『黄金を抱いて翔べ』
過激派や犯罪者相手に調達屋をやってきた幸田弘之は、20数年ぶりに故郷・大阪に帰ってきた。そこで、学生時代からの友人、北川浩二に大手銀行から240億円相当の金塊を強奪する計画を持ちかけられる。そして、早速、北川は幸田に仲間の野田を紹介する。(
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我々の結束は、ただ金塊によって生まれしものなり
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まず最初に断っておくが、本作は決してイケメン映画などではない。主人公の実行犯・幸田を演じる妻夫木聡は、20数年ぶりに戻ってきた故郷・大阪で常に暗い陰を漂わせ、金塊を手に入れた後の夢や希望といった未来を全く感じさせない。「札束は信用できないが、金塊は永遠だ。だからやるんだ――」と幸田を巻き込んだリーダーの北川(浅野忠信)は、妻子の目もはばからずに計画を押し進め、某CMと同じく妻夫木を「のび太」と呼ぶ“ジャイアン”的存在だ。
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他に大金を必要としているように見えるのは、多額の借金を抱えるシステムエンジニアの野田(桐谷健太)ぐらいだが、欲望や恐怖など、ある意味もっとも人間らしい感情を持ち合わせた人物とも言える。幸田の他、裏切り者として国を追われる爆弾工作員のモモ(チャンミン/東方神起)や、ギャンブル依存症で刹那的な行動に走る北川の弟・春樹(溝端淳平)、老い先短い相談役のジイちゃん(西田敏行)らは、運試しのごとく自らの人生を賭けの対象にしているようにすら見える。
もうひとりの主人公、“魔都”大阪
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完璧に見えたはずの金塊強奪計画だったが、物語が進むにつれ徐々に綻びが見え始め、6人に様々な問題が重くのしかかっていく。大阪の裏社会に棲むキング(青木崇高)、過激派の幹部・山岸(田口トモロヲ)、モモを追う謎の人物・末永(鶴見辰吾)など嗅覚に優れた捕食者たちの出現によって、6人は否応無しに自らの消さない過去と向き合い、その清算を求められるのだった。
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本作が冒頭から結末まで、言いようの無い鬱蒼とした空気に包まれているのは、もうひとりの主人公である“魔都”大阪の存在が大きい。男たちが根城にする吹田市で、幸田のアジトから見える阪急電車や、川を隔てた先に見えるモモのアパート、とても240億円の金塊が眠っているとは思えない古びた銀行など、舞台となる大阪の街はどこも庶民的で生活感に溢れている。しかし、その喧噪から一歩離れた路地裏では、死と背中合わせの暗闇が潜んでおり、東京とはまた異なる匂い立つ“魔都”大阪が切り取られている。
一番熱い、カロリー消費ポイントはココ!
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言うまでもないが、本作の見せ場はクライマックスとなる金塊強奪の実行にある。映画の世界でよく見る金庫破りとは、犯人が厳重な警備体制の裏をかいて、最新鋭の電子機器などでスマートに盗み出すのが一般的だろう。しかし本作では、90キロのダイナマイトを武器に、目の前に立ちはだかる扉を力任せに一つ一つこじ開けていき、完璧な計画どころかツメが甘く、無計画にもほどがあるのだ。
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金塊強奪の中で、やがて明かされる一つの真実。そして、6人がそれぞれに迎える結末とは…? 井筒監督が描きたかった“孤高を生き続ける”男たちの冒険と快哉を最後まで目を逸らさずに見届けて欲しい。「『人生を賭ける男ども』の話なので、そこに負けまいと挑みかかるような、エモーショナルな女性の歌声が一番望ましいと思った」という井筒監督のオファーにより実現した、エンドロールで流れる安室奈美恵の主題歌「Damage」を、あなたはどんな想いで聴くのだろうか。
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『黄金を抱いて翔べ』公式サイト・
「MOVIE ENTER 秋映画2012」特集【MOVIE ENTER 特別連載】
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