運用が難しい病院のIT環境
しかし、その代償は時に大きい。京大病院では2008年、医師が研究のために持ち出した患者情報の入ったUSBメモリがひったくりに盗まれ、新聞沙汰になったことがある。また、無線LANへの不用意なアクセスも危険極まりない。たとえば、輸血バッグのバーコードリーダーも、無線LANで運用している。単なるネットワークの話といえばそれまでなのだが、病院の場合は、人の命を預かる仕事。情報インフラに支障が出れば、輸血の取り違えや投薬ミスといった、致命的な間違いにつながりかねない。
黒田教授は「医師たちの要望には可能な限り答えれば、隠れて何かをされる危険はなくなるはず」というモットーのもと、院内の情報システム環境の改善に力を入れている。医師が「こんなデータが欲しい」と言えば、現在10人ほどいる担当者が必要なデータの選定から収集までを請け負う。今年5月から本格運用を始めたのは、クラウドプリンティングシステムだ。
前述したようにこれまで、院内からはウェブ閲覧はできても、プリントすることはできなかった。患者に自宅近くの通院先を教えたくても、アクセスマップ1つもプリントできないのだから、当然医師たちのフラストレーションはたまっており、ちょくちょく抗議もされていたという。コニカミノルタとシスコシステムズが共同で提供したシステムによって、仮想デスクトップとは独立した、セキュアなプリントルートを実現した。
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