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虐待の把握を困難にしていることの一つに、子どもの話を聞く人が多いことが挙げられます。子どもは最初に、学校や医療機関など、虐待を発見した人に親から受けた辛い思いを語ります。そして、児童相談所に話が持ち込まれると、再び相談所の職員に同じ話をします。また、一時保護されることになれば、医療やカウンセリングなどを受け、さらに親を立件することになれば、警察や検察にも同様の話を繰り返します。
結果、同じ話を何度もしなければならず、子どもの心に大きな負担を与えます。これが楽しい話であれば良いのですが、虐待に関しては真逆。せっかく支援者の力添えで立ち直りかけても、その話をするたびに辛い思い出がよみがえります。辛い思いを何度も思い出せば、子どもの心の回復は遅れ、虐待の実態把握も難しくなります。
また、つらい思いから逃れたい気持ちが働き、思い出せなかったり、記憶が変わったりすることもあります。これは、子どもが相手を選んで都合良く嘘をついているのではなく、聞く人によって思い出す記憶が異なるからです。そして、子どもの話が変われば、虐待の実態把握もより困難になります。
同じ話を何度も聞くのは、聞く側がその子から何を聞き出したいかが違うからです。つまり、聞く側の都合です。そこで、「聞く側の都合を一本化し、子どもの話を聞く人を一人にすれば、子どもの負担も軽くなるのでは」との考えで設立されたのが、前述した施設というわけです。
なお、子どもから真実を聞き出すには、話を聞く人に安心感が求められます。しかし、子どもによって感受性は異なります。聞き手が一人と仮定すると、その人がすべての子どもにとって安心できる人とは限りません。そうした懸念点があるため、子どもが相談を寄せる窓口は複数あった方が良いとする考えもあるようです。
【船越 克真:教育カウンセラー】
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