
東京都建設局による善福寺川上流調節池。杉並区が同意するにあたり「住民への丁寧な説明」をつけたにも関わらず、なんら説明もないままに、早々に今年の1月22日に事業認可されてしまっています。
調節池が必要とされる根拠は?
なぜ、この地点で豪雨時に増水するの?
ほんとに調節池が有効なの?
今回は前編:武蔵野市からの合流下水について、後編:東京都のオープンハウス、の前後編でレポートします。
まずは武蔵野市の役人の対応と地域コミュニティ事業が立派だったことに驚く(前記事の世田谷区に続いて…杉並、ダメじゃん)、武蔵野市の話から。

2025.2.11武蔵野市吉祥寺東コミュニティセンター(九浦の家)で行われた「川のない武蔵野市の下水道の話」という公開講座に行ってきました。
これは同コミュニティセンターの主催事業。善福寺川上流調節池に関して「武蔵野市の下水が杉並区に大量に流入している」ということにショックを受けた武蔵野市民の方の、コミセン通信への投書(後述)を受けて、センターの協議会が企画し、武蔵野市環境部下水道課を呼んで話を聞く、というもの。協議会の方たちも近隣の吉祥寺東町などの住民として、善福寺川上流調節池問題に関心があり(同時に外環の2や女子大通り拡幅に直面し)、そうした「行政に対する問題意識」を市の施設で主催事業として展開できることがすごい。まさにコミュニティのセンター。杉並区はじめ指定管理者制度を取っている「自治」体とは大違いである。
そしてそうしたコミュニティセンターという制度の担保があるにせよ、住民主催の集会に、しかも「事業に問題がある」と言われる場に、市役所の当該部署(23区と違って、武蔵野市は市に下水道局がある)が来る。もう杉並区は武蔵野市の51番目の州にでもなった方がいいんじゃないか。下水道放流させてあげてるんだし。
九浦の家は画家の野田九浦の古民家を活かした建物で、アトリエ?だった講堂のような部屋に40人くらいで満席。1/3くらい杉並区から来ていたが。
八潮市の下水道管の陥没、BS-TBS『噂の東京マガジン』での善福寺川上流調節池問題の放送の直後とあって、注目も高かったようだ。

まず、司会を務めるコミュニティセンターの委員の方が、なぜ武蔵野市の下水道局は環境部なのか?と質問。
武蔵野市では、下水道は都市整備部から環境部に管轄代わったのだそう。武蔵野市の8割では地下水が湧出するため、昔から水道が豊かで、その分下水道が進まなかった。地下水が涸れる危機感が強く、浸透ます設置などをやってきた。水循環の保全、創出が一昔前は最重要課題だった。
元旦に起きた八潮市の下水道管陥没のことも話題に。
武蔵野市は大丈夫なのか?市街化とともに下水道は整備され、多摩地域では一番くらいに早いため、老朽化している。対策は平成ごろからやっている。長寿命化、下水道ストックマネジメント計画。13ブロックに分けて順次点検調査の結果、優先的に修繕、管の改築を行っている。
腐食しやすい場所:伏せ越し(川の下をサイフォンの原理で通す)、ビルからの排水(一度溜めているところで硫化水素発生):1年に1回清掃、点検調査。
陥没対策:道路管理課が表面の電磁探査車で調査。管の中のカメラ調査。
ここからは「武蔵野市下水道総合計画2023」に沿った解説。
〇雨水の排水
市内9割が合流式下水道で、雨水も生活排水と一緒に下水管に流入。大雨が降ると河川に放出(雨水吐き室で越流)。20年くらい前、下水を未処理で放出することが問題に→合流改善施設の整備。
武蔵野市の雨水は地表面積の6割、641ha範囲が善福寺川へ放出される。S43(1968)杉並区が放流許可。ほかは石神井川、神田川、野川。
善福寺川排水区の下水道キャパシティは40-50mm/hの降雨で、それを越えると川に放出する。
東京都豪雨対策基本方針が2023年に改定され、目標は75mm/hのキャパシティとなる。
2014年吉祥寺北町で72mm/hで内水氾濫が起きた。
〇治水対策
・雨水の地下への浸透及び有効利用推進条例(浸透ますなど):公共施設、新築は100%設置、既存住宅には助成制度。
・市立小中学校17校(あと1校)に雨水浸透施設(校庭の下にケーソン)設置。
・吉祥寺北町に雨水貯留施設(4500立方メートル)新設。
・レインガーデン、グリーンインフラ研究。
〇汚水の処理
武蔵野第1処理区(送られる水再生センターごとに分かれる):ほぼ善福寺川排水区:727ha→女子大通りの下に武蔵野市最大の下水管があり、全市の70%の下水が通っている。通常は落合水再生センターに送られるが、豪雨時に善福寺川(原寺分橋と原橋の吐け口から)に放出される。
第3処理区(清瀬水再生センター)は分流式が実現している。将来は第1の一部を第2(現在は森ヶ崎水再生センター。野川水再生センターを調布市の味の素スタジアム近くに新設、しかし事業はほとんど進んでいない)に編入。汚水のみ。雨は善福寺川へ放流。変更により新たな下水道管の整備が必要になる。
〇合流改善施設

東町ふれあい公園(吉祥寺東町1丁目):8500立方メートル

本田(ほんでん)東公園(吉祥寺東町4丁目):1200立方メートル
公園の下にケーソンを埋めてあり、降雨時に最初に出る「下水の割合が多い水」をキャッチする。
ここから質疑。
申し訳ないですが、詰めかけた杉並区民たちが厳しい質問。しかし武蔵野市の職員さんたちは嫌がらずに、正直に(これ大事)答えてくれました。もう、武蔵野市の下水は要らないから武蔵野市の下水道局をください。
いきなり私の質問ですみません。
Q1.「初期降雨は下水の割合か高い(汚い)」と言うが、初期降雨は分水人孔をオーバーフローした分なので「雨水量が多い(きれい)」のでは?
Q2.処理区再編した場合、汚水だけが対象ということだが、雨水は継続的に善福寺川排水となるのか。オーバーフロー分は雨水として認識されるのか。
A1.合流改善施設では女子大通りの手前で分水する前のものを取水している。東京都の貯留管は分水してから取り込むので、それとは仕組みが違う=合流改善施設には汚水が入り、晴天時に下水管に戻す。
A2.処理区の再編は野川水再生センター新設が最初のステップ。これまでの杉並区方向から逆方向の調布市に行く下水道管を整備しないといけない。下水道は自然流下(低い方に流す)なので(標高高い調布市方向に)どう整備するかも課題。まだ事業の見通しが立っていない。野川の建設予定地は20面のサッカー場。スポーツ施設が一時的に使えなくなる。
ほら、正直でしょう?杉並区や東京都の建設局とは大違いですよ。なお、私が下水道と合流改善施設について学んだのはこちら。東京都は建設局(調節池)の人より下水道局(合流改善施設)の人の方が親切です。
Q:外環の2と一体に下水道管の整備をするという話があるが?
A:10mm/h分の雨水管の計画があるが、それでは河川への放水量が増える上、外環の2が(武蔵野市・杉並区では)進んでいないので未定。
Q:善福寺川の清掃ボランティアをしているが下水流入でゴミが多い。生理用ナプキンがいつも見つかる。なぜそんなものが入るのか?
A:トイレットペーパーならわかるが…。下水管経由ではないかもしれない。
(ゴミを川に投げ捨てる人がいる?トイレに流したら詰まるので、自宅では絶対やらないだろうが、駅などで「ペーパー以外流さないで」と書いてあるので、流す人がいるのかもしれない?)

ここで、思いがけず「今日の講座のきっかけとなったコミュニティセンター通信に投書したのは私です」と近隣の方からの発言が。
これに対して杉並区民からは「怒りは武蔵野市に向けていない。東京都に対して一緒に訴えてほしい」と呼びかけ、あらためて今日のような取り組みをして、下水道について関心を高めていることについて感謝を伝えました。
ここで、善福寺川上流調節池問題で尽力していて、何度も武蔵野市とも話し合いをしている石田聖さん(低炭素研究所)が提案を述べる。
提案1.成蹊大学のグラウンド(人工芝で浸透しない)と、その隣の市営グラウンドは雨水流出係数8割、舗装道路と同じレベル。ここが雨水の大量排出源となっている。成蹊は下水道料金払ってないんじゃないか?下水道料金は上水使用から算出、雨水はかからないので。その雨水の8割が流れこんでいる。こうしたグラウンドの地下に、大きな貯留施設でなくとも、ビールケース程度のものを埋めたら効果がある。千葉県は条例を作っている。
提案2.合流管を分流式下水道にすべき。老朽化で下水管の更新が必要なので、汚水管を新設する。雨水管はもし破損しても地中浸透して問題ない。雨水管を更新するなら浸透管に替える方法もある。雨水は再生して各家庭に配ればよい。
回答1.成蹊グラウンドは市の施設でないので要望するのは難しい。下水道料金を払ってないとは思わないが、雨水が料金に入らないのは成蹊だけでなくどこでも。

私もその関連質問。
Q:他の大学、学校、都立高、特に杉並に近い吉祥女子学園、東京女子大はグラウンド下に雨水ますを作っていないのか?区立はほとんどやっているというが、私立では実績はないのか?
(ここでひとしきり東女は杉並区だ、という指摘が入りましたが、後で調べたらやっぱり武蔵野市でした!)
A:条例に基づいて行う。大規模な建物を建てるときにはまちづくり条例が策定される。雨水ます設置対象ならその中で協議し、設置する。
石田さん:成蹊が下水道料金を払ってないと言いたいのではなく、払った料金以上に自分のところに降った雨水が下水管に負荷をかけている。久留米大学は2km離れた河川から持ってきた水を80000tも貯留している。雨水対策でできることはまだまだたくさんある。
石田さんはじめ、善福寺川調節池問題に取り組んでいる人たちは、「調節池だけではない」「もっと有効な対策があるのにやっていない」と主張しています。後編は「調節池以外なにも考えていない」東京都の説明会のレポートです。武蔵野市とはえらい違い。水道とは民主主義が問われるものなのだな、とわかります。