11月3、4日と日本科学未来館で開催されている「Maker Faire Tokyo 2013」の学研ブースで、「大人の科学」シリーズの新製品としてVOCALOIDチップを搭載した「歌うキーボード(仮称)」のプロトタイプが展示されている。実機を触り、大人の科学マガジン編集長の西村俊之さんに話を聞いてきた。
「歌うキーボード(仮称)」には、世界初のVOCALOIDチップであるヤマハのNSX-1が搭載されている。このチップを使った製品としては、2番目に登場するものだ。1番目は、主に開発者をターゲットにした「eVY1 shield」という製品がスイッチサイエンスから発売されたばかり。
学研大人の科学では、スタイラス方式のキーボード(リボンコントローラ)を搭載した、当時としては破格に安いアナログシンセサイザー「SX-150」を発売し大ヒットさせた実績があるが、今回の「歌うキーボード(仮称)」はその進化形と言える。
では、このプロジェクトメンバーを見ていこう。SX-150の企画推進にも大きな役割を果たした、ミュージシャンのPolymoogさんが総合プロデュースを担当、回路設計は、孤高の手作り楽器「ウダー」の開発者である宇田道信さん、さらに、ボカロPとしても有名なミュージシャン、キャプテンミライさんがトータルデザインを担当している。これに西村編集長を入れた4人を中心としたプロジェクトだ。
ブースではプリント基板が剥き出しのプロトタイプが3台ほど置かれており、たくさんの人が触れていた。女子小学生とみられる子どもがとても上手に弾いているのを目撃した。とても簡単に使えるらしい(Maker Faireは小さいお子さんを伴った家族連れが非常に多いのだ)。
では仕組みを見ていこう。本体は10個のボタン、USBインタフェースとステレオミニの出力、内蔵スピーカーを備える。キーボードは、印刷された2オクターブの鍵盤で、基盤に接続された金属製スタイラスでタッチして弾く。このキーボードはチューニングのキャリブレーションを電源投入時に行う仕組み。すべてのキーをタッチすると自動チューニングする。これは宇田さんのアイデア。
10個のボタンには、ビブラート、ベンド、音声(ドレミ)、ボリュームダウン、ボリュームアップの5つと、母音のあいうえおをそれぞれ配置した5つ。さらに、同時押しでプリセットの歌詞が5つ使える。あいうえおのリアルタイム発音は、キャプミラさんの発想。母音しか歌えない、ディレイ・ラマというソフトウェアシンセサイザーを思い浮かべる人もいるかもしれない。
何も歌詞を指定しなければ、ドの鍵盤をスタイラスでタッチすれば「ドー」と、ミの鍵盤を押せば「ミー」と、女声ボカロVY1の歌声で歌う。歌詞ボタンで指定すれば、その歌詞の順番で1音1音歌ってくれる。
USB経由でPCから本体にデータを送ることで、オリジナルの歌詞を設定することも可能にする。「1曲分くらいは入れられるようにしたい。演奏しやすいように分割できるといいかも」と西村編集長。
本体は非常に軽いので、首から下げてガジェット楽器としてVOCALOIDライブをやることももちろん可能だ。「ぜひライブに使ってもらいたいですね。カラオケで歌わせるのもいいんじゃないでしょうか」と西村さんは話す。
プロトタイプはケースがまだできていな状態だが、これはキャプミラさんがデザイン中。デザインをシールで変えられるようにする計画だという。いろんなデザインの「歌うキーボード」が見られるかもしれない。
気になる価格だが、5000円を切ることを目指してがんばっているという。昨年4月にヤマハがプロトタイプを出した「VOCALOIDキーボード」は発売の予定がないが、同種のチップを使ったキーボードが破格の値段で出てくる。
来年にはバッキングやリード楽器だけではなくボーカルまでガジェット楽器でプレイするライブがたくさん開催されそうだ。
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