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また、今季は第31節までにドローが11試合、1点差での黒星が13試合もあった。それも「頼れるリーダーがいなかったから」と、別のチーム関係者がぼやいた。「チームを鼓舞して、叱咤激励するような存在がいれば、あと勝ち点20は上積みできた」
その問題について、関塚監督は明言を避けていたが、「できれば、ボランチのポジションの選手で......」と漏らすなど、チームを引っ張ってくれる選手が出てきてくれることを期待していたふしはある。だが、絶対的なリーダーは最後まで登場することなく、降格の時を迎えてしまった。
そして、名門を培ってきた"ジュビロカラー"の払拭こそ、降格を招いた最大の原因だろう。
始まりは、外部から来た強化スタッフが、ジュビロ在籍わずか1年の森下監督を指揮官に任命したことだった。以来、前身のヤマハ発動機時代からクラブ強化に奔走してきた人材や、ジュビロの黄金時代を築いた面々が選手の育成やチーム強化に関わることが減った。
トレーニングにおいても、ジュビロらしさが消えていった。これまでは、一定のルールを設けながらも、いい意味で自由さがあるムードが継承されてきたが、そうした雰囲気は徐々に一掃されていった。他チームの指導者となって練習を見学に来たあるOBは、その光景を見て驚きを隠せないでいた。
「監督と選手の関係が、やや一方通行のように見えた。まるで高校の部活のよう。もちろん、それが悪いとは言いませんが、強かった頃のジュビロの練習風景とはまったく違った。やはり、プロはサッカーが仕事。社会人としての豊富な経験が、結果的に競技のレベルを上げることがある。そういう社会人としての行動にも制限をつけて、上から抑えつけるだけの指導はどうなんでしょうか......」
また、クラブハウスが誕生して以来、同じ建物内に同居していた記者スペースが、今季から別のエリアへ移動した。非公開練習が増え、ファンがクラウンドに足を運ぶことも減った。かつては、練習や試合に来るファンのゲキに選手たちも奮い立っていたが、今やメディアと選手との距離を遠ざけ、極力ファンの声が選手に届かないようにしている。
古くからクラブに在籍する関係者は、そうしたチームのスタンスに苦言を呈した。
「今は、選手もスタッフも(外部の雑音から)守られた状態にある。記者やサポーターの厳しい目から逃れて、ぬるま湯に浸かったような状態。だから、成績不振にも他人事のようになる」
そして彼は、こう続けた。
「ここまで築いてきた良いものが、ひとつひとつ積み上げられて『名門』と呼んでもらえるようになった。それを簡単に捨て去ろうとしたことが、今回の降格の大きな要因だと思う」
今後は、降格から1年でのJ1復帰が最大の目標となる。加えて、ファンが求めるものは"強いジュビロ"の復活だろう。そんな理想を築くために必要なのは、奇しくも以前クラブが掲げていた『原点回帰』。本来の"ジュビロカラー"を取り戻すことが、その第一歩になるのではないだろうか。
望月文夫●文 text by Mochizuki Fumio