Ismailさんは「母親は朝の6時に起きて一日中仕事をし、帰宅してからは私たち兄姉の晩ご飯を作ってくれました。そして私がずっとコンピューターばかりいじっているときには『コンピューターばかり触って』と叱ってくれました。しかし、私が作ったゲームは「魚を機関銃で倒す」というだけのシンプルな内容にも関わらず、母親がこれまで一生懸命働いて稼いできたお金よりも多くのお金を、寝ている間に一瞬で稼いでしまったのです。頭のどこかで『自分はよく働いた、自分の安定を犠牲にし、経済的なリスクを顧みず長い間頑張った』と考えていましたが、それでも自分の成功を恐ろしく感じます。私はいまだに母親が仕事に行くのに車に乗って出かけていくイメージを頭の中から取り除くことができません」と、自身の感じた「後ろめたさ」の理由について語ります。 By Dave Allen
Ismailさんたちはインディーズのゲームクリエイターであり、ゲームメーカーではありません。今日、独立したゲームメーカーやインディーズのゲームクリエイターは、Ismailさんたちよりも短い時間でより大金を稼ぐことも可能です。ゲームクリエイターに必要なものはPCのみで、図書館やバスルームでひとりで働くことすら可能だ、とIsmailさんは言います。 By Teemu Haila
それでも、ゲームがヒットすればデベロッパーはたちまち億万長者に変身してしまいます。なので、このおとぎ話のような一攫千金のチャンスは「一生懸命働く」というモラルを惑わせることにもつながっている、とThe New Yorkerは指摘。
しかし、ゲームというものに対し、多くの人は「幼稚だ」とか「無意味なもの」といった考えを抱きがちですが、人間は「芸術性」や「モラル」など不確かなものの価値をお金で計りがちなので、ゲーム開発に潜む一攫千金のチャンスが一般人にゲームというものを認知させる効果も持っている、とも記しています。 By Tracy O
2013年10月、Ismailさんはアメリカ・テキサス州のオースティンへ向かい、「The Stanley Parable」というゲームの開発者である24歳のDavey Wredenさんに会いました。IsmailさんはWredenさんに「ゲームがたくさん売れた際は、そのお金で何かを買うべき」というアドバイスをします。なぜこの様なことを勧めたのかというと、何かを買うことで自分がお金を稼いだ事実をよりリアルに体感できるから、とのこと。その後The Stanley Parableは60万本以上売れ、630万ドル(約6億4000万円)以上の収入を得たそうで、Wredenさんはそのお金で欲しいと考えていたものを購入したそうです。
しかし、Ismailさんのアドバイスを聞いていたにも関わらず、Wredenさんは大金を得た後、孤独感と混乱に襲われたようで、彼は自分が「意気消沈」していることをブログに投稿しており、その中で「誰かが自身を非難しているのではないか」と感じている、と記述しています。 By BMcIvr
Minecraftの開発者であるMarkus Perssonさんは、2012年に1億ドル(100億円)以上を稼いだそうです。2013年にThe New YorkerがPerssonさんにインタビューした際、彼も突如手に入れた大金に「後ろめたさ」を感じた、と語っています。しかし、現在はいくぶん大金にも慣れ、プライベートジェットで旅行に行ったり自宅で盛大にパーティーを開いたりするようになっている、とのこと。
Microsoftから2008年にリリースされたBraidというゲームのクリエイターであるJonathan Blowさんは、インディーズゲームクリエイターで、このゲームのヒットで億万長者になりました。Blowさんは大金を手に入れた後真っ赤なTesla Roadsterを購入したそうですが、残りのお金400万ドル(約4億1000万円)近くは次のゲーム開発に注ぎ込んだそうです。しかし、こういった方法をとると、ゲーム開発に多額の投資を行う分、次の作品をより大ヒットさせなければいけないことになり、それはそれで大きなプレッシャーを自分自身にかけることとなってしまいます。 By Casey Konstantín
インターネットやメディアの発達と共に、より多くのデベロッパーが日の目を見る機会を得られるようになったゲーム業界ですが、それと同時にさまざまな問題も生じているようで、デベロッパー自身が変化の激しい周囲の環境にうまく適合していくことも成功に必要な要素のひとつのようです。 By sean dreilinger