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【ベルギー戦】GK 川島永嗣MF 酒井宏 森重真人 吉田 酒井高(今野)MF 山口(遠藤) 長谷部 清武(岡崎) 本田 香川(細貝萌)FW 柿谷(大迫)
ベルギー戦では香川と細貝の交代以外、全て同ポジション同士の交代だった。
82分、細貝が守備的MFに入り、守備的MFの遠藤が1トップ下へ。1トッ プ下を務めていた本田が右に回り、右にいた岡崎が左に――というものだが、すなわち、戦術的な交代はそれしか行なわれなかったことになる。アイデア豊富という感じでは全くない。その唯一の戦術的交代も成功したとは言い難い。
残り8分での細貝投入は、紛れもない守備固めだ。その2分前に日本は3対1から3対2に追い上げられていた。だが、細貝を入れてもその流れは止まらなかった。それどころか、いつ同点にされてもおかしくない劣勢に陥った。それまでの日本のよい流れは、その交替によって結果的に寸断されることになった。
細貝投入は常道とも言うべき作戦だが、ベルギー戦は一方でテストマッチだ。すでにオランダ戦で結果は十分出ていたし、ベルギー戦もそれまでの戦いで「やれる」という自信をつかんでいたはずだ。たとえ攻撃的に出て3対2から3対3にされても、あるいは3対4にされても、その自信が揺らぐことはなかったはずだ。
もしそれで敗れれば、結果至上主義者は勝てなかった理由を追及するに違いない。だが、いま問われているのは内容なのだ。ザッケローニも「結果ではなく内容だ」と、この2連戦に先立って述べていた。もし最後まで正攻法を貫き、それで勝利を飾ることができれば、勝利プラスアルファの収穫を得ることになる。
それは日本のマックス値を探るまたとない機会だったのではないか。結果を恐れず、最後までもっとガンガンいくべきだったと僕は思う。ベルギーもその方が嫌だったはずだ。ベルギーのサッカーはけっして上手くいっていなかったのだから。
何度も言うが、サッカーは可能性を探るゲームだ。次に対戦したら、どんな結果になるか。問われるのは10回戦って何回勝てるか、だ。「今回は勝ったけれど、次はやられそうだ」、「親善試合では勝ったけれど、本大会ではやられそうだ」ではマズイのだ。
ザックジャパンは南アW杯ベスト16という結果を受けてスタートした。大きな声では言えないが、前回は少しばかりまぐれっぽい結果だった。とはいえ、少なくともファンは可能性という点で、岡田ジャパン以上のものを望んだ。それ以上の期待感を抱こうとした。ザッケローニはそうした国に、いわば救世主として、しかも4年契約同然の高年俸で招かれたわけだ。
幸いにも選手のクオリティは、南アW杯当時より、少しばかり上がっている。世界も進歩しているが、日本もなんとか遅れずについていっている。日本のサッカー界はいま、そういう状態にある。できれば本大会でダークホースになりたい。ベスト8を狙いたい。「最低5試合。最大7試合戦うつもりでやってきた」 とは、U?17W杯に臨んだ吉武博文監督の言葉だが、ファンは、代表チームが最低5試合を戦う期待を抱きたいという視点で、ザックジャパンと向き合っているはずだ。
そうした視点でザッケローニのこの2連戦の選手起用を見ると、まだまだ物足りなさを感じる。5試合を戦うだけの多彩さとスケール感に乏しい。ザッケローニにはもっと、もっとアイデアを発揮してもらわないと、満足はできない。
例えば、だ。柿谷と大迫は同じタイプのFWではない。そのことは、7月に行なわれた東アジア杯、対オーストラリア戦でも明確になったはずだ。大迫は1トップ豊田陽平の下で先発し、活躍したというれっきとした事実がある。進境著しい大迫をチーム力に反映させようとすれば、大迫を柿谷と同じポジション(1トップ)ではなく、柿谷の下に据えてみる手もあったと思う。
細貝を守備固めに入れる手もあるが、柿谷の下で大迫を使い、例えば本田を一列下げてみるという手もあるはずだ。
守備固めというなら、両サイドバックをサイドに2枚縦に並べる(例えば長友や内田を酒井高、酒井宏の上に入れる)手もある。このほうが守備固めの方法としてははるかに攻撃的だ。
そのような少しばかり意外な采配をしていかないと、可能性は膨らんでいかないと僕は思う。何より選手が新鮮な気持ちでプレイできない。
この2連戦で日本が強豪相手に大健闘した理由は、まさにその新鮮さにあったと思う。選手を入れ替えたことでマンネリズムから解放された結果である。メンバーの固定化は可能性を減退させる。小さくまとめてしまう危険が大なのだ。それではW杯でダークホースになることはできない。5試合を戦えないと僕は思う。
杉山茂樹●文 text Sugiyama Shigeki