日本科学未来館(東京都江東区)で開催されたDIGITAL CONTENT EXPO(10月23〜26日)において、「ボーカロイドオペラ葵上 with 文楽人形」の上映と制作陣によるトークショーが開催された。
ボーカロイドオペラ葵上はボーカロイドの楽曲にあわせて文楽人形が演じて舞う、伝統芸能と最新技術が融合した映像作品。7月にイギリス・ロンドンの日本文化紹介イベント「ハイパージャパン」でプレミア上映された。トークショーでは、プレミア上映前に解説を行った三原龍太郎氏(オックスフォード大学大学院)が、文楽とボーカロイドの関わりや葵上の簡単な解説を行った。
ボーカロイドオペラは、源氏物語の「葵」を元にした能の「葵上」(2次創作)をさらに現代劇に翻案した3次創作となっている。光源氏がボカロP、葵がボカロPによって見出された歌手アオイ、六条御息所がかつてボカロPが使用していたボーカロイドのミドリ、という設定だ。
新作アルバムレコーディングの日にアオイが失踪し、発見された病院にアオイのマネージャーが駆けつける。失踪の鍵となっていたのは、かつてボカロPが作曲したミドリの歌だった――というストーリー。
上映後のトークショーでは、作詞作曲の田廻弘志氏、プロデューサーの田廻明子氏、映像ディレクターの加納真氏、映像撮影の田巻源太氏が登壇し、ボーカロイドオペラ制作の舞台裏を紹介した。
当初、田廻弘志氏は能「葵上」を翻案して曲を作ったものの、映像制作の予定はなかった。しかし昨年開催された世界ボーカロイド大会で、人形浄瑠璃の人形遣い・吉田幸助氏らが文楽人形でボカロ曲を舞った「メルトの舞」を体験したことから、文楽人形での映像制作を思い立ち、ボーカロイドオペラ制作チームを結成した。
文楽人形の動きは独特に誇張されており、たとえば歌舞伎の見得や六方などはもともと文楽人形の動きが取り入れられたもの。その上でボーカロイドオペラを文楽人形で表現するのは人形遣いの吉田氏にとっても前代未聞の挑戦。このため、舞台上での人形の動きを模式化した動画を田廻弘志氏が作成し、さらに撮影現場でもそのつど曲の解釈を行ったという。
文楽人形の衣装や髪型はプロデューサーの田廻明子氏によると、現代劇でありながら元となった源氏物語の時代を表現したとのことだ。
歌声ライブラリー「猫村いろは」「結月ゆかり」で協力したAHSの尾形友秀社長も会場に駆けつけた。2020年の東京オリンピックに、日本の伝統文化の文楽と現代文化のボーカロイドの2つで開会式などを飾ることができたら、と抱負を語った。
※ボーカロイドはYAMAHAの登録商標です。
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