それは,2015年のある秋の日 ──
その日は天気が芳しくなく外に出る気も起きなかったから,家の中で動画サイトを開き,クロイン重ロードの譜面を順番に眺めていたら,Double Universe[GRV] というこの世のものとは思えないほど素晴らしい譜面を見つけた。あまりにも洗練されていたので,エフェクターは誰なんだろうと思い,動画の最初に戻ってみてみると,そこには──
"Effected by: ビーフジョッキー"
「……ぇ,新人?」
それは,のちに僕の譜面制作の基礎に大きな影響を与えたビーフジョッキー大先生との,最初の出会いだった。
【ℹ️ この記事は K-Shoot Mania 譜面制作チーム TapeStop100 のアドベントカレンダー企画,TapeStop100 Advent Calendar 2020 の 13 日目の記事です。】
おはようございます,K-Shoot Mania パッケージ制作チーム(?) TapeStop100 の Мороже(まろーじぇ)です🛰️*1
TapeStop100 内ではパッケージの譜面制作などを担当しています。普段は自然言語とかポップンとかやってます。音ゲー趣味と自然言語趣味を融合させて音ゲーで覚える英単語botという bot を運営していたりもします。(ドイツ語やってる方は是非このブログの他の記事も読んでください)
この記事では,SOUND VOLTEX のエフェクター「ビーフジョッキー」大先生の初の収録譜面であり,僕が SDVX の 17 で一番好きな譜面*2でもある Double Universe[GRV] に対し,氏の他の譜面も参照しつつ,詳細な解説を試みます。たぶん世界初の試みだと思います。
なお本記事のタイトルは,去年の TP100 Advent Calendar でなご猫くんが書いていた「ビーフジョッキー賛美歌」の流れを汲んだものです。未読の方はぜひそちらもお読みください。
基本情報
Double Universe[GRAVITY]
ビーフジョッキー先生の初担当譜面です。初登場ながら,のちの彼の譜面にも見られるパターンが垣間見えており,彼の譜面を語る上では欠かせない存在です。全体的に [EXHAUST] を意識した譜面構成となっています。
徹底解説 ─ パートごとの観察
※貼るべき画像の枚数があまりにも多く諦めてしまったので,申し訳ありませんがこの記事に画像はありません。その代わり小節数を明示するので,ダブユニ重の譜面画像及び引用されているページを開きながらお読みください。
1 小節目
開幕タバコ押しがとても印象的です。特に III 時代のビーフジョッキーは 16 分の繰り返しや 8 分主体のメロディーにタバコ押しを用いることが多いです。詳しくはラストのタバコ押し配置でも触れます。
III 時代ではタバコ押しは新要素であり,前面に押し出される機会は多いと言えるほどでもなくそれゆえ目立っており,ビーフジョッキーの特徴としてまず思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
2 小節目
声ネタにエフェクトで PitchShift(+12)*3 がかかっています。レディー!
6-10 小節
この曲の赤譜面の 23-26 小節では声ネタに合わせて直角と鍵盤が配置されていますが,その配置と似たような配置を,同じ声ネタの鳴っているこの箇所で置くことで,元譜面へのリスペクトを払うとともに,ここから先では新しい譜面が降ってくることを示唆しています。
また,この譜面の 54 小節目や 85 小節目もそうなのですが,ビーフジョッキーは 4 分や 8 分で遠めの片手を置くときに隣接同時押しを用いることがそれなりに多いです。神話に芽吹く[MXM] 8-10 小節,12-14 小節,26-27 小節,61 小節目や,LECTORIA[EXH](譜面画像なし)全体,真っ白な靴[EXH], [GRV] などが挙げられます。
11-18 小節
キックを FX-L/R で拾い,メインメロディーを音階の流れに出来る限り忠実に BT で拾うという弐寺やポップンにありがちかつ演奏感の高いタイプの構成です。この箇所に限らず(というよりこの譜面に限らず),氏の譜面は基本的に音階に合わせて鍵盤を配置し,それを土台として構成する譜面が多いです。
一般に譜面の作り方を大きく二分すると,置きたい鍵盤配置やつまみ配置からまず考えるパターンと,音階を強く意識してまず鍵盤を置くパターンに分かれます。彼の譜面はかなり後者に寄っており,たとえば私とあなたのMYOURENJI☆[MXM] の開幕では,音に合わせた左手片手の配置をやらせたのち,もう片方の手でそのミラー配置ではなく全く同じ配置を用いています。最終鬼畜妹フランドール・S[GRV]の25-39 小節も,つまみはほとんどミラー配置ですが鍵盤は音の方に寄り添って配置されていますね。これらは音階ベースで鍵盤を置かなければ生まれ得ない配置です。
音階に合わせた譜面作りは曲との一体感を明確にし,プレイヤーに質の高い体験を提供するのみならず,適度に遠い片手を頻発させます。例として神話に芽吹く[MXM] 74 小節目,Fire Strike[HVN] ラスト付近の片手配置,Grand-Guignol[MXM] の 77-80 小節, 85-88 小節などは全て音階に寄せて置いたことで 4 レーン片手が発生しています。
この地帯にはまだ言及しておくべきことがあります。11 小節,13 小節,14 小節にある Re16/Ga16 の FX-L ロング + CBCB トリルという配置(またはそのミラー配置)は様々な譜面で頻出し,氏の譜面を代表するエフェクト&配置の一つといえます。彼は FX ロングの始点と同じ側に BT を置くことがあまりなく,特に CBCB トリルの始点が FX と同じ側にあるケースは稀です。*4
12 小節目や 16 小節目にある RDCBA は音取りミスで,32 分で配置されていますが,曲は 24 分で鳴っています。
14 小節目の 2 つめの FX-L はおそらく配置ミスです。かわいいね。
19-24 小節
曲が繰り返しなので譜面も繰り返しという強い意志を感じますね。ワザップとして,23-24 小節は青直角と同時に L,赤直角と同時に D を叩くとリズムが維持しやすいのでオススメです。
25-30 小節
17 としてあまりにも規格外な鍵盤が降ってきます。25 - 26 小節のつなぎ目にある左手 BC からの A が snow storm[GRV] の 32-33 小節目を彷彿とさせますね。
27 小節の両 FX ロングを押すとニョッと青つまみ予告が現れます。視点変更が遠めで緑数字*5が大きく,猶予が 1.5 小節あるので予告を見て両 FX を右手で持ちかえるというパターンです。同じような手の動きをする持ちかえは黎明スケッチブック[MXM] 121-126 小節,Grand-Guignol[MXM] 43-44 小節およびラストにも見られます。
ただ,近年のビーフジョッキー学会*6では,この配置は持ち替えではないとの見解が一般的となっています。(??)
どういうことかというと,AD を片手で押す ことで,25-26 小節の配置を 全て左右交互で 捌くことができ,そのまま 27 小節目のロングを自然に右手だけで押すことができます。こうすると持ち替えの必要は一切ありません。かなり説得力の高い説ですね。なご猫さんによる画像解説もどうぞ。
31-38 小節
あまり注目されることのない箇所ですが,さらっと B, C, D, R とレーンを 4 つ広く使った楽しい片手地帯です。片手の広さについては先程言及したので省略。32 小節目と 34 小節目の R ロングは拇指球で押す人も多いんじゃないでしょうか。
39-46 小節
赤譜面と同じようにメロディーの音を拾いながら後ろの音に合わせて直角を入れる構成です。41 小節目の 24 分→ 16 分トリルが良いアクセントになっていますね。45 小節目の 16 分ハイエナはかなり挑戦的ですが,サビへ向けてだんだん激しくなる曲調とうまく重なり合っています。
47-54 小節
この譜面の最難所です。単直角への 8 分移行と難しい片手処理を隙間なくやらせる配置で,ちゃんと光らせるための要求地力はかなり高いです。直角もめっちゃ抜けます。
とても忙しいパートではありますが,曲の盛り上がりも相まって,きちんと押せたときの爽快感は格別です。(UC を狙いたいだけなら片手 3 つを餡蜜するのが手堅いです)
また 50 小節目にある 4 分間隔更新の Re12 に合わせた縦連も見逃せません。このパターンの縦連は真っ白な靴[GRV] 4 小節目,choux à la créme[GRV] 40 小節目,神話に芽吹く[MXM] 25 小節目,最終鬼畜妹フランドール・S[GRV] の各所などにもあります。
55-62 小節
ビーフジョッキー流出張配置の源流となった地帯です。
ビーフジョッキーといえば出張というワードを思い浮かべる方はかなり多いと思います。特に III の最終鬼畜妹フランドール・S[GRV] は出張配置を繰り返すコンセプト譜面としてよく知られていると思います。直近では BLAZE∞BREEZE[MXM] のラストにも原作再現*7で入っていますね。
彼の出張配置のほとんどは,曲のメロディーが長い音で,かつ他の音が比較的目立つときにそれをロング+直角で拾うという構成で成り立っています。長い音をロングでただ拾っているだけだと暇になってしまいがちなので,出張を入れるのは(難易度の上げ方としては独特ですが)面白い方法です。(人生リセットボタン[VVD] は出張を入れたかっただけだと思いますが)
変わり種な出張配置として,Hoshizora Illumination[VVD] の 18-19 小節,STULTI[MXM] の 17-20 小節のように,ロングでずっと拘束されているわけではないものの出張が想定と思われる配置も存在します。
さて,ダブユニ重の出張といえば 55-56 小節の配置にはやはり触れておくべきでしょう。この後にも出張があるのにもかかわらず,なぜかここだけ直角の色が赤→青→青になっています。マジでなんで?
プレイヤーを騙そうとニコニコしながらヤバ配置を置くビーフジョッキーの顔が脳裏にくっきり浮かびますね。誰でも笑顔になれるという意味で歴史に残る神配置と言わざるを得ないでしょう。エフェクターは違いますが NEON WORLD[EXH] のラストを彷彿とさせます。
63-66 小節
大忙しだったサビから曲調が落ち着くのに合わせて,視点を一気に下げ,譜面も意図的にエフェクトを使いつつ鍵盤の数を減らしてクールダウンさせています。さらっとホムポジ片手の形に持っていっているのが好きポイント。
67-70 小節
44 小節目の流れを組みながら zoom_top の視点*8を徐々に上げていくことで,ラストへの流れを作っています。
71-78 小節
赤譜面をリスペクトした純粋な同時押し地帯です。後半のタバコ押し 8 分ラッシュは,人生リセットボタン[VVD] の序盤,Hoshizora Illumination[HVN] の 48-49 小節,CUTIE☆EX-DREAM[EXH] 60 小節目などにも見られるパターンで,素早い判断力が求められます。
また 72 小節目にある 8 分間隔更新の Re16 に合わせた縦連も見逃せません。このパターンの縦連は Vigor[MXM] 全体,L9[MXM] 主に開幕,Gate of Atlantis[MXM] 15 小節目,The Formula[MXM] 49 小節目,Fire Strike[HVN] 51, 60 小節目などにもあります。
ビーフジョッキーの縦連といえば今でこそ「び[MXM]」のイメージが強烈ですが,「び[MXM]」の登場以前にも曲合わせ・エフェクト合わせの縦連・微縦連を多く配置しており,「び[MXM]」があのような譜面になったのも頷けます。
79-87 小節
赤譜面と同じように傾向が片手にシフトします。外向き直角に普通の音合わせ片手配置,なのですがここで注目していただきたいのは 79, 81 小節目の連続外向き直角が出る位置です。普通は真ん中から出しそうなものですが,少し左に置かれています。
このような置き方はビーフジョッキーの譜面でもあまり多く見かけることはありませんが,風瑠人さんとの合作であるホワイトパレード[MXM] の 12-19 小節あたりで風瑠人さんがノリノリで自己紹介をした直後に 20-27 小節で「じゃ俺も自己紹介やっとくか~」と言わんばかりにビーフジョッキーがやたらアピールしてくる地帯で用いられていたり,漆黒のスペシャルプリンセスサンデーの 74-77 小節や,choux à la créme[GRV] の 25-32 小節,Hoshizora Illumination[VVD] の 44-47 小節でも近い形がふんだんに盛り込まれています。形は違いますが Asian Chip City[EXH] の 33-40 小節,73-80 小節も妙な位置に直角がありますね。
またこのように連続で直角を出す手法は,ベビーステップ[MXM] 39 小節目や,ヒトリゴト[MXM] のサビなどのように形を変えて現在も氏の定番パターンとして使用されています。そういやなんで 80 小節目の階段直角は 3 等分されてないんだろう?
片手地帯を抜けてすぐ,ラストのラストにこの素晴らしい譜面の締めとしてふさわしい BC → 両内直角とかいうモスクワ─ウラジオストックくらい遠い謎の移行がありますが,手を高速移動させて何事もなかったかのように颯爽と取りましょう。直角切ってUC逃しても泣かないで。
総評
ブレイク前の交互地帯や 8 分移行ラッシュなど 17 として尖った難所が目立つが,弐寺的な価値観で作られた配置の演奏感は随一であり,プレイする価値は非常に高い。
ビーフジョッキー歴史学の観点から見ても,頻出パターンや思想を理解するために研究しておきたい重要な譜面である。
いかがでしたか?
というわけで枠を一日分使って僕の好きな譜面について語らせていただきました。ビーフジョッキーの譜面には本当に影響を何から何まで受けていてその影響力はすさまじく自分の手癖の中にすっかり染み込んでしまいまい,開き直って EFFCH でニョッキとかいうオマージュ差分を書いていたりします()。今こうして譜面が書けているのもビーフジョッキーさんのおかげなので,また機会があれば他の譜面についても単独記事を書いて語りたいくらいです。シュークリーム重とか……
それでは今回はこのあたりで。ではでは~
vorh: なあいちか…CoCやろうや……【TP100アドカレ2020/12日目】|木枯らし 楓
näch: K-Shoot MANIAをやっていないTP100メンバーから見た当ゲームと当グループ|藍鎚
Q. そんなに好きな譜面ならもちろん PUC してるんですよね?
A. https://twitter.com/Morojenium/status/1196474174480375808
*1:これはパラボーの絵文字です(パラボーかわいくない?)
*2:18 で一番好きな譜面なら……L9 かなぁ……
*3:1 オクターブ上の音
*4:Discover the life[EXH], ベビーステップ[MXM]などに配置の都合上こっそり潜んでいます
*5:表示時間
*6:会員数は 2 です
*7:元譜面の H/EX では真ん中のロングを押しながら両端のボタンを押す配置になっています
*8:視点変更はレーンの上側と下側の拡大率を操作することで行われており,K-Shoot Mania では上を zoom_top,下を zoom_bottom と呼んでいます
