ガチャの確率表記をめぐり訴訟問題に発展している、スマートフォン用ゲーム「THE KING OF FIGHTERS '98 ULTIMATE MATCH Online(KOF98 UM OL)」に、また新たな問題が浮上しています(→前回の記事)。
これまで同作は、東京都にあるOURPALM株式会社が運営していると表記されていました。ところが運営元は3月30日に突如、公式サイトで「ホームページに誤記載があった」との謝罪文を掲載。OURPALM株式会社は同作とは一切関係のない会社で、実際は中国・北京にあるOurpalm Co., Ltd.が運営していたと発表したのです。
運営元はあくまで「誤記載」と主張していますが、ユーザーからすれば「日本企業だと思っていたら中国企業運営だった」というのは小さくない問題です。また、規約で定めている「契約相手」も当然変わってくるため、そのまま運営を続ければ個人情報保護法違反に問われる可能性も出てきます。
そもそもの発端は、人気キャラクター「クーラ」が出現するガチャキャンペーンにおいて、実際の出現率と、ゲーム中の確率表記が大きく異なっていたことでした(詳しくは前回の記事を参照)。これに不満を感じたあるユーザーが、運営元を相手に返金訴訟を起こすことを決意。そこで訴状を送ったところ、なぜか「宛先不明」で戻ってきてしまうという事態が発生します。その後、不思議に思ったユーザーが「特定商取引法に基づく表示」で示される会社住所のビルに問い合わせてみると、「そのような会社は入居していない」と言われてしまったとのこと。
オンラインゲームの運営会社は本来、サイトに正しい会社名や住所を表示することが特定商取引法により義務付けられています。そもそも入居していない場所を住所として記載していたのであれば、これは明確に特定商取引法違反となります。ここまでは前回の記事で触れた通りです。
今回、運営側が「誤記載」のお知らせを掲載したのは、こうした一連の騒動を受けてのものとみられています。お知らせによれば、これまで「特定商取引法に基づく表記」に掲載されていた「OURPALM株式会社」は、Ourpalm Co., Ltd.とは何ら資本関係・取引関係のない会社だったとのこと。お知らせ内ではOURPALM株式会社に対し「多大なるご迷惑をおかけいたしました」と謝罪もしています。
確かに、サイトに記載されていた運営元情報がそもそも間違っていたのであれば、訴状が届かないのは当然です。OURPALM株式会社は、今回の件とは一切関係がないのに、名前だけ「誤記載」で載ってしまっており、おまけに訴訟まで起こされそうになっている「被害者」ということになります。
――しかし、もしもサイトのお知らせ通り、Ourpalm Co., Ltd.が本当の運営元であったとすると、今度は別の問題が浮上してきます。
問題となるのは「利用規約」の部分です。「KOF98 UM OL」の規約内では現在も「OURPALM株式会社が日本国内を対象として提供するアプリケーション」とはっきり記載されており、プレイヤーはOURPALM株式会社とは契約していても、Ourpalm Co., Ltd.とは契約を結んでいません。となると、そもそもこの利用規約自体がまず無効ということになります。
また、もう1つの問題となるのが個人情報の取り扱いです。規約の第9条「個人情報およびその取り扱い」では、「当社は、お客様が本サービスを利用するにあたり、個人情報その他お客様に関する一定の情報を取得することがあります」と定めていますが、この場合の「当社」もやはりOURPALM株式会社のことであり、ユーザーはOurpalm Co., Ltd.が個人情報を扱うことには同意していません。
もちろん、ゲームのデータが必ずしも全て個人情報に当たるわけではありませんが、規約に書かれているように、Ourpalm Co., Ltd.が個人情報にあたるデータを少しでも取得しているのであれば、これは明らかに個人情報保護法違反となります。また、そもそもこれまで日本企業運営だと思ってデータを預けていたのに、ある日突然「実は中国企業が運営していました」と言われても、すぐに納得できないユーザーは多いでしょう。
そもそも当初の問題であった「有利誤認疑惑」と「特商法違反」についても解決していない状態で、今回また新たな問題が判明してしまったKOF98 UM OL。
果たして問題が解決し、安心して遊べる日はくるのでしょうか。一時代を築いたSNKの看板シリーズだけに、その名を汚さない決着を望みたいところです。
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