会社員には「情報漏洩のリスク管理」が欠かせない
広告代理店の営業ということですから、おそらくクライアントがある仕事と思われます。フリーランサーの場合、仮に情報が漏えいしても個人の責任になりますが、会社員の場合はそれではすみません。取引の打ち切りや、ひいては会社の信用低下という悪影響も考えられます。顧客データや社内システムのパスワードなどを含む機密情報の保護には、細心の注意を払う必要があることは言うまでもありません。
情報セキュリティに関する社内ルールを作っている会社は多いと思いますが、IT機器の発達によって仕事を取り巻く環境は急速に変化しています。現状に合わせたルールの見直しや、社員教育が必要な会社も少なくないでしょう。ルールを破って問題を起こした時には、社員の処分も必要です。ルール徹底と万一の場合に備え、情報管理についての誓約書を交わし、就業規則にも情報管理の取り扱いと懲戒について定めておいた方がよいと思います。
臨床心理士・尾崎健一の視点
ノマドワークは際限がない。社員の健康管理の視点も
震災後に在宅勤務が注目されるなど、「会社に行かなくても仕事はできる」と言われることが増えました。確かに職種によっては、通勤しなくてもできる仕事と、それを支える環境が増えてきたと思います。管理の仕方は難しくなる面もありますが、時間を有効に使えたり、発想が広がったりする一定の効果は認めてもいいのではないでしょうか。
ただ、これが行き過ぎると「出張の報告書は、帰りの新幹線の中で作れるよな?」とか、金曜の午後に「月曜の朝までにやっておいて!」と言い出す上司や顧客がでないとも限りません。仕事の負荷が大きくなりますし、プライベートとの境目がなくなるとストレスを引きずりやすくなります。まずは社員の「ノマド化」に対する実態調査を行い、その中でセキュリティ面の問題に加え、心身への負担についても聞き取りを行った方がいいかもしれません。フリーランスは最終的には自分の権限で「イヤな仕事はイヤ」と言えますが、会社の信用を背負う会社員は、そういうわけにはいきません。会社員のノマド化が「マズイところ取り」にならないように、管理職や人事が配慮してあげるべきです。
(本コラムについて)
臨床心理士の尾崎健一と、社会保険労務士の野崎大輔が、企業の人事部門の方々からよく受ける相談内容について、専門的見地を踏まえて回答を検討します。なお、毎回の相談事例は、特定の相談そのままの内容ではありませんので、ご了承ください。