起業希望者の数は一貫して減少
これまでも、起業家を支援する方策は様々とられてきました。金融支援としては低利の貸し付けや補助金、公認会計士や弁護士による会計・税務や法律面からの支援、地域の公共支援機関が提供するマッチングや技術支援などです。それにもかかわらず、起業希望者の数は1997年の166.5万人から2012年の83.9万人へと一貫して減少しています。
中小企業白書によると、開業率が低い理由としてトップに挙げられているのが、「起業した場合に、生活が不安定になることに不安を感じる」ということです。今回の施策は、この不安を払しょくすることを目的としています。
研究開発型ベンチャーへの起業促進に期待
通常の起業では、売り物やサービスは開業前に決まっています。開業後2、3か月の運営資金は勤務時代に貯蓄した自己資金から捻出し、設備投資が必要であれば金融機関からの借入も検討して、事業を軌道に乗せるべく顧客作りにエネルギーを注ぎます。
一方で、研究開発型のベンチャーの場合は、売るもの自体をつくるところから始めなければなりません。研究が成功するまでは一銭の収入もない状態で生活するわけですし、それが事業化に結びつくかどうかの保証もありません。加えて、研究を進める上では、専門的な設備装置や試作品開発などにも資金が必要となります。在職中に創業資金をコツコツ貯蓄して起業したり、金融機関に事業計画書を持って行って交渉するのとでは、研究開発型ベンチャーは少々事情が違うことは想像できると思います。今回の施策は、政府版のエンジェル投資家といえなくもありません。
2年間という期間が、研究開発が事業化に結び付くまでの十分な期間と言えるのかどうかは、個々の研究テーマごとに異なるのでなんともいえません。また、対象となる人材が、大企業を離れるリスクを取ってまで応募するかも未知数です。しかしながら、研究開発型ベンチャーで起業にチャレンジしようとする人のスタートアップ時の不安を取り除く有効な方策の一つではないかと考えます。
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