日程的にもフランクフルトが有利だった。シュツットガルトはミッドウィークにホームでヨーロッパリーグを戦っている。負傷者も多く、カカウ、岡崎慎司ら前線の選手を欠く。右SBのホーグラントも離脱中で、彼に代わる形でポジションに定着した
酒井高徳もヨーロッパリーグでは右足首を負傷。フランクフルト戦後も痛みを訴えた。クラブ公式サイトによれば右足首靭帯損傷でMRIの検査を受けるそうだ。「シュートの際に踏み込むのが怖い」と漏らす岡崎がベンチに名を連ね、試合に出なければならない台所事情だった。
シュツットガルトはインターナショナルマッチデー直前のレーバークーゼン戦に引き分けると、監督解任論も浮上した。雰囲気は悪く苦しい状態が続いた。しかしその後、ハンブルガーに1−0で勝利し、26日のヨーロッパリーグのコペンハーゲン戦はスコアレスドローに終わった。
試合のカギは、バイエルンの27点に次ぐ20点をあげているフランクフルトの得点力を抑えることにあった。酒井が考えたのはいかに乾を抑えるかだった。
「みんながどう思っているかは分からないけど、僕自身としてはチームを警戒するというよりは乾君のところをしっかり抑えればと思った。そうすれば(フランクフルトの)攻撃がちょっと遅れたり、ダイナミックさがなくなるんじゃないかな、と。彼にタイトにつこうと思ってやってたので、そこは前半はうまくできた」
4−2−3−1の左MFでプレイする乾はそこからドリブルで中に仕掛けるだけでなく、パスやミドルレンジのシュートも持っている。1トップのオーシャンは身長185センチ、トップ下でプレイするチームのエース、マイヤーも196センチと、中央には大柄な選手が多く、前線のバランスは抜群だ。そこで、まず酒井は乾にボールを持たせないことを意識したのだ。
「乾君にボールが入るところだけを意識した。ボールに触れないと上手くリズムに乗れないタイプなのかな、と。マークの受け渡しもスムーズだったと思う」
乾封じの労力は功を奏した。ボールになかなか触れない乾はプレイにあまり関われないまま前半のみでの交代となった。乾は「今日は自分が悪かった。うまく(コースを)切られた」と、言葉少なに語るしかなかった。
シュツットガルトの7分という早い時間帯の先制点は、フランクフルトを精神的にも劣勢にたたせた。左MFのハルニクからのサイドチェンジから攻撃が始まり、右サイドで酒井がクロスを入れる。これは相手DFに当たってこぼれるが、トラオレが再びボールをあげてハルニクがヘディング、ファーサイドでゲントナーが右足を振り抜いた。一気にゴールまで陥れる、シュツットガルトが狙いとする形での得点だった。
後半に1点を返されるが、最後にシュツットガルトが再び引き離した。結果は2−1。ラスト10分に出場した岡崎もサイドではなく2トップの一角として起用され、オフサイドにはなったもののゴール前でヘディングシュートを放ち、ゴールを予感させるプレイを見せた。
この1週間で2勝1分。勝てなかった時期に比べると、精神的にも戦い方にも、チームの一体感を感じるのだと酒井は言う。
「1人で何かをするというよりも、最近はチームとしてやるべきことをみんなができている。前半が良い例で、みんなが人にいくことができるのが続いていた。多少は疲れていると思うけど、みんなで一貫してやらなきゃいけないことなので、それができているかなとは思います」
これには岡崎も同調する。
「みんなも(負けていても)やっぱり元気だしていかなきゃしょうがないというところじゃないですかね。やっぱり僕は声を出し、味方を鼓舞することで自分の気持ちが変わることがあるので。サッカーって11人でやるものだというのは変わらないので」
シーズン序盤は苦しんだシュツットガルトが、このまま昨季後半戦のような躍進を遂げることはできるか。少なくとも最悪の時期は脱したと感じさせる一勝だった。
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