今度は過去の物語なのか。台湾作家・紀蔚然『DV8』(舩山むつみ訳/文藝春秋)が刊行された。2021年に翻訳され、第13回翻訳ミステリー大賞にも輝いた『台北プライベートアイ』(現・文春文庫)の続篇である。元演劇人で大学教授でもあったが、すべてを投げ出して私立探偵に転職したという無茶な男・呉誠が今回も主人公となる、一人称一視点の私立探偵小説である。前作で呉は首都・台北を騒がす連続殺人事件を解決に導いた