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人間が「は虫類」になったら「身長が16.15mになる」
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■体温は食費のムダ
は虫類は人間のように体温を一定に保つ機能がない。トリやヒトが恒温(こうおん)動物と呼ばれるのに対し、は虫類が変温動物や冷血動物と呼ばれるのは、自分で体温を作り出す機能がないからだ。
体温を一定に保てると地域や天候の変化に左右されにくいのがメリットで、地球の広い範囲に哺乳類が生息するのに対し、ヘビやカエルは冬になると活動できず冬眠して過ごすのも体温の差だ。それなら恒温動物の方が生き残る率が高く思えるのだが、一概に有利とは言えない。体温を維持するために身体を大きくできないからだ。
身体が大きくなると表面積が増え体温を失いやすい。そのため寒冷地に生息する恒温動物は首や尾など突出した部分が短くなる傾向がある。これはアレンの法則と呼ばれ、アザラシやトドのずんぐりとした体形や、ホッキョクグマの耳が小さい理由だ。
また、身体が大きくなって表面積が増えると体温を維持するための基礎代謝速度を上げる必要がある。表面積の小さいマウスなら1日5kcal程度で済むのに対しウサギは約100kcal、ゾウになると毎日およそ10万kcalが必要となるので、大量な食べ物が必要になるのだ。
ヒトも同様で、標準的な体格・職業の成人は1日2,000〜2,300kcal程度で済むのに、そのうち1,500kcalもが基礎代謝だけに使われている。普通に暮らすだけで65〜75%も失ってしまうのだから、エコには無縁の燃費の悪さなのだ。
対して変温動物の基礎代謝は圧倒的に低く、ワニは人間の10分の1程度と言われている。寒いと動けなくなるが、基礎代謝はさらに低下するのでじっとしたままやり過ごせば良い。
その間に敵に襲われるリスクは否めないが、対抗策として身体が大きくなった動物も多い。ロロンの後釜として世界最大のワニとなったカシウスは、体長5.48mと少し小ぶりだが、体重1.1トンの堂々たる風格だ。何よりも驚きなのは年齢で、推定ながら110歳でワニ・最高齢記録も持つ。どちらも低い基礎代謝の恩恵と考えられている。
すごいぞは虫類。盆と正月が一緒に来たようだ。
■身長16mの僕たち
身体が大きくなるほど体温維持が難しくなるが、同時に代謝率が下がるという不思議な面もある。クライバーの法則だ。この法則では変温/恒温を問わず、必要なエネルギーは体重の3分の4乗となり、重くなるほど消費率が下がるのだ。
先の基礎代謝速度に体重を当てはめ、マウス=20g、ゾウ=5トンとして体重1kg当たりの基礎代謝速度を計算すると、マウスは250kcal必要なのに対し、ゾウはたったの20kcalで済む。つまり身体が大きくなるにつれ絶対的な食事量は増えるものの、体重1kg当たりで計算すると、加速度的に少なくなるのだ。
さらにクライバーの法則を詳しくみると、単細胞/変温/恒温動物によって係数が異なる。
・単細胞生物 … 0.018×(体重の3/4乗)
・変温動物 … 0.14×(体重の3/4乗)
・恒温動物 … 4.1×(体重の3/4乗)
となり、同じ体重なら変温動物は恒温の29.2分の1のカロリーで済み、同じカロリーなら90.3倍の体重に増やせることになる。
これを厚生労働省・2010年のデータに当てはめると、26〜29歳の男性の平均体重は、66.5kgから6,005kgへと一気に跳ね上がる。平均身長は170.4cm、体格指数BMIは23.0でやや基準値を超えているが、このBMIを維持すると身長は驚きの16.15mとなる。
もしも人間がは虫類になったら、着るものはおろか家にも入れない。寝返りを打つだけで近隣トラブルが多発しそうだ。
■まとめ
ガラパゴスゾウガメの最後の個体となったロンサム・ジョージは、2012年にその生涯を閉じるまで100年以上を生き続けた。長寿のシンボル・亀らしい生きざまではあるが、仲間も伴侶もいない年月は、さぞかし寂しかっただろう。
ヒトの寿命も延び続けているが、長く寂しい余生が待っていると思うと喜びも半分だ。
(関口 寿/ガリレオワークス)
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