今年からねとらぼが新設し、その年もっともーネットを騒がせたニュースに贈る「2012年ネットニュース大賞」。読者投票および選考の結果、第1回の大賞は「ステマ騒動」に決定いたしました。また、読者投票の上位10本に贈られる「2012年ネット10大ニュース」には、「大津いじめ事件」「eufonius、ココロコネクト炎上」「違法ダウンロード刑事罰化」「遠隔操作ウイルス事件」などが選ばれています。
その他、編集部選出による特別賞も含めた、最終的な選考結果は以下のとおりとなりました。
【大賞】
ステマ騒動
【ネット10大ニュース】
1位:ステマ騒動
2位:大津いじめ事件
3位:ココロコネクト炎上
4位:違法ダウンロード刑事罰化
5位:遠隔操作ウイルス事件
6位:竹島、尖閣問題
7位:コンプガチャ騒動
8位:生活保護不正受給問題
9位:2chまとめサイト名指しで転載禁止に
10位:京大・山中教授にノーベル賞
【特別賞】
ニコニコ超会議開催
【炎上賞】
ココロコネクト炎上
【ヒット商品賞】
パズル&ドラゴンズ(iOS / Androidアプリ)
もはやネット上では完全に定着した感のある「ステマ(=ステルスマーケティング)」という言葉。2ちゃんねる内では以前から使われていましたが、年明け早々の「食べログ」事件をきっかけにテレビなどでも報じられるようになり、広く知られるところとなりました。その後も2ちゃんねるまとめサイトのステマが疑われたり、年末には芸能人がブログでステマを請け負っていたことを告白したりと、1年にわたりネットを騒がせ続けたトピックとして、読者投票でも圧倒的な票を獲得。情報の信頼性を大きく揺るがしたという点でも、ネット全体に与えた影響は大きかったと言えるでしょう。
滋賀県大津市の中学校で起きた、いじめによる自殺事件が話題に。事件そのものは昨年ですが、今年になって両親がいじめ生徒らを提訴したことで、凄惨ないじめの実態が明らかに。いじめに荷担していた生徒だけでなく、責任を認めようとしない教師や教育委員会にも強い非難が寄せられました。なお滋賀県警は12月27日、加害者とされる生徒らを暴行容疑などで書類送検しています。
アニメ「ココロコネクト」のイベントで行われた、声優・市来光弘さんに対するドッキリ企画が「パワハラ同然」「まるでいじめ」と炎上。公式サイトに謝罪文が掲載されたり、炎上のきっかけとなった音楽ユニット・eufoniusの菊地創さんが活動自粛することになったりと、各方面に大きな波紋を投げかけました。また、当事者である市来さんが「いじめではない」とコメントしているにもかかわらず、いまだ炎上が収まっていないのもこの件の大きな特徴。イベントを主導したプロデューサーの責任を問うアニメファンからの「怒りの投票」が、順位を大きく押し上げた形となりました。
以前からネットでは反対の声が多くあがっていた「違法ダウンロード刑事罰化」が10月1日より施行へ。これに伴い、文化庁が見解とQ&Aを公開したり、ネット集団アノニマスが抗議のクラッキング(や清掃)活動を行ったりと、さまざまな動きがありました。日々ネットを使っている人にとっては他人事ではなく「その気になれば誰でも逮捕できてしまう」など運用について心配する声も多くあがっています。
他人のPCを遠隔操作し、そこから犯罪予告などを行った「遠隔操作ウイルス事件」。警察はIPアドレスを証拠に大阪府の男性らを逮捕しましたが、のちに遠隔操作によるなりすましと分かり釈放。「IPアドレスが証拠にならない」という点で、警察のサイバー犯罪捜査の根幹を揺るがす事件となりました。その後犯人からと思われる「自殺予告メール」などもメディアに届き注目を集めましたが、いまだに真犯人は捕まっていません。
1年にわたってネットを騒がせ、しかもいまだに問題が解決していないという点では、竹島・尖閣問題も外すことはできません。領土問題自体は以前から存在していたものの、石原慎太郎元東京都知事による尖閣諸島購入騒動、ロンドンオリンピックにおける韓国選手の「独島は我が領土」プラカードなど、竹島・尖閣諸島をめぐる騒動が今年は相次ぎ、ネット上でもそのたびにさまざまな議論が巻き起こっていました。
今年は良い意味でも、悪い意味でも注目されることになったソーシャルゲーム。中でも消費者庁が「コンプガチャ(コンプリートガチャ)は違法である」と判断した「コンプガチャ騒動」は大きな話題に。急速な成長を遂げたソーシャルゲームのビジネスモデルが関心を集めるとともに、射幸心をあおり、高額な課金へとユーザーを誘導するその手口にも非難が寄せられました。ソーシャルゲーム業界側もその後、業界団体「JASGA」を発足するなど健全性を保つための対策を講じていますが、このあたりは今後の取り組みに期待したいところです。
お笑い芸人・河本準一さんの母親が生活保護を不正受給していたことから、「この人も」「あの人も」と不正受給が続々発覚した「生活保護不正受給問題」。受給者のモラルを問う声から、生活保護というシステムそのものへの疑問まで、さまざまな議論を巻き起こすきっかけになりました。また受給者への悪影響を考慮し、ユーキャンは今年の新語・流行語大賞候補から“ナマポ”を外しましたが、それ自体がこの問題の大きさ、根深さを物語っているとも言えます。
これまで2ちゃんねるのレスを抽出し、広告収入を得ていた「2ちゃんねるまとめサイト」に対し、元管理人・ひろゆき氏が警告。「第3者に迷惑をかけ謝罪しない人物に2chの著作物を使われることは不利益が大きい」と、大手5サイトに名指しで「転載禁止」を言い渡しました。1位のステマ騒動と合わせ、まとめサイトの是非についてあらためて考えさせられるきっかけとなりました。
iPS細胞の研究で京都大学・山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞。殺伐としたニュースが多かった中で、「明るくて希望が持てる」といった声や、同じ日本人の活躍を喜ぶ声など、温かなコメントが多く寄せられていた点が印象的でした。また同時期に「iPS細胞の臨床応用に成功した」とウソの報告を行い話題になった森口尚史氏も、ネットでは一躍時の人に。今回は山中教授のノーベル賞受賞と、一連の森口氏騒動をまとめて10位とさせていただきました。
ここからはねとらぼ編集部が選ぶ「部門賞」枠となります。今年はniconicoがメディアとして大きく躍進した年でもあった、という意味で、その象徴とも言える「ニコニコ超会議開催」に“特別賞”を贈りたいと思います。また、ネット上のカルチャーを現実の空間へと持ち込み、ネットと現実をつないだという点でもその功績は大きかったと思います。来年は黒字になるといいですね。
10大ニュースにも挙げた「大津いじめ事件」や「生活保護不正受給」のほか、studygift、和民社長、ZOZOTOWN社長、武雄市長など今年も多くの“炎上案件”がネットを騒がせましたが、火力・持続力の観点からやはり「ココロコネクト炎上」が頭一つ抜けていた印象です。得票数もさることながら、炎上から3カ月近く経っており、しかも当事者が謝罪や説明コメントを出しているにもかかわらず、いまだにこれだけ憎悪に満ちたコメントが送られてくるというのは、他の炎上案件にはない本件ならではの特徴と言えます。消そうとすればするほどメラメラと燃え上がる、まさに「炎上」と呼ぶにふさわしい燃えっぷりです。
ソーシャルゲームが問題視される一方で、「集金装置」ではない「ゲーム」としてのソーシャルゲームのあり方を示した「パズル&ドラゴンズ」に、ゲーム業界の未来を託しつつ“ヒット商品賞”を贈りたいと思います。パズル部分の面白さもさることながら、あえて利益を追求しない「ポカポカ運営」に、ゲーム屋としての矜恃を見た思いです。そのほか「ザク豆腐」、「ガリガリ君コーンポタージュ」、「ジョジョ25周年」、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」なども候補にあがっていました。
ステマ、いじめ、炎上……。今年の特徴のひとつに、これまでは見えにくかった「ネットの声」が、よりはっきりとした形で現れるようになったという点があります。またステマや2chまとめサイト転載禁止のように、メディアの情報の信頼性が問われた1年でもありました。
理由としては、Twitterなどの新しい情報ツールが普及した点が大きいのではと思います。情報発信がより身近になったことで、誰もが思ったときに社会や周囲に声をあげられるようになり、また情報のチャンネルが増えたことで、質の低い情報はすぐに看破されるようになりました。安倍総理のカツカレーに対するメディアとネットの温度差などは、今年のネットをある意味で象徴していたようにも感じます。
この傾向は今年にとどまらず、来年以降さらに強まっていくはずです。2013年はどんなニュースがネットの話題を席巻するのか、来年の「ネットニュース大賞」もぜひお楽しみに。
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