そこかしこに穴が空いていたのに、気づかずその上を歩いてきてしまった。歩き終えてから振り返り、陥穽の存在に気づいて慄然とする。そんな読み心地の小説であると思う。エリーザ・ホーフェン/浅井晶子訳『暗黒の瞬間』(東京創元社)は、法学者でザクセン州憲法裁判所の裁判官も務める著者のミステリーにおけるデビュー作だ。現役法曹家の作家というとフェルディナント・フォン・シーラッハの名前がすぐに思い浮かぶだろ