2014年5月12日にプレオープンした「Hackers Bar」。公式サイトの説明によると、「ハッカーがおもてなしをするバー」だそうな。「ハッカー」と「バー」。この、異色(?)だけどなんとも興味をそそる組み合わせ。これは行かねば! 行かねばならぬ!! そういうわけで行ってきた。
目指す「Hackers Bar」は六本木に。恐る恐る中に入ると、そこにはおしゃれ空間が。カウンターにMacが置いてあるのがちょっとそれっぽい空気を漂わせているものの、一見よくあるバーと大きく変わらない。
「な〜んだ。ただのバーか」とガッカリしながらも、とりあえず何かを注文。何気なくカクテルのメニューを見てみると……! 「ハッカー・イン・ザ・デス」「スパゲッティ」「ブルースクリーン」って何ぞ!!? ほかにもハッカーにちなんだ名前のカクテルがたくさん。
さすがは、ハッカーズバー。とりあえず「一番Hackers Barっぽいメニューをお願いします」と注文してみた。
出てきたのはおいしそうなハイボール「ハッカーズハイボール」だ。これは、ウイスキーのドクターペッパー割りという斬新で絶妙な組み合わせの一品。聞けば、このメニューはとあるドクターペッパー好きエンジニアのために作られたものとのこと。「お酒好きにはたまらないおいしさです」と店主は言う。
続いて、どうしても気になった「ブルースクリーン」を注文。見た目は鮮やかだが、口にするとほんのりダークな苦みが。思わずほろ苦い経験を思い出す。
3杯目は“スパゲッティコード”にちなんだカクテル、その名もずばり「スパゲッティ」を注文。店主いわく「決して飲んではならないもの」だそうで、残念ながら写真はお見せできないが、とにかく薄気味悪いお酒が出てきた。味はなんとも言葉では表せない、ドギツ〜イ感じの味。
Hackers Barを経営しているのは、遺伝情報ストレージサービスなどを行っている「ヒメナ・アンド・カンパニー」代表取締役の中尾彰宏氏。医学部生でありながらプログラミングが好きで、卒業後はミクシィなどのIT業界でエンジニアをしていたという経歴を持つ。そんな中尾氏が今回「Hackers Bar」を始めた理由を聞いた。
「エンターテインメントとしてのものづくりがしたかったんです」――中尾氏は語る。そして、「Hackers Bar」の原点となった1本の動画を見せてくれた。
この男性は毎晩のように、ストリートでひっくり返したバケツをドラムの代わりにして演奏し、一晩でなんと200ドルを稼ぎ出すという。彼を初めて見たとき、たとえ楽器がバケツであっても、高い演奏技術さえあれば十分にエンターテインメントとして成立するということに中尾氏は感動。それならばハッカーが持つ技術もまたエンターテインメントにできるのではと考えたそうだ。
「Hackers Bar」ではドラムは叩かないが、代わりにバーテンダーがライブでコーディングを行い、お客さんはそれを見ながらお酒を楽しむ。「お客さんの注文を受け、バーテンダーであるハッカーがその場でコーディングする。お客さんはそれを見てバグを見つけたり、もっとこうした方がいいといったアイデアを出したり、あるいはお客さんとして来ていた別のハッカーやデザイナーと出会ったりする。そんな場所にしたいんです」と中尾氏は話す。
ちなみにこのバー、もともとは中尾氏がお客さんとして通っていたお店で、ある日オーナーが「(このお店)買わない?」と話を持ちかけたのだそう。それを聞いた中尾氏は、10分ほど考えたのち買収を決断。そのことを何も知らず会議室に集められた社員たちは、知らせを受けて「ふぁ? え? お〜」と飲み込めない様子だったという。それもそのはず、昨日までWebサービスを作っていた人たちが、希望すればバーの運営に関われることになったのだ。
今後「Hackers Bar」では、例えば「コースターにRFID(非接触データ送受信チップ)を仕込む」といった実験場としての試みや「いくら以上のボトルを注文するとバーテンダー(ハッカー)の時間が買え、ものづくりの注文ができる」といった仕組みも考えているようだ。
Hackers Barの本格的な営業は6月から。営業時間は、午後8時から午前1時まで(定休日は、土・日・祝日)。もちろん、ハッカーの命となる電源・Wi-Fiも完備されている。
なお、本格営業に向けて5月16日よりスタッフを募集。募集職種は「ハッカー」と「一般スタッフ」に分かれており、ハッカーに応募する場合は「Perl、PHP、Python、RubyなどいずれかのLL(lightweight language)スキル、Objective-C、Javaによるネイティブアプリ開発スキルなどがある人歓迎」とのこと。正社員、アルバイトともに募集している。
そういえば、座り心地が最高だったフカフカの椅子。しかし、いずれはやはりハッカー御用達の高級イス「アーロンチェア」にしたいとのこと。このこだわりもまた、キュンとくる。
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