リアリティある政治ドラマを製作することに長けたハリウッドに対し、「アメリカの政界よりも、日本の方が面白いドラマが毎日生まれている」と力説する世耕氏が明かす、日本の政界の恐ろしさとは?「大統領選挙戦にまつわる、ドロドロした部分を上手く書いている作品」と本作を評する世耕氏。
日本の選挙戦は、米国の大統領選とはレベルも質も異なるが「東西問わず人間のドロドロが出てしまうのが選挙戦というもの」と人間の姿は同じと打ち明ける。
劇中では、ダマしダマされのシビアな政界の一面が浮かび上がる。
内閣総理大臣補佐官を務めていた時期には、怖い罠に何度もはまったそうで「言っていないことが、さも自分が発言したかのように相手に伝わってしまうのは補佐官時代には日常茶飯事。
ちゃんとウォッチしてコントロールしていかないと、大変なことになってしまう。
足を引っ張るためにわざとデマを流す人たちがいますからね」と攻防の日々を回想する。
聞いているだけで胃が痛くなりそうな話だが、柔和な表情と大らかな人柄の世耕氏は、お世辞にもタフそうには見えない。
パワーの源はどこにあるのだろうか?「自分の選挙区の有権者が支持してくれているという自信ですね。
それがあれば、自分の行動に迷いは一切なくなります。
考えの違う政治家の偉い方に潰すと脅されても、有権者の支持力を保持していれば、何も怖くはありません」と力を込める。
そのために講演や地元での活動など余念がないが「サラリーマン時代に比べて物理的に時間の自由はないけれど、精神的には自由ですよ」と笑顔を見せる。
地味な印象のある日本の政治。
だが世耕氏の口から語られるその裏側は、実にスリリングだ。
しかしアメリカで大統領を題材にする映画やドラマがある一方で、日本では本格的に政治を捉えた作品は少ない。
海外ドラマ「ザ・ホワイトハウス」が大好きという世耕氏は「それはやはり日本のシナリオ力のなさでしょうね。
例えば本作(『スーパー・チューズデー〜正義を売った日〜』)や『ザ・ホワイトハウス』は、アメリカの政治家も納得するようなリアリティを持って描かれている」と指摘。
政治がらみの作品は一通りチェックするそうで「映画でもドラマでも、日本で作られる政治を題材にした作品は、僕ら政治家からしてみれば『何これ?』の世界。
制作者には、おふざけやタレントの人気に逃げるのではなく、腰をすえて政界に向き合ってほしい」と好きだからこそ辛らつにもなる。
日本の政治を扱った興味深い作品がないのも、若者の政治離れの一因ではないかと思われるが「僕は1年間総理官邸で暮らしましたが、中ではドロドロした権力闘争が毎日のように行なわれていました。
これはアメリカの政治世界よりも複雑だし、面白いはず」と、日本の政治がネタの宝庫であることを保証しながら、「腕の良い脚本家の方がいたら、ぜひ書いていただきたいですね」と期待をこめた。
映画『スーパー・チューズデー〜正義を売った日〜』は全国公開中