ドワンゴ主催の「ネット党首討論会」が11月29日、東京・六本木の「ニコファーレ」で行われた。野田佳彦首相(民主党代表)や自民党の安倍晋三総裁ら10党の代表が集まり、議論の様子はネットで生中継された。ニコニコ生放送は、誰でも視聴できる「フルオープン放送」と、ニコニコ会員向けの「コメント可能な放送」の2チャンネル体制で配信し、合わせて約140万人が来場した。
討論は、事前に定められた「TPP」「消費税」「原発」の3テーマを中心に、ニコファーレの設備「360度のLEDパネル」を活用しながら進行した。壁面・天井のディスプレイは視聴者のコメントをリアルタイムで反映することができるが、実際に表示されたのは各テーマの終了時など数回にとどまった。また、政党数が多いこともあって各代表に与えられた時間は短く「白熱した議論」とはならなかった。
討論会のシメの場面。「ネットユーザーの皆さん」――10党のうち5党の代表がそう語りかけてあいさつし、新しい時代を印象付けた。2007年に誕生した「ニコニコ動画」を中心に、党首討論が企画・実施されたことは画期的といえる。とはいえ、本番中に“ニコニコらしさ”を感じる機会は少なかった。登壇者が多忙を極めることから、旧来メディアのように時間的制約が強く、アメリカ大統領選で発揮したような自由さはなかった。「偏った動画サイト」と指摘された経緯も影響してか、議論構成は硬派で、コメントを書き込むユーザーは全体の2割以下だった。
一方、討論会の周囲では“ニコニコらしさ”が漂っていた。サイト上で呼びかけたユーザーによるミラー配信を、約50人の生主が実施。各自が“放送局”となって実況・解説した。また、チャンネルサービスでは、討論会に欠席した日本維新の会の会見を中継していたため、「2窓で見る」ユーザーも。午後9時から予定していた人気番組「新世紀エヴァンゲリオン アニメ上映会」の配信が1時間後ろ倒しになると「エヴァ遅延か」などのコメントが流れていた。ニコニコ動画には、日常生活と密着した「ゆるさ」がある。政治とネットの繋がりが深まっていく時、“ニコニコらしさ”はどんな影響を及ぼすのか注目が集まる。
今回の討論会の模様はタイムシフトで視聴可能。Ustreamにも録画が残っている。
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