今季から加入し、後期優勝の大阪ブレイビーハニーズが、前期優勝の京都アストドリームに6−5でサヨナラ逆転勝ちし、初年度で年間総合優勝に輝いた。
京都 000 101 3 =5
大阪 001 011 3x=6
勝)小西(美)
負)大倉
シーソーゲームで勝負の行方はまったくわからなかったが、試合の途中から、あふれ出る感情を堪えていた。最後はあっけない幕切れだったが、試合が終わると堪えていた涙が、止めどなく流れ落ちた。大阪のエースであり、チームを牽引してきた小西美加は「しんどかった。長い一年だった…」と涙ながらに話した。
今年最後の大舞台だが、序盤から調子は上がらなかった。ストレートは浮き気味で、度々フルカウントにしてしまった。「スライダー主体でかわすピッチングを心がけた」と小西(美)は言う。投げ争う京都の宮原の方が立ち上がりは良かった。多少、荒れてはいたが球に力があった。しかし、先に点を失ったのは宮原だった。
3回裏に先制点をもらった小西(美)だったが、4回表、すぐに同点にされてしまう。フォアボールから連打を浴びた。得点のあとの失点、しかも四球から。川端、三浦の主力を欠く京都に対し、先制し勢いづくところでブレーキをかけてしまう。1試合での決定戦に際しチームのエースとして、避けねばならないことだった。
5回裏に再び大阪が1点を追加するが、6回表、京都はヒットで出た走者をバントで3塁まで進め、スクイズで再び追いついた。小西はスクイズを含め二度バント処理を行ったが、二度ともフィルダースチョイス。試合の流れは京都へ傾きかけていた。
しかし6回裏、小西(美)のバッターボックス。「前の打席はアウトにはなったが、いいバッティングだった。内角に来たら、思い切り引っ張ろうと思っていた」いまだ手に感触が残っていた小西(美)のインサイドに、力のあるストレートが来た。スイングされたバットはボールを捉え、レフトラッキーゾーンへと運んだ。彼女は何度も顔を覆い、ゆっくりとダイヤモンドを一周した。
これで試合は決まったかと思われたが、まだ終わらない。優勝を意識したのか最終7回表、小西(美)は京都の先頭打者に死球を与え3連打を浴びる。味方のエラーも絡み土壇場で3点を失った。
5−3となったその裏、京都の宮原も先頭打者をストレートで歩かせ交替。マウンドに上がった大倉を大阪が攻め立てる。フォアボール、ヒットと続き、代打のキャプテン碇が同点タイムリー。そして2死満塁、再び小西(美)に打席がまわってきた。
「仲間やスタンドの声援が聞こえて、緊張はあったけどリラックスできた」1ボールから2球連続空振りをした彼女の顔には、まだ笑みがあった。2ボール2ストライクとなった6球目。大倉から放たれたボールは、無情にも小西(美)の背中に当たった。
「一瞬、何が起こったか、わからなかった」チームメイトに促された彼女は、一塁へ向かいベースを踏み、大阪ブレイビーハニーズのリーグチャンピオンが決まった。
小西(美)にとっては3年連続のリーグ制覇(昨年までは兵庫スイングスマイリーズ所属)。しかし1、2年目とは優勝の味はまったく違うと話す。
大阪は今季から加入した新球団。ルーキーを中心に構成されたチームに「顔」として兵庫から移籍してきた。他の移籍選手にレギュラークラスは少なく、首脳陣も「ルーキー」であり、彼女にかかる負担は大きかった。
前期個人成績は12試合5勝5敗。昨年の成績(16勝5敗3S)を考えると物足りない数字だった。「京都も兵庫もレベルアップしている。完璧に投げても勝てないことが多かった」くわえてチームは6勝13敗で最下位。「私も、キャプテンの碇も監督も悩んでばかりいた」
さらに、女子野球ワールドカップ日本代表に選ばれ、今夏にはチームから離脱した。「チームが弱いのに、私だけ行くことになって…」彼女は悩み、仲間ともめたりもした。チームの牽引役として体を張って勝ちへの執念、挑戦の姿勢を見せていたが、身も心も限界だった時期もあったと言う。
優勝は、チームメイトのひとり一人が成長した結果だと話す小西(美)。ミラクルで掴んだ3度目のリーグチャンピオンに、信じられないのか、何度もスコアボードを振り返り、見つめていた。
(取材・文=小崎仁久)