試合後の記者会見、アルベルト・ザッケローニ監督は国内組の選手とともに深夜バスでパリまで移動するため15分程度で会見を終了した。続いて現れたマルク・ヴィルモッツ監督には、ベルギー人記者から次々と質問が飛び、会見場は重苦しい雰囲気に包まれた。
「21013年は我々にとって素晴らしい1年だった。予選では一度も負けていない。しかし今日の相手はフィジカルが良く、日本のパス回しに後ろへ戻って走りながら守ることを強いられた。選手たちはそれぞれのクラブで主力としてプレーしていないため、リズムを失っていた。疲れている時はミスを犯してもリカバーできず、適切に守るのは難しい」
過去、日本はFIFAランク5位の国に勝ったことが1度だけある、ザッケローニ監督が就任して間もない2010年10月のアルゼンチン戦だ。しかし、その試合は日本で行われた。今回はベルギーのホーム。それも先制しながら打ち合いの末に2-3と逆転負けを喫しただけに、ショックも大きかったに違いない。
ベルギーは14日のコロンビア戦からスタメン5人を入れ替えてきた。テストマッチということで、多くの選手をテストしたかったのだろう。そしてザッケローニ監督も、6人のスタメンを入れ替えてきた。前日会見で「W杯へ向けてチーム力を高めないといけないし、メンバーのテストをしないといけないので、(オランダ戦から)代えようと思っている」と指揮官は語っていたが、これほどまで大胆なスタメン変更は初めてだった。
ところがオランダ戦同様、日本はミスから先制点を献上する。アザールのタテパスに抜け出したルカクが吉田を振り切り、飛び出したGK川島も抜いてクロス。ゴール前では酒井高が緩慢なプレーからミララスに押し込まれた。「失点は自分のミス」と川島は言うが、ミスの連鎖が失点につながった。
ただ、オランダ戦同様、前半に同点に追いついたのは大きかった。37分に酒井宏樹のクロスを柿谷曜一朗がヘッドで決めて、欧州組が合流した代表での初ゴールをマーク。そして後半8分には香川真司、遠藤保仁、本田圭佑のパスワークから逆転弾をゲット。10月の遠征で3人は中央突破のバリエーションを増やすことにトライしたものの、それが攻撃を停滞させたことを認めていた。
しかしこの日は、遠藤が1テンポ遅らせ、相手守備陣の死角に入ってパスを引き出すことで危険な存在になっていた。ペナルティエリア左へスッと入ってパスを受け、本田の逆転弾をアシスト。本田も「自分たちの良さが出せた」と攻撃のバリエーション増に手応えを感じていたようだ。
FIFAランク5位のチームに敵地で勝ったことは大いに評価していいだろう。しかし、勘違いしてはならない。所詮はテストマッチに過ぎないからだ。W杯やコンフェデ杯のような真剣勝負では、相手の目の色も違ってくるし、何よりも“本気度”は比較にならないことを自覚する必要がある。
※撮影は、岸本勉(PICSPORT)。
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