先日、「コミティア」(自主制作漫画誌の展示即売会)に行った際、関西で行われる「関西コミティア」の告知チラシが机の上に置いてありました。何気なく目をやったそれに、はっと目を見開いてしまいました。そのチラシの告知イラストは、サークル「キューカンバー!」さんではないですか。「わ、私も読んでます!」と、会場でチラシを手に、同行していたうちの総メイド長に熱く語ってしましました。
「星と見習い」 B5 20ページ 表紙カラー 本文モノクロ
「あおばやし第三公園」 A5 12ページ 表紙1色刷り 本文色擦り
著者:食べこぼし
作者さんはオリジナルのマンガを描かれています。どれもしっかりと描きこまれた、でもどこか素朴な線と、二足歩行の猫がしゃべっていたり、人でないものがいたりするような不思議な世界観がマッチした作品です。数々の作品の中から、今回はどちらも女の子が主人公の2作品をご紹介します。
「星と見習い」は夜空に浮かんで、宇宙を繕う仕事をしている女の子のお話。大きなお裁縫セットを背負って、星と星をステッチでつないで星座を表したり、ミルクを流して天の川を作ったりと、こまごまと働く見習いさんです。背中に持った糸巻きリュックがかわいいですねー。お仕事の間には、宇宙にふんわり浮かんで、お茶とクッキーで一服したり、忙しいけれど充実した日々です。
しかし、その宇宙に小さな“青緑の星”があることに気付いてしまってから、彼女の胸にざわめきがやってきます。ぴかぴか光る小さな星をちらりと横目で見ながら女の子は思うのです。「どんなに仕事が上手くいってても あれを見ると なあんでだか 妙にがっかりするんだ」と。このせりふ、私の胸にもざわっと波が立ちました。そして、この時の女の子のデフォルメされた表情がまたいい! つながった眉毛と大きな目が強調された顔は、彼女が抱えてしまったもやもやを、そのまま読者に伝染させるような不安さを感じさせます。
「あおばやし第三公園」は、間違い電話からストーリーが始まります。日常を感じさせつつ軽やかな雰囲気は、安房直子さんの短編小説のような世界です。交流する2人。そのお洋服や電話の形が、何気なくかわいらしくて、ほのぼのと読んでいたら……最後は思わぬ形で幕が引かれる、「えっ!」という展開でした。
「星と見習い」も「あおばやし第三公園」も、ほのぼのとした世界をまとっているのに、それだけでは終わらないんです。ふと忍び寄る心の揺れが描かれる前者と、あっと驚くショートストーリーの後者では方向性が違うのですが、2つの作品に共通しているのは読後感の余韻かなと感じました。めでたしめでたしで終わらないラストは、心の中にふっと影を落として、妙に後を引きます。ひとつかみしたこんぺいとうの中に、ほろ苦いかけらが紛れ込んでしまったような……。でも、そういうささやかな寂寥(せきりょう)感とか、心の隙間風に身を任せるって、なんだか悪くない気分なんです。
春の夕暮れはぼんやりかすんで、ふわふわ暖かいのだか寒いのだか、どっちつかずの不思議な空気。この世界のどこかで、奇妙なできごとが起こっているのかも、と空を見上げてしまうような作品たちです。
サークル名:キューカンバー!
Twitter:@uzunyan620
pixiv:http://www.pixiv.net/member.php?id=5268481
入手先:アリスブックス(在庫少ないようですが、近日追加予定)、「あおばやし第三公園」はイベントのみでの頒布
次回参加予定:関西コミティア50、東京コミティア120に申し込み中
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