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週プレNEWS
トキタ もともとは俺がお願いしている彫り師の人からの紹介だったんだよね。顔見知りの仲介だったし、割と気軽な感じでOKしたら、すぐに編集者と一緒に事務所へやって来て、仕事のことをひととおり話して、実際に客にも会わせてやったんです。「高利で金を借りる人間ってのはこんなヤツだぞ」って(笑)。
―職業柄、取材を受けることにはリスクもあるのでは?
トキタ 当時は現役だったから、それは確かにあります。俺はパピヨンを多頭飼いしていたんだけど、真鍋さんがそれを「マンガの設定に使いたい」と言うから、「それはさすがに、俺だってわかっちゃうからやめてくれ」と断ったんです。その結果、犬ではなくウサギ好きな闇金業者という設定が生まれたらしいよ。
―自身がモデルとなったコミックがこれほど人気を集めている現実を、どう受け止めてらっしゃいますか?
トキタ 結局、下の人間はさらに下の人間を見て安心したいんじゃないかな。自分よりも貧乏で弱くて不幸な存在を見ることで、“自分はまだ大丈夫”と再確認する。根本的なことでいえば、ボランティアだって同じだよね。あれは困っている人を助けることで、安心感をタダで買っているようなものだから。
―では、実際に多くの闇金利用者と接してきて、彼らに何か共通するものは感じますか?
トキタ 今回の本では、客のことをクズだなんだとあえて辛辣(しんらつ)に書いているけど、彼らは別に落ちた存在じゃない。彼らなりに精いっぱい生きている。だから、“こんな自分にもまだ金を貸してくれるところがある”という、安心感を覚えて帰るヤツが多いよね。一方で、こっちは真剣に客と向き合っているから、“あ、この人そろそろ死ぬな”と察してしまうこともある。それは自殺であっても病気であっても、追い詰められることで生じるちょっとした予兆や変化には敏感になってしまう。
―昨今、闇金業者は減少傾向にあると聞きます。トキタさんがこの仕事から足を洗うことになったきっかけはなんだったのでしょうか?
トキタ 法律が厳しくなった分、商売替えをしたり地下に潜ったりした業者は多いと思う。俺の場合は、従業員のひとりが逮捕されたことで、そろそろ潮時なのかな、と。もともと一生続けていく仕事ではないと思っていたし、従業員にも「金はいくらでもやるから、早くこの仕事を辞めることを考えろ」と言っていたからね。実際、うちの従業員で、足を洗って飲み屋をやったり保険屋をやったり、カタギになったヤツは大勢いるよ。
―景気が上向きといわれる昨今、闇金利用者も減っていくのでしょうか?
トキタ いや、むしろ景気のいいときのほうが客は増えるんですよ。バブルの頃もそうだったけど、どんどん金が入ってくる時期というのは、人はどんどん金を使う。それこそ、借金してでも大きな金を回そうとするからね。最近はサラ金もカード会社も審査が厳しいから、借りたくても借りられなくて困っているヤツがたくさんいると思う。
―闇金業者の減少は、そういう人たちの受け皿をなくしているということでもあるんですね。
トキタ そう。結局、俺たちがやっているのは、ただの“営業”だから。「こういう条件で貸しますから、いつまでに返済してくださいね」と約束して営んでいる金貸しで、ルールにがんじがらめで融通の利かない銀行なんかより、よほど人間味があったと思うよ。「今月どうしても厳しくて……」と相談されれば、自分の裁量で金利や返済額をどうにかしてやることもできたしね。
―最後に、お金に困っている人に何かアドバイスを!
トキタ 金に困ったら、金を持たないのが一番。まずは、ムダな出費をストップするところから始めること。財布に金が入ってなければ使えないわけだから、これはけっこう効果的なはず。俺も独立直後は苦労していたから、なるべく財布に金を入れないようにして、メシも3食インスタントラーメンで済ませていた時期があったしね。本当に蓄えを増やしたいと思ったら、やるかどうかは別にしても、自販機の釣り銭を手当たり次第にあさるぐらいの気持ちは必要だよ。どんな世界でも、そういう地道な努力が大切だからね。
(構成/友清 哲 撮影/村上庄吾)
●トキタセイジ 1971年生まれ、東京都出身。都内の高校を卒業後、外国語の専門学校に進学。1年で中退した後、某消費者金融に就職。その後、独立して高利貸しを営む。現在は貸金業を引退し、企業顧問、不動産取引などさまざまな事業を展開している。なお、著者名の「トキタセイジ」は、闇金時代に使用していた数ある偽名の中のひとつ
「『闇金ウシジマくん』モデルが語る路地裏拝金エレジー」 蒼竜社 1100円+税 妻との離婚費用が払えずにいる中年フリーター、借金返済のために風俗に身を落とす女、親分にナイショで金を借りに来るヤクザ……etc.。人気コミック『闇金ウシジマくん』のモデルになった人物が闇金時代の13のエピソードを公開