていることではありますが、物語の構造や先行作品との関係性を考えるうえで非常に重要です。『AKIRA』は、謎のクスリが物語の中心にあるという共通点があります。さらにアッシュ、オーサー、ショーターの関係性を金田正太郎、島鉄雄、山形に重ねてみると面白い。ちなみに外伝の「光の庭」にでてくる伊部の姪(めい)の名前は、言うまでもなく先行作品へのオマージュです。『格闘する者に○』は漫画を読んでいると、絶対に「ニヤッとする」一節があります。
【ロボさんコメント】作品の舞台や社会をより楽しむためのセレクト。中でも『孤独の要塞』は『BANANA FISH』と同時代のポップカルチャーがわかります。
【ロボさんコメント】『BANANA FISH』で描かれている「病んだアメリカ」を知るための4冊。映画化もされた『ギャング・オブ・ニューヨーク』は漫画よりだいぶ前の社会を描いているのですが、その後につながる「犯罪都市」がどのように成立したのかを知るのに重要な1冊。
【ロボさんコメント】『BANANA FISH』の背景にあり、全ての始まりともいえる「ベトナム戦争」。この戦争はさまざまな物語を生み出しています。
【ロボさんコメント】クスリとしての“BANANA FISH”をめぐるドラッグとその周辺文化あれこれ。『コインロッカー・ベイビーズ』をあげたのは、この作品のキーワードに「ダチュラ」というのがあるけれど「バナナフィッシュ」の原型が「ダチュラ」(ブルグマンシア)の突然変異株という設定があるためです。
【ロボさんコメント】「アッシュと英二の関係はBLなのか?」は永遠のテーマですが、アッシュと英二に表象される関係性は、マンガという表現形態の中でさまざまに描かれてきています。少女マンガで人々の魂がどのように描かれてきたのかを知るのに最適な2冊です。
【ロボさんコメント】天才アッシュ・リンクスが心を安らげる場所として、印象的に描かれるニューヨークの図書館(作中では「ニューヨーク市立図書館」と表記)。実際にどのようところなのかを知るのに最適。『死ぬまでに〜』『世界の〜』の写真はすごくきれいです。
【ロボさんコメント】作品の主要舞台ニューヨークを案内してくれる本。どれも読んでも面白いです(「地球の歩き方」はオマケで入れました)。地下鉄ガイドは、作中の銃撃戦と合わせてぜひ読んでくださいね。ただ、これは最近のガイドなので、作中の時代とは線が変わっている可能性もあるかも。
【ロボさんコメント】「いまの若い人は『BANANA FISH』自体を知らないかも」というコメントも耳にしたので、現在連載中で映画化もされた『海街diary』を起点にした紹介もいいかもしれません。
内容がリンクする『ラヴァーズ・キス』を手始めに、『吉祥天女』→『河よりも長くゆるやかに』→『カリフォルニア物語』→『BANANA FISH』という順で読んでいくのがおすすめ。「家族の物語」→「ジェンダーとサスペンス」→「友愛性」→「病んだアメリカ」という流れで吉田作品に伏流するテーマを一通り読めます。ついでに絵の変化もみえて楽しいです。
「残念ながら絶版本も多く、ブックフェアとしては実際は成立しづらいかも」とロボさん。しかしこれを全部読めば『BANANA FISH』がより深く理解でき、より深く楽しめること間違いなしです!
ちなみに私はというと、このリストの中で3冊しか読んでいませんでした……。修行します。
(青柳美帆子)
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