2020年に大規模改修が完了した、サントリー美術館が所蔵する重要文化財「酒伝童子絵巻」(狩野元信筆/サントリー本)の展示会。
改修のおかげか、絵巻の色が瑞々しい。着物の緑の上に金とか。こんなに巻物を開いて展示してくれているのって、個人的には『鳥獣戯画』展以来かな。眼福でした。
サントリー本
金で描かれた線、彩色もすべて、美しかった。文字も読めるといいんだけどねぇ。
出自
大永2年(1522)に、小田原の北条氏綱(後北条家第二代)の依頼によって制作開始。絵は狩野元信。
徳川家康の娘・督姫(良正院)の嫁入り道具。督姫は、初め小田原の北条氏直に嫁いだ。なお、北条氏直は後北条家第五代で、小田原征伐により、秀吉に敗れたひと。氏直との死別後、文禄3年(1594)に池田家へ再嫁し、その際に北条家伝来のサントリー本を持参したという来歴。
粗いあらすじ
源頼光が、勅宣により大江山の酒呑童子という怪物を退治する話。
四天王と呼ばれる源頼光の部下には、金太郎で有名な坂田金時や、自分でも鬼退治をした渡辺綱もいる。キャラクターのみんなは、たくさん浮世絵になっていて楽しい。
もうちょっと詳しいあらすじ
京都で神隠しが頻繁に起きていた。一条天皇が安倍晴明に占わせたところ、酒呑童子の仕業とわかる。これを討伐する勅宣がくだる。
受けたのは、源頼光。
多人数だと気づかれるということで源頼光は自身と四天王(渡辺綱、坂田金時、碓井貞光、卜部季武)と藤原保昌という少人数の討伐隊を編成。山伏に変装して退治に向かう。
退治に向かう前に、頼光と保昌は石清水八幡へ、綱と金時は住吉明神へ、季武と貞光は熊野権現に成功を祈る。この神々は、討伐隊を手助けする。
神隠しの被害者である女性に山で遭遇し、酒呑童子の居場所まで案内をしてもらう。
鬼がたくさんいたが、酒呑童子に会わせてもらえることになる。
そこには、身長3mほどの巨人がおり、それが酒呑童子だった。
安心させるために饗応に応じ、神々から拝領した毒酒を飲ませ、油断させる。
寝所にひっこんだ酒呑童子は、さらに巨大化した鬼の姿に戻る。
奮闘の末、最終的に討ち取ることに成功する。

月岡芳年 - 国立国会図書館デジタルコレクション:永続的識別子 1310286, パブリック・ドメイン, リンクによる
童子切安綱
伯耆国の安綱作。国宝。
坂上田村麻呂→伊勢神宮→源頼光 →足利将軍家 →豊臣秀吉 →徳川家康 →津山藩松平家→個人蔵→東京国立博物館所蔵(所有は独立行政法人国立文化財機構)
参考:鬼切安綱(鬼切丸。髭切)
酒呑童子を切った刀ではないが、四天王の一人渡辺綱が、別途鬼退治をして鬼の腕を切ったのが、鬼切丸。酒呑童子の件のなかに、鬼を切ったのが二人もいることになる。
坂上田村麻呂→伊勢神宮→源頼光→(貸出)渡辺綱(返却)→源家→新田義貞→斯波高経→最上氏→北野天満宮
源家のものなのに、室町幕府や徳川幕府に、よく奪われなかったもんだ。
酒呑童子ビギンズ:酒呑童子の生まれは?;ライプツィヒ本
ライプツィヒ本とは、ライプツィヒ・グラッシー民族博物館(GRASSI Museum für Völkerkunde zu Leipzig)に所蔵されている、住吉廣行筆「酒呑童子絵巻」のこと。
第10代将軍徳川家治の養女であった種姫が、天明7年(1787)に紀州徳川家へ輿入れした際の嫁入り道具という出所。幕末にドイツ人がドイツに持って帰る。彼の地に専門家がいないせいで、2017年まで絵巻が広げられることなく、美しく保存されていたという不思議な来歴。
内容は、サントリー本の流れを汲み、全6巻のうち後半3巻はほぼ同じ。
サントリー本をベースにして、250年後に作られたエピソードゼロ。Star Warsのep.4,5,6がサントリー本で、そこにep.1-3をくわえたep1-6で作り上げたのがライプツィヒ本という感想。
前日譚
全6巻の前半3巻は、サントリー本にない前日譚が描かれている。
素戔嗚尊が、八岐大蛇を退治する。退治された八岐大蛇の怨念が、伊吹山にこもり、人々は恐れて伊吹明神として祀る。伊吹明神が地元の長者の娘と通じて生まれたのが、酒呑童子。
酒呑童子は、比叡山の稚児となる。鬼の面を大量に作るなど、才を認められるが、酒乱の気があったので、最澄に断酒させられる。うっかり酒を飲んでしまい、最澄に比叡山から出ていくようにいわれ、父母の元に帰る。父母は、本当の親は伊吹明神なのでそちらにと体良くかわされ、伊吹明神と会った後、大江山に籠る。
オールスターというか、アベンジャーズというか、という構成ですね。
後半の3巻は、サントリー本とほぼ同内容。
おまけ:thanks to 滝夜叉姫
『夢枕獏・伊藤勢『瀧夜叉姫 陰陽師絵草子 』(第3巻)で出てきた源頼光からの、酒呑童子の話。これを読んでいなかったら、たぶんこの展示会に行っていない。
鳥獣戯画展。2014年だから10年以上前ですね。京都国立博物館の平成知新館落成記念。