以下の内容はhttps://nina313.hatenablog.com/entry/2011/05/19/000000より取得しました。


雑記:クノーがつくる理想の叢書

f:id:nina313:20141109175052j:plain

 レーモン・クノーが作成した「理想の書斎のために」という書物目録を、日本の出版状況に照らし合わせて紹介してみようという試み。

 元ネタはWikipediaフランス語版の「Pour une Bibliothèque Idéale」、1956年にクノーによってまとめられた同名の書籍である。記事にはリスト以外に詳しいことがなにも書かれていないので、これが具体的にどんなことを目指したものだったのかは原書を手に取るまでわからないのだが、残念ながら現在では絶版、古書も出回っておらず、まったく手がつけられない状態になってしまっている。


 「Bibliothèque」という語には「図書館」や「叢書」という意味の他に「蔵書」や「書庫」という意味もある。挙げられているのは文学・人文書に関わらず大部のものが多く、「叢書」としたらどうやっても全部で300巻を優に超えるものとなってしまうので、「書斎」に常備しておくべき書物群、というふうに解釈した。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

追記(2011年5月20日):
 ツイッターで書いたとおり、「Bibliothèque」という語の訳語は「書斎」ではなく「叢書」のほうが正しいかもしれない。理由はこの本の刊行が1956年であること、そしてその2年前の1954年に、クノーがプレイヤード叢書(Bibliothèque de la Pléiade)の編集主幹に任命されていること。「理想の叢書のために」では美しくないので、丸谷才一らが書いた『文学全集を立ち上げる』のようなタイトルに直そうとも思ったものの、挙げられているのは「文学」だけではないし、良い代案も浮かばないのでこのままにしている。

 それから先日購入した伝記のなかで、1951年にクノーがヘンリー・ミラーに宛てた手紙の一部、この書物目録の構想を知らせる文章が紹介されていたので、誤訳にびくびくしながら訳出してみた。

「それはちょうど『マルーシの巨像』のように、私自身を喜ばせる本だ。モンテーニュが『エセー』で採った流儀で、続けてみようと思っている。たしかに、言うまでもないことだが、幾人かの著者たちに対する私の情熱は、共有しにくいものかもしれない。だがまさしくそのために、私は今朝あなたに向けてこんなことを書いているのだ。人は「私の影響力」を、さらに、我が人生においてヨーロッパの大作家たち、とりわけフランス人たちが果たした途方もない役割を目撃することになるだろう」
(Michel Lécureur, Raymond Queneau, Les Belles Lettres, 2002, p.340)

追記(2011年12月4日):
 ほかにもいくつか訂正したい箇所があったので、記事のタイトルを「理想の書斎のために」から「クノーがつくる理想の叢書」に変更した。

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 以下、全部で100項目のリスト全貌。順番についても、他の多くのことと同様にどんな意図があるのかはわかっていない。優先順位かもしれない。

001.シェイクスピア『戯曲』
 全37作品。訳もさまざまだが、白水uブックスから刊行されている小田島雄志訳をしつこくおすすめしたい。

 


002.『聖書』(新約を含む)
 新共同訳の小型版聖書がおすすめ。とっつきにくい場合には阿刀田高の『旧約聖書を知っていますか』及び『新約聖書を知っていますか』が面白い。個人的には旧約のほうが物語性もあって楽しいと思うのだが、新約が文学作品で引用される頻度は高い。クノーがわざわざ「新約を含む」と書いているのにはおそらくそういう理由もある。

 

 

 


003.プルースト失われた時を求めて
 いつの間にか色々な出版社から翻訳が出るようになっているようだが、集英社文庫の鈴木道彦訳を持っていれば間違いないかと。全13巻。言及されるさまざまな絵画を収めた本、Eric Karpelesの『Paintings in Proust(プルーストのなかの絵画、ちなみに仏訳題はLe Musée imaginaire de Marcel Proust、マルセル・プルースト幻想美術館)』もおすすめ。
追記(2011年12月4日):あいかわらず手に入りやすい全訳版は鈴木道彦訳なのだが、光文社古典新訳文庫から刊行されている高遠弘美訳も薦めておきたい。

 

 

 


004.モンテーニュ『エセー』
 宮下志朗が鋭意翻訳中。がんばれ。白水社より全7巻中、第4巻まで刊行(2011年5月現在)。みすず書房から抄訳版も出ている。
追記(2014年11月9日):2014年12月に第6巻が刊行される予定。

 


005.ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル』(『第五の書』まで)
 宮下志朗が鋭意翻訳中。がんばれ。ちくま文庫より全5巻中、第4巻まで刊行(2011年5月現在)。『第五の書』は偽作とされることも多いが、クノーはこれも含めるように書いている。それにしても宮下志朗、すごすぎる。高校生のころにこの人の『パリ歴史探偵術』という新書を読んで、人生がねじ曲がったのを思い出した。
追記(2014年11月9日):2012年5月に『第五の書』が刊行、完訳されました。

 


006.ボードレール悪の華
 堀口大學訳、新潮文庫

 


007.パスカル『パンセ』
 前田陽一・由木康訳、中公クラシックス、全2巻。

 

 


008.モリエール『戯曲』
 ロジェ・ギシュメール・廣田昌義・秋山伸子共編『モリエール全集』臨川書店、全10巻。本国フランスでの圧倒的な評価を考えると、日本での扱いはいかにも不遇。

 


009.ルソー『告白』
 桑原武夫訳、岩波文庫、上中下巻。1965年の版とのことで、若干不安。

 

 

 


010.スタンダール『赤と黒』
 フランス文学者たちから散々叩かれたそうだが、光文社古典新訳文庫の野崎歓訳は読みやすくて面白かった。上下巻。

 

 


011.プラトン『対話篇』
 プラトンの著作はほとんどが対話形式を採っているため、いちいち選り分けるよりは著作すべてを指すと考えたほうが早い。よって田中美知太郎・藤沢令夫共編の『プラトン全集』岩波書店、全16巻。

 


012.スタンダール『パルムの僧院』
 大岡昇平訳、新潮文庫、上下巻。
追記(2011年12月4日):生島遼一訳、岩波文庫、上下巻のほうが安心して手に取れるだろう。

 

 

 

 


013.ヴィヨン『遺言詩集』
 天沢退二郎訳『ヴィヨン詩集成』白水社鈴木信太郎訳の岩波文庫版もあるが、他のいくつかの訳文を読んだ経験からして、この人の文章は良くも悪くも現代的ではないので、万人向けとは言えないと思う。値段は跳ね上がるが、個人的には天沢退二郎訳で読みたい。

 


014.ランボー『詩集』(『イリュミナシオン』を含む)
 「全詩集」と銘打ったものでは、最近だと鈴木創士訳の河出文庫版、もしくは宇佐美斉訳のちくま文庫版がある。

 

 


015.カルディナル・ド・レ『回想録』
 原文では「Cardinal de Retz, Mémoires」。本名はジャン=フランソワ・ポール・ド・ゴンディ(Jean-François Paul de Gondi, 1613-79)、「Cardinal」は「枢機卿」という意味、「Retz(発音は「レ」)」はロワール・アトランティック内の地方なので(ちなみに今私が住んでいるナントの、ちょっと南)、「カルディナル・ド・レ」をそのまま訳せば「レの枢機卿」となる。『回想録』は1675年から77年のあいだに書かれたものらしく、おそらく邦訳なし。本国フランスではオノレ・シャンピオン社から全6巻の全集として刊行されている。内容はフロンドの乱(La Fronde, 1648-53)に関わったときの体験を小説風に書いたものだとか。

 


016.トルストイ戦争と平和
 工藤精一郎訳、新潮文庫、全4巻。 

 

 

 

 


017.サン=シモン『回想録』
 社会主義者のアンリ・ド・サン=シモン(1760-1825)ではなく、その遠縁の親戚にあたるサン=シモン公爵ルイ(Louis de Rouvroy, duc de Saint-Simon, 1675-1755)を指している。おそらく邦訳なし。絶対王政期の宮廷文化を描いた大部の『回想録』は、1879年から1930年にかけてフランスで刊行されたボワスリール版では全43巻を数える。現在刊行されているプレイヤード版では全8巻。歴史学的にも重要文献で、プルーストも再三言及しているのだが、本当に翻訳はないのだろうか。

 


018.セルバンテス『ドン・キホーテ』
 牛島信明訳、岩波文庫、前後篇合わせて全6巻。

 

 

 

 

 

 


019.ラシーヌ『戯曲』
 伊吹武彦・佐藤朔編『ラシーヌ戯曲全集』人文書院、全2巻。ちなみに白水社からも渡辺守章訳で『ラシーヌ戯曲全集』が刊行されたが、なぜか第2巻だけを刊行したまま止まってしまっている。

 

 


020.アイスキュロス『戯曲』
 高津春繁訳『ギリシア悲劇(1)』ちくま文庫。現存するアイスキュロスの劇がすべて入っている。

 


021.ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』
 亀山郁夫訳、光文社古典新訳文庫、全5巻。

 

 

 

 

 


022.マラルメ『詩集』
 松室三郎・菅野昭正・清水徹阿部良雄渡辺守章共編『マラルメ全集』筑摩書房、全5巻。全5巻と言いつつも、1巻あたり2万円もする。詩は第1巻、他に鈴木信太郎訳の岩波文庫版もある。

 


023.ラ・フォンテーヌ『寓話』
 今野一雄訳、岩波文庫、上下巻。1972年の版ということで、若干不安。とはいえ新刊で購入できるのは現在ではこれだけという衝撃。

 

 


024.ゲーテ『ファウスト』
 池内紀訳、集英社文庫、全2巻。ただ、だれの訳で読んでも第二部はわからない気がする。

 

 


025.アポリネール『アルコール』
 堀口大學『アポリネール詩集』新潮文庫。ただ、『アルコール』に収められていた詩がすべて入っていたかは思い出せない。とはいえ個人的には「ミラボー橋」を他の訳者のもので読む気も起きない。

 


026.フロベール『感情教育』
 山田じゃく訳、河出文庫、上下巻。きゃあきゃあ。ちなみにクノーはフォリオ版『ブヴァールとペキュシェ』に「まえがき」を寄せていたりもするのだが、こちらはリストには入っていない。

 

 


027.ホメロス『オデュッセイア』
 松平千秋訳、岩波文庫、上下巻。クノーが再三繰り返している文学論に「すべての文学は“イリアス型”と“オデュッセイア型”に大別できる」というものがある。詳細はジョルジュ・シャルボニエとの対話集に詳しい。塩塚秀一郎訳『あなたまかせのお話』国書刊行会に、「附録」として抄訳版が載せられていて、このことも言及されている。

 

 


028.コルネイユ『戯曲』
 まとまった全集が出ていない! モリエールラシーヌに並び評される劇作家だけに、かなり驚いた。持田坦訳『コルネイユ喜劇全集』河出書房新社で喜劇8作はカバーできるが、『ル・シッド』などを含むそれ以外の24作品は個別に集めるしかなさそう。

 


029.ダンテ『神曲
 平川祐弘訳がいいらしい。河出文庫、全3巻。

 

 

 


030.シャトーブリアン『墓の彼方からの回想』
 真下弘明訳、勁草出版サービスセンター。1983年の翻訳で、入手困難な模様。

 


031.バルザック『人間喜劇』
 長篇・短篇90篇。『バルザック全集』東京創元社、全26巻。多すぎて訳者を書く気にはなれないが、有名な人ばかり。

 


032.ソフォクレス『戯曲』
 松平千秋訳『ギリシア悲劇(2)』ちくま文庫。現存する7作品すべてを収録。

 


033.ジョイス『ユリシーズ
 丸谷才一・永川玲二・高松雄一訳、集英社文庫、全4巻。

 

 

 

 


034.ラクロ『危険な関係
 伊吹武彦訳、岩波文庫、上下巻。ただ、この訳者には岩波文庫版『ボヴァリー夫人』の苦い思い出がある。
追記(2011年12月4日):すでに絶版とはいえ、新庄嘉章と窪田般彌が共訳した新潮文庫版も、選択肢から外すべきではないだろう。
追記(2014年11月9日):アナトール・フランス『シルヴェストル・ボナールの罪』を読んで思ったが、伊吹武彦は言うほど悪い訳者ではない。
追記(2014年11月26日):2014年1月に白水社から新訳が刊行されていたので、あわせて紹介しておく。

 

 

 


035.スウィフト『ガリヴァー旅行記』
 中野好夫訳、新潮文庫

 


036.ヴェルレーヌ『詩集』
 堀口大學訳『ヴェルレーヌ詩集』新潮文庫。ただ、ヴェルレーヌの詩集の数は多く、そのすべてが網羅できているわけでは毛頭ない。

 


037.フロベール『ボヴァリー夫人』
 生島遼一訳、新潮文庫。上述のとおり、伊吹武彦訳の岩波文庫版は薦めない。最近出た山田じゃく訳の河出文庫版に関しては、自分は読んでいないが、手放しに薦められる自信がある。

 

 


038.ランボー『地獄の季節』
 すでに『詩集』と出しているのに、わざわざこの散文詩を追加しているのはなんなのか。小林秀雄訳の岩波文庫版を推せという天啓を受けた気がする。

 


039.デカルト方法序説
 自分が手に取ったのは野田又夫・水野和久訳の『方法序説ほか』中公クラシックスだが、去年ちくま学芸文庫から山田弘明訳が出たらしい。
追記(2011年12月4日):谷川多佳子訳、岩波文庫も、1997年刊と比較的新しい。

 

 


040.アベ・プレヴォ『マノン・レスコー』
 青柳瑞穂訳、新潮文庫。ずいぶん前に旅行者としてパリに行ったとき、この本をジュンク堂パリ店で買ったのは良い思い出。

 


041.ロンサール『オード集』
 井上究一郎訳『ロンサール詩集』岩波文庫。「オード」とは頌歌のことで、ロンサールの場合は処女詩集。ただ、井上究一郎訳にどの程度この詩集の作品が含まれているのかは定かでない。

 


042.アリストファネス『戯曲』
 高津春繁編訳『ギリシア喜劇』ちくま文庫、全2巻。より正確には『ギリシア喜劇(1) アリストファネス(上)』及び『ギリシア喜劇(2) アリストファネス(下)』の二冊。勢いづいて中務哲郎・久保田忠利編の岩波書店版『ギリシア喜劇全集』全10巻を買えば、メナンドロスももれなく付いてくる。

 

 


043.タキトゥス『年代記』及び『同時代史』
 国原吉之助訳『年代記』岩波文庫、上下巻、及び同じ国原吉之助訳『同時代史』筑摩書房。

 

 

 


044.スピノザ『エチカ』
 工藤喜作・斎藤博訳『エティカ』中公クラシックス。大学生のときに挑戦してみたが歯が立たなかった記憶がある。近年評価が急上昇中。

 


045.ヘルダーリン『詩集』
 川村二郎訳『ヘルダーリン詩集』岩波文庫河出書房新社から全4巻の全集も出ている。

 


046.ネルヴァル『火の娘たち』
 中村真一郎入沢康夫訳、ちくま文庫。ただし絶版。絶版になったちくま文庫を探すのは本当に骨が折れる。

 


047.デフォー『ロビンソン・クルーソー
 吉田健一訳『ロビンソン漂流記』新潮文庫。ただしこの訳には「その後の冒険」は含まれていないので、平井正穂訳の岩波文庫版『ロビンソン・クルーソー』の下巻を別途読む必要がある。とはいえ、平井正穂の訳は個人的には好きじゃない。
追記(2011年12月4日):たいへん喜ばしいことに、2011年9月に、河出文庫から新訳が刊行された。武田将明訳。

 

 

 

 


048.アウグスティヌス『告白』
 服部英次郎訳、岩波文庫、上下巻。1976年の訳ということで、大いに不安。
追記(2014年11月9日):2014年3月に山田晶訳が中公文庫より刊行された。

 

 

 

 


049.ロートレアモン『マルドロールの歌』
 石井洋二郎訳『ロートレアモン全集』ちくま文庫が手に取りやすいが、本当は絶版になってしまっている栗田勇訳の角川文庫版を推したい(ただしこちらは抄訳版)。
追記(2011年12月4日):こちらも抄訳版だが、青柳瑞穂訳『マルドロオルの歌』講談社文芸文庫、という選択肢もある。旧仮名遣い。

 

 

 


050.ユゴーレ・ミゼラブル
 豊島与志雄訳、岩波文庫、全4巻。もしくは佐藤朔訳、新潮文庫、全5巻。調べていて知ったのだが、井上究一郎による完訳も河出世界文学全集に収められていたようだ。ユゴーに関しても、現代の日本では不遇の感が否めない。

 

 

 

 


051.ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』
 色々と読み比べるのが面白い本だが、個人的なおすすめは高橋康也高橋迪訳、河出文庫。ちなみに『スナーク狩り』をフランス語に翻訳したのは、クノー同様ウリポに属するジャック・ルーボー。

 


052.ミュッセ『喜劇と格言劇』
 原文では「Comédies et Proverbes」となっていて、おそらく『戯れに恋はすまじ』などを含む、読まれるための戯曲作品群、いわゆる「肘掛椅子で観る芝居」を指しているのだろう。訳語は同名のエリック・ロメール監督の作品集から採った。日本では入手可能なもの自体数が少なく、まとまった翻訳は出たことがなさそう。『ガミアニ』は出てるのに!

 


053.ルナール『日記』
 柏木隆雄・住谷裕文編『ジュール・ルナール全集』臨川書店、全16巻のうち、第11巻から15巻。日本では『にんじん』や『博物誌』で有名だが、フランスではむしろ日記文学の大家として扱われることが多い。

 


054.ホメロス『イリアス』
 松平千秋訳、岩波文庫、上下巻。登場人物が多すぎてわからない場合は、阿刀田高『私のギリシャ神話』集英社文庫を一読してから攻めるべし。

 

 


055.ドストエフスキー『白痴』
 木村浩訳、新潮文庫、上下巻。と書いて、2010年に河出文庫から望月哲男訳の全3巻が刊行されていることを知った。気になる。

 

 

 

 

 


056.エミリー・ブロンテ『嵐が丘』
 鴻巣友季子訳、新潮文庫。と言いつつ、自分は河島弘美訳の岩波文庫上下巻で読んだ。作品そのものが好きじゃない。

 


057.ドストエフスキー『悪霊』
 亀山郁夫訳、光文社古典新訳文庫。全3巻中、第2巻まで刊行(2011年5月現在)。
追記(2014年11月9日):2011年12月に完訳。その後「別巻」も刊行されました。

 

 

 

 


058.ヴォルテール『短篇集』
 原文では「Voltaire, Contes」。つまり『カンディード』に代表されるような、哲学的な短篇作品を集めろ、という意味だと解釈。植田祐次訳『カンディード 他五篇』岩波文庫が合致するが、収録作品数は全体から見ればごくわずか。調べてみたら、2010年に同じ植田祐次の訳による『哲学コント集成』上巻が国文社から発売されたとのこと。感動。日本に帰ったら絶対買う。だから下巻もがんばれ。
追記(2014年11月9日):下巻も出ました。がんばった。

 

 

 


059.ウィリアム・ブレイク『詩集』
 松島正一訳『対訳 ブレイク詩集』岩波文庫、及び土居光知訳『ブレイク詩集』平凡社ライブラリーが手に取りやすそう。
追記(2014年11月9日):対訳ではない岩波文庫の詩集が2013年に刊行されました。

 

 

 


060.ドストエフスキー罪と罰
 工藤精一郎訳、新潮文庫、上下巻。亀山郁夫訳なら光文社古典新訳文庫、全3巻。

 

 

 

 

 


061.プルタルコス『対比列伝(英雄伝)』
 柳沼重剛他訳『英雄伝』京都大学学術出版会西洋古典叢書、全6巻予定のうち、第3巻まで刊行中(2011年5月現在)。ただ、全訳版になるのかどうかはっきりとは書かれていない。村川堅太郎訳の『プルタルコス英雄伝』ちくま学芸文庫、上中下巻もあるが、こちらは抄訳版。シェイクスピアの人物造型に大いに寄与しているとのことで、調べているうちにどんどん興味が湧いてきた。
追記(2011年12月4日):京都大学学術出版会のものは、全訳予定である。とはいえ、柳沼重剛氏が第4巻の訳出途中(2008年5月)に亡くなられ、以来刊行が止まってしまっている。訳者を交代し、完訳を目指すとのことだが、続刊時期は未定のままだ。

 

 

 

 

 

 


062.ラ・ファイエット夫人『クレーヴの奥方』
 生島遼一訳、岩波文庫

 


063.マルクス資本論
 2005年に「マルクス・コレクション」の一部として今村仁司三島憲一・鈴木直訳の『資本論 第一巻』上下巻が筑摩書房から刊行されている。ただ全3部すべてを読み通すためには、向坂逸郎訳の岩波文庫版全10巻が相変わらず定番のよう。

 

 

 


064.コンスタン『アドルフ』
 新庄嘉章訳、新潮文庫。上掲の『クレーヴの奥方』『危険な関係』と合わせて、フランス恋愛心理小説の起源とされる三冊がすべて挙がったことになる。
追記(2014年11月9日):ほかに岩波文庫大塚幸男訳もある。2014年3月に光文社古典新訳文庫からも刊行された。

 

 

 


065.ボーマルシェ『戯曲』
 全部で6作品ある戯曲のうち、日本で簡単に手に入れられるのは「フィガロ三部作」のうちの最初の二作、『セビーリャの理髪師』と『フィガロの結婚』のみ。前者は鈴木康司訳、後者は辰野隆訳で、岩波文庫に入っている。

 

 


066.アグリッパ・ドービニェ『悲愴曲』
 1552-1630年。ユグノー戦争(1562-1598、フランス語では「Guerres de religion」で、宗教戦争の意)の最中からアンリ四世に仕えていたフランスの詩人。『悲愴曲』は長編詩で、プロテスタントの立場から旧体制を批判し、新教徒たちの受難と最終的な勝利を謳ったものだそうだ。おそらく邦訳なし。

 


067.アルフレッド・ド・ヴィニー『運命』
 1797-1863年。フランスの作家、劇作家、詩人。革命の余波を受けて没落した貴族階級の出身で、1970年代末までは日本でも何冊か翻訳されている。いずれも現在は入手困難。『運命』は二冊目の詩集で、おそらく訳されたことはないだろう。

 


068.ガルシア・ロルカ『詩集』
 1979年に小海永二訳で『ロルカ全詩集』が青土社から刊行されているが、入手困難。同じ訳者による世界現代詩文庫版『ロルカ詩集』は現在でも入手可能。他には会田由訳の『ジプシー歌集』平凡社ライブラリーも手に取りやすい。

 

  • 作者: ガルシーアロルカ,Garc´ia Lorca,小海永二
  • 出版社/メーカー: 土曜美術社出版販売
  • 発売日: 1996/11
  • メディア: 単行本
  • 購入: 1人 クリック: 10回
  • この商品を含むブログ (3件) を見る
 

 


069.マルロー『人間の条件』
 小松清・新庄嘉章訳、新潮文庫。1951年の版で、以来新訳は出ていない様子。ガリマール社が刊行しているフォリオシリーズ(ペーパーバック版、日本の岩波文庫のようなもの)では通し番号第一番を持った作品だけに、ちょっと意外だ。

 


070.ラ・ロシュフコー箴言集』
 自分が持っているのは吉川浩訳の『運と気まぐれに支配される人たち』角川文庫版だが、どうやら絶版になったらしい。他には二宮フサ訳、岩波文庫版もある。

 

 


071.ラ・ブリュイエール『人さまざま』
 関根秀雄訳『カラクテール 当世風俗誌』岩波文庫、上中下巻。ただし、1952年の翻訳。

 

 

 


072.セヴィニェ夫人『書簡集』
 井上究一郎訳『セヴィニエ夫人 手紙抄』岩波文庫。書簡作家としては大家として扱われている人物で、『失われた時を求めて』の語り手の祖母も愛読している(これがたぶん、井上究一郎が翻訳した直接的な理由)。名文家として知られ、『スワン家の方へ』の第一部では「セヴィニェ夫人だってあれ以上の言い方はできなかったでしょうよ」という言い回しにまで使われている。

 


073.リトレ『フランス語辞典』
 17世紀から19世紀までの文章を読むのには必須といわれた、エミール・リトレの編纂による仏仏辞典。1863年から1872年にかけてアシェット社から刊行された。ちなみに2004年以降『Nouveau Littré(新リトレ)』の題で新版が刊行されはじめたが、初版の特徴はすでに失われてしまっていて、『Les Disparus du Littré(リトレから消えた言葉たち)』などというタイトルの辞書まで出る事態となっている。
追記(2014年11月9日):リンクはいまでも手に入る携帯用縮小版。

 


074.ジャリ『ユビュ王』
 竹内健訳、現代思潮社。絶版になって久しく、ほとんど稀覯本扱いとなってしまっている。国書刊行会からいつか刊行されるという噂の『ジャリ全集』を待つのが無難。名前が挙がっているのは『Ubu roi(ユビュ王)』だけだが、ジャリは他にも『Ubu cocu(寝取られユビュ)』、『Les Almanachs du Père Ubu(ユビュ親父年鑑)』、『Ubu enchaîné(鎖につながれたユビュ)』、『Ubu sur la Butte(丘のうえのユビュ)』などと、このキャラクターをシリーズ化していて、それに乗じて近年でも他の作家たちがこの「ユビュ」を主人公に書くという奇妙な連鎖が起こっている。例を挙げると、アンブロワーズ・ヴォラールの『Ubu colonial(植民地のユビュ)』に『Le père Ubu à la guerre(戦場のユビュ)』、ロベール・フロルカンの『Ubu Pape(教皇ユビュ)』、パトリック・ランボーの『Ubu président(ユビュ大統領)』など。

 


075.ヴァレリー『詩集』
 『ヴァレリー全集』筑摩書房、全14巻。そのうちの第1巻が「詩集」に当たる。今年の2月に創刊されたばかりの恒川邦夫編訳の『ヴァレリー集成』筑摩書房にも興味津々。こちらは全6巻予定で、第2巻が今月末に発売予定とのこと。

 

 


076.パスカル『プロヴァンシアル(田舎の友への手紙)』
 パスカルイエズス会から批判されたジャンセニスムを擁護するために書いた、友人に宛てたという体裁を採った匿名の手紙。田辺保訳、教文館刊行の『パスカル著作集』では、全9巻のうちの第3、4巻に当たる。

 

 


077.トーマス・エドワード・ロレンス『知恵の七柱』
 田隅恒生訳『完全版 知恵の七柱』平凡社東洋文庫、全5巻。いわゆるアラビアのロレンスの著作。

 

 

 

 

 


078.メリメ『短篇集』
 杉捷夫・江口清他訳『メリメ全集』河出書房新社、全6巻のうち、第1巻から3巻まで。メリメの作品は戯曲を除けばほとんどが短篇なので、「小説集」となっているこの三冊があれば間違いない。ちなみにこの全集は刊行当時は全7巻予定だったそうだが、最終巻である「書簡・雑文」が出ないまま、6巻で終わってしまっているらしい。

 

 

 


079.ヴァレリー『ヴァリエテ』
 また来たヴァレリー。原書では刊行時期もばらばらに全5巻が数えられた『ヴァリエテ』をまとめたものには、鈴木信太郎・佐藤正彰編訳、人文書院、全2巻がある。
追記(2014年11月9日):第一巻のリンクが見つからない。

 


080.ヘラクレイトス『断片集』
 原文では「Héraclite, Fragments」。残存する断片を著作として再構成したものには、内山勝利編訳『ソクラテス以前哲学者断片集』岩波書店、全6巻がある。ただしヘラクレイトスだけではなく、クセノバネス、パルメニデス、エンベドクレス、アナクサゴラスなども含まれる。

 


081.マリヴォー『戯曲』
 日本語版Wikipediaにも項目すらないという衝撃。モリエールラシーヌコルネイユ、ミュッセに次ぐ、コメディー・フランセーズで五番目に多く演じられている劇作家だというのに! ところでこのコメディー・フランセーズ上演回数の順序が、そのままクノーのリストで名前が挙がる順番ともなっているのが興味深い。全39作品の戯曲のうち、井村順一佐藤実枝・鈴木康司訳『新マリヴォー戯曲集1』大修館書店に4作品、佐藤実枝編訳『マリヴォー戯曲選集』早稲田大学出版部に重複しない5作品が収められている。それにしても、この『新マリヴォー戯曲集1』、「旧」が無いのに「新」だったり、「2」以降がないのに「1」だったりと、突っ込みどころだらけ。

 

 


082.ユゴー『諸世紀の伝説』
 ユゴーが三度に渡って刊行した詩集シリーズの名前。辻昶・小潟昭夫・稲垣直樹訳『ヴィクトル・ユゴー文学館』潮出版社、第1巻「詩集」にタイトルを見いだせるが、三作すべてなのか第一作だけなのかは定かでない。

 


083.カフカ『審判』
 池内紀訳、白水uブックス。光文社古典新訳文庫から出た丘沢静也訳の『訴訟』も気になる。

 

 


084.ヴォルテール『書簡集』
 原文では「Voltaire, Correspondance」となっているので、『哲学書簡(Lettres philosophiques)』を指しているのではない。プレイヤード版全集では全13巻の書簡集が刊行されていて、翻訳では高橋安光訳『ヴォルテール書簡集 1704-1778』法政大学出版局がある。プレイヤード版原書が一冊あたり平均1700ページを越えていることを考えると当然だが、完訳ではもちろんない。それでも1338ページもあり、なんと31500円もする。

 


085.アポリネール『カリグラム』
 アポリネールが文字で絵を描きながら編んだ詩集で、これの翻訳がないのはある意味当然である。訳そうとするならば『煙滅』『文体練習』レベルのアクロバティックな技巧と途方もない覚悟が必要になるだろう。クノーがこれを挙げるのは、なんだかわかりやすい。「カリグラム」あるいは「Calligrammes」という単語で画像検索をかければ、その一部を見ることもできる。

 


086.ジッド『日記』
 新庄嘉章訳『ジッドの日記』日本図書センター、全5巻。ルナールと並んで、日記文学の定番。

 


087.アンデルセン『童話』
 大畑末吉訳『完訳版 アンデルセン童話集』岩波文庫、全7巻。

 


088.デュマ『三銃士』
 生島遼一訳、岩波文庫、上下巻。特に指定はないため、全三部から成る『ダルタニャン物語』の第一部のみ、と解釈した。第二部・第三部も読もうとするならば、鈴木力衛訳『ダルタニャン物語』ブッキング、全11巻がある。

 

 

 


089.カサノヴァ『回想録』
 窪田般彌訳『カザノヴァ回想録』河出文庫、全12巻。著者がイタリア人なのに訳しているのがフランス文学者なのは、この本がフランス語で書かれたため。そのためか、著者の名前もフランス語ふうに、母音に挟まれた「s」を「z」と発音する「カザノヴァ」となっている。

 


090.『千夜一夜物語
 特に版の指定はない。マルドリュス版なら豊島与志雄・佐藤正彰・渡辺一夫・岡部正孝訳『完訳 千一夜物語岩波文庫、全13巻。バートン版なら大場正史訳『バートン版 千夜一夜物語ちくま文庫、全11巻。

 

 


091.コンラッド『ロード・ジム』
 柴田元幸訳『池澤夏樹個人編集 世界文学全集第3集 ロード・ジム』河出書房新社。このリストのなかだと、妙に浮いて見える。

 


092.ノヴァーリス『詩集』及び『哲学的断片』
 今泉文子訳『ノヴァーリス作品集』ちくま文庫、全3巻。『哲学的断片』とは、おそらく第1巻に収められた「花粉」を指す。ちなみにこれと「サイスの弟子たち」には、メーテルリンクによるフランス語訳がある。

 

 

 


093.ニーチェツァラトゥストラはかく語りき
 丘沢静也訳『ツァラトゥストラ』光文社古典新訳文庫、上下巻。

 

 


094.ポール・クローデル『戯曲』
 まとまった全集はなく、気楽に手に取れるものは渡辺守章訳『繻子の靴』岩波文庫、上下巻くらいしか浮かばないが、翻訳の数は存外多い。フランスでは今年プレイヤード叢書が改版された作家で、叢書を三冊購入すると無料でもらえる『アルバム』も、今年は彼の番。私も先日クノー全集全3巻を購入したときにもらった。今はどこの本屋へ行ってもこの作家の写真が拝める。

 

 


095.コルビエール『黄色の愛』
 夭折した詩人トリスタン・コルビエール(Tristan Corbière, 1845-75)の発表した唯一の詩集。生前はまったく無名で、その死後ヴェルレーヌが『呪われた詩人たち』というエッセイのなかでランボーマラルメとともに取り上げたことで、一般に知られるようになった。おそらく邦訳はなし。

 


096.ユゴー『静観詩集』
 前掲の『諸世紀の伝説』と同様に、辻昶・小潟昭夫・稲垣直樹訳『ヴィクトル・ユゴー文学館』潮出版社、第1巻「詩集」。これは一冊だけなので、間違いなく全文が載せられているものと思う。

 


097.十字架のヨハネ『暗夜』
 原文では「Saint Jean de la Croix, La Nuit obscure de l'Âme」。翻訳としては山口・女子カルメル会訳『十字架の聖ヨハネ 暗夜』ドン・ボスコ社。

 


098.ゴーゴリ『死せる魂』
 『ゴーゴリ全集』河出書房新社、全7巻のうち、第5、6巻に中村融訳がある。平井肇訳、岩波文庫、上中下巻もあるが、1937年の訳文なので苦行になると思う。

 

 

 

 

 


099.ウェルギリウスアエネーイス
 岡道男・高橋宏幸訳、京都大学学術出版会西洋古典叢書が新しい。泉井久之助訳、岩波文庫、上下巻もあり、自分が持っているのもこれなのだが、訳は1976年のもの。

 

 

 


100.ジョルジュ・ベルナノス『田舎司祭の日記
 渡辺一民訳、春秋社。1988年の翻訳だが、もう一つの選択肢、木村太郎訳の新潮文庫は1951年のもの。

 

 


 終わった! こうして見ると、古典が非常に多い。百冊しか選べないのでは仕方がないのかもしれないが、それにしたってギリシャが多い(一部ローマ)。フランス文学に偏っているのは当たり前なのかもしれないが、同時代人の作品はほとんど入っていない。英文学に関しては、ジェイン・オースティンは入っていないのにエミリー・ブロンテは入っているなど、頭をひねる部分も多い。ドストエフスキーは「五大長篇」のうち三作が入っているのに、チェーホフにはなんの言及もない。『戯曲』だの『詩集』だの反則的な括りを多用しているのだから、作家百人にすれば良かったのに、とも思った。

 恐ろしく時間がかかったが、楽しかった。しかしこういうことをしていると、読みたい本が増えすぎて困る。死ぬまでに全部読んでやる。




以上の内容はhttps://nina313.hatenablog.com/entry/2011/05/19/000000より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14