FPSなどのゲーム映像を素材として使ったCGムービーのことを「マシニマ」と呼びます。もともとはmachineとchinemaを組み合わせた造語で、この連載でも少し前に、コール・オブ・デューティ モダン・ウォーフェア2」を使ったマシニマを紹介したことがありました(日々是遊戯:え、これ映画!? 久々に見たマシニマが進化しすぎていた件)。
そんなマシニマを、日本でも作って公開している方がいらっしゃいました。サイト「海賊船『ドーン!!な感じ』号」の管理人でもある酒井りゅうのすけ氏は先日、「セカンドライフ」を使ったオリジナルのマシニマを公開し、さらに「セカンドライフ」内でバーチャル上映会を行ったことで注目を集めました。
作品名は「大地に消ゆ」。約7分ほどの短編作品で、「セカンドライフ」内で撮影されたCG映像をメインに、全人類が死に絶え、戦闘用ロボットだけがいまだ戦いを続ける荒廃した世界をありありと描いています。そんな中、バッテリーが切れかけた一体のロボットの目に、ある男の手が映し出され――。
酒井氏によれば、ネタ出しを除いた実質的な製作期間は約1週間ほど。主なスタッフは酒井氏と、若手映画監督である山本暁氏の二人で、「セカンドライフ」内でのロケ地制作に3日、撮影に2日、編集・手直しに2日ほどを費やしたそうです。
本作品は「第8回芸術科学会展ビジュアルアート部門」で見事最優秀賞を受賞。またこれを記念して、5月5日には「セカンドライフ」内のバーチャルシアターを使った“公開初日舞台挨拶”も行われました。
舞台挨拶には、酒井氏・山本氏のほか、劇中曲「Coma」を提供した「セカンドライフ」限定アーティスト・Chouchou氏もゲストとして出演。それぞれ自宅からSkypeで音声をつなぎつつ、「セカンドライフ」にログインして舞台挨拶を実施するという、これまたユニークな形式で注目されました。以下はその様子を収めた動画ですが、出演者や観客たちが全員CGのアバターであることを除けば、まるで本物の舞台挨拶を見ているよう。最近はあまり話題にのぼらなくなってしまった「セカンドライフ」ですが、こういう使い方ができるのは面白いですね。
最後に、こうしたマシニマの魅力について酒井氏・山本氏のお二人からコメントをいただきました。
「今回の作品には、私が『セカンドライフ』を3年間遊び続けたなかで見えてきたものが様々な形で盛り込まれています。特に『セカンドライフ』の場合、オブジェクト制作を数人で手分けして行うなど、非常に自由度の高いマシニマ制作が可能です。また楽曲を提供いただいたChouchouのお二人との打ち合わせを『セカンドライフ』の中で行ったり、製作過程自体がソーシャルコミュニケーションになっている点もユニークでした」(酒井氏)
「マシニマの利点として、まず低予算での作品製作が可能であること、また実写では決して描くことができない世界観を、3DCGのグラフィック空間を利用することで実現できる点などが挙げられます。厳しい目線で見れば、『セカンドライフ』のグラフィック力は他の3DCGゲームに比べて明らかに劣っていますが、そうしたネガティブな部分をアイデアで補い、ポジティブな面を駆使することで、独自の世界観を生み出すツールとして使っていけると思います」(山本氏)
もともと海外発祥の文化ということもあり、日本ではまだあまり馴染みのないマシニマですが、山本氏は「ユーザー側に参加できる環境がより整っていけば、今後国内のクリエイターも徐々に増えてくるのでは」とも予想しています。「ニコニコ動画」などで人気の「アイマスMAD」などもある意味ではマシニマの一種ですし、今後こうした形での映像作品はさらに増えてくるかもしれません。
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