僕は動物園でパンダを見ることに特別な興奮を覚える世代です。パンダという珍しい動物がいて、それが上野動物園というところにいて、それを見てみたいと田舎から憧れた少年でした。あの愛くるしい白黒。目の周りの黒。プリッとした尻尾。すべてが憧れでした。いつか東京に出たらパンダを見ようと思ったものです。
しかし、その夢が叶ったとき僕は打ちのめされました。中学校の修学旅行でパンダを東京にやってきたとき。集団行動で上野動物園を訪れ、僕は憧れのパンダと対面しました。長い人ごみの後ろでじっと待ち、ようやく見えてきたパンダの姿。それは一言で表現すれば「小汚いケツ」でした。動物園独特のやさぐれ感が漂う、薄暗いケージの片隅。ヤツはこちらにケツを向けてゴロンと寝転んでいました。動くでも転がるでもなく、埃にまみれた灰色のケツをただひたすらに見せていました。
僕は、パンダが笹を食べるところを見たかった。中国からやってきた珍獣が、よりにもよってそんな雑草みたいなものを食べる。しかも、笹しか食わない(と思っていた)。バリバリムシャムシャする白黒の姿を見たかったのです。結局僕は、同級生たちに押されるようにパンダのケージの前をあとにしました。パンダは僕をケツで見送りました。その後、僕が大学に進学し、リベンジを果たすまでには5年の歳月を要したのです…。
パンダはまぁ動物ですから、そんな日もあるでしょう。僕も百歩譲って諦めもします。でも人間なら話は別です。オリの前に客がいるなら、腹が減ってなくても笹を食べるべき。特に、子どもたちがたくさん見に来たなら昼飯直後でも笹を食べるべき。自分に何を期待されているかがわかったら、満腹でもやるのが人間です。歌手なら一番の大ヒット曲を毎回歌う。芸人なら流行語大賞をとった持ちギャグで笑いをゲッツする。それがエンターテインメントだと僕は思います。
ということで、サンフレッチェ広島が世界の舞台で見事に笹をバリバリ食べた模様を、6日に日本テレビが中継した「TOYOTAプレゼンツFIFAクラブワールドカップ開幕戦 サンフレッチェ広島VSオークランドシティ戦」からチェックしていきましょう。
◆日本では飽きられていても、世界はコレを待っていた!開幕戦の舞台となる横浜国際競技場は3割〜4割程度の入り。2階席は空洞で、メインスタンド・バックスタンドにも空席が目立ちます。25174人の観衆。少し寂しくはありますが、平日の夜ならこんなものでしょうか。2011年大会の開幕戦・柏レイソルVSオークランドシティ戦は18754人でしたから、それでもだいぶ増えています。
しかし、客入りこそ寂しいものの、この試合の模様は世界200を超える国と地域に配信されているとのこと。日本よりも、むしろ世界が見守っている一戦。サンフレッチェ広島には開催国の代表として、大会を盛り上げてくれよという大きな期待がかかります。
そして始まった試合。まず実況と解説は、まずゴールラインテクノロジーという新システムについて繰り返し解説を行ないます。チップを内蔵したボールを使用し、ボールがゴールラインを通過すると磁場の変化によってそれを感知。ゴールインした時点で審判の持つ時計にピピッと合図が送られるらしいのです。これさえあれば、もうライン上の微妙なボールで迷うことはなくなる夢の機械。そんなものがあるなら早速試してみたいと思うのが人情。サンフレッチェ広島イレブンも、その期待を感じてか、ガンガン微妙なシュートを撃ちこみ始めます。
↓この試合で使用されたのは「GoalRef」と呼ばれる新システム!http://youtu.be/Yn2kfwIffH4
システムは完璧じゃないか…!
でもあれやね…ゴールの内側ボール一個ぶんのところに汚れやすい幕でも張って、ボールが幕に当たって跡がついてたらゴールってことにすればアナログ的に解決できそうな気も…!
相撲なんかいまだに出たか出ないか「砂についた跡」で判定してるしな…!
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![](https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/b/4/b4554_627_71d46aa9cd0d3ab6214f2271b17b7f7d.jpg)
前半20分には右CKから高萩が右足アウトでゴールに向かうボールを蹴り、ポストに当てる惜しいシュート。前半23分にはミキッチのクロスに佐藤“タイトル総なめ”寿人が合わせ、ゴールポストの内側に当たるシュート!ライン上でバウンドして跳ね返る軌道には「早速ゴールレフの出番だ!」と期待感が高まりますが、ここはその前にオフサイドの判定。しかし、「新システムの実験に協力するぞ」という広島の意気込みは世界に伝わりました。
後半に入っても新システムへの挑戦は止まりません。後半6分には再び高萩がポスト直撃のミドルシュートを放ち、つづけざまに森崎浩二のヘッドがゴールラインを脅かします。本当に時計は動くのか、ピピッというのか、疑いの目で全世界が広島の攻撃を見守ります。
そんな中、立ち上がったのはゴール判定への恨みを抱く男・青山敏弘。青山は作陽高校時代の2002年、全国高校サッカー選手権大会・岡山県予選の決勝で、ミドルシュートで決勝Vゴールをズドンと決めたはずが、ゴール内にあるネットを張るためのポールに跳ね返って外に出たのを見て、主審がノーゴールとカンチガイするまさかの大誤審に泣いた経験の持ち主。結局全国に行けなかった青山は、世界でも屈指の「ゴール判定への恨み動画」の主人公となったのでした。
間違いのないゴール判定システムを作ってくれ、切に願っていた青山。迎えた後半21分。「まず第一に、内側にはポールのないゴールを使おう」「あれだけ説得しても応じない主審なら時計が鳴ってもダメじゃない?」「むしろ美味しいネタという気も…」という外野の声をかき消すように、青山の放った無回転のミドルシュートが新システムへと飛んで行きます!
↓青山が二度と悲劇を生まない新システムを求めてミドルシュートを突き刺した!でも、このシステムが岡山県のサッカー場に配備される日が来るとは思えない!
悲劇はきっと繰り返される!
↓ゴール後のパフォーマンスは一世を風靡した「釣り」!西川以外、全員参加かよwwww
もういっそ西川もくればいいのにwww
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![](https://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/9/e/9e4fe_627_01f07a25e0ec070e0ee874e6463f8258.jpg)
ゴールも素晴らしかったのですが、そのあともまた素晴らしかった。何とゴール後に、広島自慢のゴールパフォーマンス芸を披露してくれたのです。国内ではちょっと飽きられてしまい、だだスベり感が漂うようになった広島のゴールパフォーマンス芸ですが、今回は世界各地に「広島の試合を初めて見る」という視聴者がたくさんいる大舞台。初見のお客さんもいるだろう。アレが見たいだろう。いっちょやってやるか。まさに「満腹でも笹を食うパンダ」のように、見たかったアレをやってくれたのです。
↓しかも、夜の「NEWS ZERO」では反省の弁を洩らすなど、パフォーマンス芸のさらなる向上に意欲的!森脇:「試合前に全員で決めましたね」
森脇:「カメラの位置をね、試合前からカメラがどこにあるのかを気にしてはいたんですけど、あそこは(カメラが)なかったポジションだったんで、そっちに行かないでくれと思ったんですけど…」
森脇:「あっちに行っちゃったんで、ちょっと残念でしたね」
青山:「いやー、森脇にはあんま映ってほしくなかったんで」
青山:「次、気をつけます」
青山:「これで満足しないと思うんで、次も勝てるようにやっていきたいと思います」
槙野:「ご覧いただけましたか!」
槙野:「この素晴らしいパフォーマンス!」
槙野:「でも、やっぱり僕がいないと〜!」
…的なコメントが出てきそうで不安になる、微妙な出来だったなwww
次回は隙のないパフォーマンスを頼みますよ!
↓主犯・森脇は、もちろん次戦に向けて新パフォーマンスを検討中!後半21分、MF青山の先制弾後は広島お得意のゴールパフォーマンス。DF森脇が予告していた釣りバージョンだ。動画サイトで100万回以上再生された1番人気を世界に発信した。DF千葉や森脇が魚役となり青山が釣り上げた。最後は佐藤が「ハイ、チーズ!」とシャッターも押して“記念撮影”で締めた。森脇は「次は歌手の振り付けをもじったもの」と再予告した。
http://www.nikkansports.com/soccer/news/p-sc-tp0-20121207-1056556.html
世間:「おい、EXILEだろ!」
世間:「サイクロンダンスだろ!」
世間:「あれはカメラ位置を外すとマヌケだから気をつけろよ!」
結局試合は1-0で広島が勝利。「開催国代表として大会を盛り上げるためにある程度勝ち進む」「新システムの実験に協力する」「ゴールパフォーマンス芸」と、期待に応えまくった広島の奮闘は強く印象に残りました。しかし、まだこれで終わりではありません。Youtubeで「sanfrecce hiroshima」を検索すれば、ゴールパフォーマンスのほかに数々のトリックPK動画も出てきます。単に点を取るよりもハードルは上がりますが、何とか世界の舞台で自慢のトリックPKも決めてほしいもの。どうせパンダを見るなら、笹食ってるだけじゃなくタイヤで遊ぶところも見たいですからね…!
↓ということで今回の採点です!●GK:西川周作
採点不能(不参加)。
●DF:水本裕貴 5.5
水本は2010年当時京都サンガF.C.に所属しており、あの「釣りパフォーマンス」を見せつけられたメンバーのひとり。当時の練習に参加していない不利を抱えながら、DFラインから果敢に攻め上がってパフォーマンスに参加したのは見事。ただ、パフォーマンス終了間際、抱きかかえた千葉からひとりだけ先に手を放し「終わった終わった」という動きを見せたのは勿体ない。自分で判断せず、最後までパフォーマンスを遂行してほしい。
●DF:千葉和彦 5.5
初挑戦のポジションながら、動きは悪くなかった。千葉が魚を演じることができれば、森脇がフリーとなり、より高度なパフォーマンスへのアレンジも可能となる。ただ、今回の場合、すでに森脇がピチピチしているのに何故自分も行ってしまったのか。2匹かかったら小魚みたいじゃないか。ライン上のポジション被りは修正の必要アリ。
●DF:森脇良太 5.0
ブランクを隠せない動き。初披露の2010年はとれとれピチピチの魚がピッチを躍動していたが、今回は動きに迷いが見られた。カメラ位置を探していたこともあるだろうが、それ以上にスタミナ不足を感じる。「試合で使うぶんのスタミナを残そう」とか、余計なことは考えずにピチピチしてほしかった。
●MF:青山敏弘 5.0
バックスタンド寄りに位置どったことで、肝心の魚の表情をメインのカメラが捕らえられなくなるなど、ポジショニングに大きな課題を露呈。リールの巻きも小さく、釣り上げた魚の大きさを表現できていない。シュートを決めただけで終わってしまった印象。
●MF:森崎浩司 3.5
得点が決まった瞬間、何故か目の前の山岸に抱きついた。違う、そこじゃない。攻撃からパフォーマンスへの移行…攻パの切り替えの遅さは致命的な出遅れを生んだ。
●MF:石原直樹
採点不能(不参加)。
●MF:森崎和幸 2.0
大事な局面に顔を出さず、パフォ際の動きに精彩を欠いた。ただ味方の周囲をフラフラするばかりで、魚役の千葉を持とうともしない。あまつさえパフォーマンスの途中で青山と抱き合ったときには絶句した。サッカーだけしにきた印象。
●MF:ミキッチ 4.0
試合前のミーティングには参加したのだろうか?完全に釣りパフォーマンスのフォーメーションを忘れ、魚役でもないのに前に飛び出し、アタフタとステップバックする混乱を見せた。2010年当時は「釣り」に参加していなかったとは言え、試合には出ていたわけで、「エヘヘ忘れました」は通用しない。システムへの習熟が急務。
●MF:ファン・ソッコ
採点不能(不参加)。
●MF:高萩洋次郎 4.0
流れに乗れていなかった。ボンヤリと棒立ちから、森脇に駆け寄る間違い。そこから強引に味方を押しのけて千葉の頭を持つセルフィッシュな振る舞い。仲間との連携を大事にしてほしい。
●MF:清水航平
採点不能(不参加)。
●MF:山岸智 4.0
後半15分からの投入とスタミナ面で余裕があったにも関わらず、パフォーマンスへの参加が遅れた。ピッチの反対側にいたという意味で不利は否めないが、どうせ遅れるならセンターサークルに入って、万一の試合再開に備えるなどの気配りがほしかった。
●FW:佐藤寿人 6.0
オフザパフォーマンスの動きが秀逸。当初は得点した青山に抱きつこうとナチュラルな動きを見せていたが、釣りが始まるや「その流れか」と素早く動き直し。一旦は森脇を抱きかかえようとするが、「森脇じゃない」と気づくや素早く動き直し。今度は千葉を抱きかかえようとするが「カメラがおらんやん」と気づくと素早く動き直し。混乱する味方を尻目に、タイミングよい飛び出しでカメラマン役を演じた。腕のキャプテンマークが「報道」の腕章のようで決まっていた。さすが、タイトル総なめ寿人。
うーん、こうして見ると
佐藤寿人という選手の存在は別格だな!
サッカーでもサッカー以外でも欠くことができない大黒柱だ!
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次戦のサイクロンダンスはしっかりカメラを見つけてからやりましょう!
スポーツ見るもの語る者〜フモフモコラム
フモフモ編集長
さまざまなジャンルのスポーツを"お茶の間"目線で語る人気のコラム