入場すると、うずまきナルト、スーパーマリオ、月野うさぎ、江戸川コナン、鹿目まどか、天上ウテナ……この四半世紀で登場したヒーローやヒロインたちとご対面。手塚治虫が亡くなった1989年以降の日本のマンガ、アニメ、ゲームを総合的に展望していく展覧会「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」展が、6月24日から国立新美術館(東京都港区)で始まった。
同展ではジャンルの垣根を越えた130作品を8つの章で構成。「未来の科学技術を描いた作品(第2章)」「日本の現実社会を映しだした作品(第7章)」など8つの切り口を通して過去25年間の作品に触れることで、マンガ、アニメ、ゲームがいかに日本の社会と結びつき、刺激をもたらしてくれるメディアなのかさまざまな発見を与えてくれる展覧会となっている。
「太鼓の達人」のアーケードゲーム版が遊べたり、「アイカツ!」のデータカードダスでカードを購入できたりと、その場で体験できる展示が多いのも見所の1つ。会場の様子を章ごとに紹介していこう。
アニメ「NARUTO‐ナルト‐」のうずまきナルト、マンガ「名探偵コナン」の江戸川コナン、アニメ「魔法少女まどか☆マギカ」の鹿目まどかなど、1989年以降に誕生したヒーロー、ヒロインを16タイトルから紹介。マンガ・アニメ・ゲームが持ち続けてきた「王道」たる熱気あふれる作品を伝える。
アニメ「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」や「サマーウォーズ」など科学技術の進歩した未来を描いた作品や、ゲーム「ファイナルファンタジーVII」やアニメ「青の6号」などデジタル映像技術を駆使した作品が並ぶ。描かれた予言的な未来はどんどん現実のものとなり、こうして発達した技術を使ってまた新たな作品が生みだされていくという、マンガ、アニメ、ゲームが未来の想像力をリードし続ける姿を紹介する。
アニメ「ほしのこえ」やカゲロウプロジェクトによる「メカクシティアクターズ」など、個人/同人制作や二次創作を中心に、ネット社会を背景に生まれた作品を紹介。設置されたパソコンで「東方紅魔郷〜the Enbodiment of Scarlet Devil.」「ひぐらしのなく頃に」など、ネットでブームを巻き起こした同人ゲームもプレイできる。
ひとり部屋にこもって遊ぶものではなく、他者と交流する「コミュニケーションの場」へと進化したゲームを展示している。対戦ゲーム「ストリートファイター」シリーズはキャラクターの身体を借りてほかのプレイヤーと拳で語らうツールとして紹介。「beatmania」「DanceDanceRevolution」といった音楽ゲームは優れたプレイで観客を魅了できるツールとして紹介しており、「太鼓の達人」は実際にアーケード版を設置して場内でプレイすることが可能だ。
「アイカツ!」ではアイドルの卵、「パワフルプロ野球」ではプロ野球選手、「戦国BASARA」では歴史上の人物といったように、さまざまな「キャラクター」たちが生きる「世界」を表現した作品を紹介。「けいおん!」のメンバーと記念撮影できるコーナーがあったり、「Free!」で水着姿の主人公らが肩を組み合うシーンのラフ絵があったりと、キャラが堪能できる展示が魅力的だ。
アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」や「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」など、「日常」と「非日常」が交差する作品を紹介。作中のキャラたちが「シリアスな問題がすぐそばにあるのに平凡な日常を過ごしてしまうのは、かえって現実世界の私たちの姿に近しく見えないでしょうか」という解説にうなずいてしまう。「新世紀エヴァンゲリオン」では、TVアニメ全26話の映像が26台の画面で一挙垂れ流しにするという、目を引く展示がなされていた。
現実とリンクしているというマンガを42作品、原画や複製原画を回廊に並べて一挙展示。震災がテーマの「いちえふ」のように現実の流れをいち早く昇華した作品や、将棋マンガ「3月のライオン」などマイナーな職業・趣味を描いた作品、「君に届け」「アオハライド」など学校や恋愛を題材にした作品……マンガは実社会と接点を持った作品が多く生まれるメディアであることを紹介する。
作品に対し作り手がどれだけの苦労を重ねているのか制作過程を紹介していく章。アニメーターの板野一郎がわずか5秒間のカットに119コマを費やし壮絶なミサイル発射シーンを表現した通称「板野サーカス」や、マンガ「GANTZ」における3DCG制作など、あらゆる作り手の「手業」が展示されている。
「ニッポンのマンガ*アニメ*ゲーム」展、国立新美術館での会期は6月24日〜8月31日。開館時間は午前10時から午後6時まで、金曜日は午後8時まで(入場は閉館30分前まで)。入館料は当日券が一般1000円、前売券が一般800円。9月19日から11月23日までは兵庫県立美術館(兵庫県神戸市)でも開かれる予定だ。
(黒木貴啓)
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