東京ゲームショウ2011、ビジネスデイ初日の9月15日には、ソニー・コンピュータエンタテインメントによる「PlayStation Vitaの全貌」と題した基調講演が行われた。
今回登壇したのは、ワールドワイドスタジオ プレジデントの吉田修平氏と、SVP兼第2事業部長の松本吉生氏。と言っても、発売日や契約プランなどについては前日のカンファレンスですでに明らかになっており、今回の講演では主に「PS Vitaで今後どんなことができるようになるのか」といった“未来像”や“新技術”に主眼を置いた内容となっていた。
講演の中で吉田氏は、AR(拡張現実)やPS3との連携といった様々な新技術について、実際に開発中のPS Vita用ソフトを使いながら解説。今回紹介されたデモの多くはまだ研究中とのことだが、すでに実機レベルでは十分に動作しており、今後はサードパーティにもユーティリティを提供していくという。
AR機能については、複数のマーカーを同時に認識させることにより、テーブルや部屋など、より広いエリアをゲームに活用できる「ワイドエリアAR」と、カメラで空間そのものを認識し、マーカーを使わずにARを実現する「マーカーレスAR」という2つの技術を提案。吉田氏によれば、これらはPS Vitaの高い処理能力と、優れた映像認識技術があってはじめてできることだという。
いずれも従来の「マーカーからキャラクターが飛び出してくる」というARのイメージを覆すもので、実現すればさらにARの活用の場が広がりそうだ。
もうひとつ、講演の中で強調されていたのが「PS3との連携」だ。今回、実演も交えて説明されたのは「リモートプレイ」と「PS VitaをPS3のコントローラとして活用」の2点。リモートプレイについてはすでにPSPでも一部実装されているが、PS Vitaではさらに、PS3用ソフトをPS Vitaでプレイする――といったことも可能になるという。
今回、リモートプレイの実演に使用されたのは「KILL ZONE 3」。見たところ操作や映像の遅延もなく、PS3実機にかなり近い状態でプレイできているように感じられた。またL3・R3など足りないボタンについては、背面タッチに割り当てることで問題なくプレイできるという。
もうひとつの「PS VitaをPS3のコントローラとして活用」も面白い。単にPS3用コントローラの代わりに使えるというだけでなく、有機EL液晶やタッチパネル、ジャイロセンサーなどもそのまま使えるというのは大きい。
吉田氏は今回、「リトルビッグプラネット」のオリジナルステージを使ってこの機能を実演。吉田氏がPS Vitaの画面をタッチすると、タッチした軌道に沿って飛行機が飛び、風車や滑車といった仕掛けが作動する。PS3にはない「タッチ操作」が、PS Vitaによって可能になっており、使われ方のイメージとしては、Wii Uのコントローラにも近いと感じた。
そのほか吉田氏は、PS3との連携について「クラウドセーブ(PS3とPS Vitaでセーブデータを共有)」、「クロスプラットフォーム(PS3とPS Vitaで対戦可能に)」、「データコンパチビリティ(ユーザーが作ったコース、ステージなどの共有)」なども提案。性能的にもPS3に近いと言われるPS Vitaだが、今後両ハードの親和性はさらに高まっていきそうだ。
1月のカンファレンスで発表された「PlayStation Suite」についてもさらなる詳細が発表された。
PS Suiteのポイントは、「PS VitaとAndroid端末のクロスプラットフォーム」であるということと、「カジュアルなコンテンツを少ないコストで開発できる」ことの2点。リッチなゲームについては専用ゲームカードで提供していく一方、よりカジュアルなコンテンツについてはPS Suiteによりカバーしていく形となる。
PS Suite SDKで開発されたソフトは、一定の審査を経たのち、PlayStation Storeにて配信予定。いわばSCE版App Store/Androidマーケットといったイメージだ。現時点での対応端末はPS VitaとXperia Play、Sony Tabletシリーズのみとなるが、松本氏によれば、「今後は他のAndroid端末にも対応させていきたい」という。
今後のマイルストーンとしては、11月を目処にβ版SDKをリリースし、来春以降、同SDKで開発されたコンテンツをストアにて配信していく。また1月に発表された、初代PS用ゲームの配信については、10月下旬より順次配信予定とのこと。
「さらに新しいゲーム体験を生み出していきますので、今後にご期待ください」と吉田氏。これらの技術のうち、ARについてはすでにβバージョンをメーカーに提供しており、フィードバックをもらいながらさらなる研究を進めている段階。またPS3との連携についても、準備ができしだい、サードパーティに向けてユーティリティを提供していきたいとのことだった。
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