「艦隊これくしょん」の第14サーバ群「単冠(ひとかっぷ)湾泊地」が12月2日から運用を開始した。単冠湾は千島列島の択捉島にある入り江だ。太平洋戦争の初頭、ハワイはオアフ島の真珠湾にある米海軍基地を奇襲して大きな被害を与えた航空母艦「赤城」「加賀」「蒼龍」「飛龍」「翔鶴」「瑞鶴」をはじめとする第一航空艦隊主力の機動部隊が出撃する前に集結した場所だ。
くしくも12月2日は、大本営から日本軍に向けて太平洋戦争の開戦日を指示した暗号「ニイタカヤマノボレ 1208」を送信している。単冠湾を11月27日に出港した日本機動部隊は、その前日には日付変更線を越えており、ミッドウェー島とアリューシャン列島を結ぶちょうど中間点でこの電文を受信している。
こうして真珠湾攻撃に向かう機動部隊が最後に集結した場所として有名になった単冠湾だが、その後、太平洋戦争期間に大規模な艦隊の泊地として利用することはほとんどなかった。もともと、その行動を秘密にしなければならない真珠湾攻撃の機動部隊が集結する場所に単冠湾を選んだのも、人がほとんどおらず秘密保持に適していたためだ。人がいないだけあって、大規模な艦隊を支援する港湾施設や整備施設などもない。
太平洋戦争の戦場としてはソロモン海域や珊瑚海、ミッドウェーにインド洋などなど、“南の海”が知られているが、この北の海でもアッツ島やキスカ島など、アリューシャン列島をめぐる攻略作戦やそれに関連した海戦が起きている。しかし、北方海域で戦う艦隊の拠点となったのは、日本本土の大湊警備府であったり、同じ千島列島北端の幌筵(ぱらむしる)であったり、または、占領したキスカ、アッツの泊地であったりしたが、艦船の支援施設がない単冠湾は、艦隊の泊地として使うことはできなかった。
ただし、その一方で、秘密を守るために選ばれた単冠湾に第一航空艦隊を主力とする機動部隊が集結して、ここから人知れず出撃していったことが真珠湾攻撃の成功に結びついたと考えることもできる。その意味で、単冠湾泊地は、まさに真珠湾攻撃を成功させるためだけに存在意義があった“選ばれた泊地”といえるだろう。
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