さてイタリア版では作品タイトルにも特徴がある。その名は『Holly e Benji(オーリーとベンジー)』。「オーリー」が翼くんであることは前記のとおりだが、一緒に並ぶ「Benji(ベンジー)」とはいったい誰なのだろうか? Benji(ベンジー)とはBenjamin(ベンジャミン)の愛称のようなのだが、これだけでは予想がまったくつかない。作品ファンなら翼くんの永遠のライバル・日向小次郎を連想するかもしれない。あるいはパートナーの岬太郎か……? なんと「ベンジャミン」の正体は、アニメ版第1話でものすごく存在感のあるライバルっぷりを披露した天才キーパー・若林源三なのである! 確かに若林は序盤では注目選手だ。でも『トムとジェリー』のように付かず離れず翼くんといるわけではないので、回が進むごとに不思議な違和感を覚えた視聴者がいたのではいか?……と余計な心配をしてしまう。
その他にも岬太郎は「トム」、日向小次郎は「マーク」、石崎了は「ブルース」など、少々アメリカナイズされた名前で呼ばれていることが多いようだ(国によって微妙に名前が入れ替わっていることも)。しかも岬はブラジルでは「カルロス」と呼ばれていて、たいていどの国でも教科書に真っ先に出てきそうな名前が使われているのが面白い。
2011年に日本のなでしこが大活躍したドイツでは、『Die tollen Fusball-Stars(偉大なサッカースターたち)』という粋なタイトルで放送されていた。各キャラクターにはそのまま日本名を使っているのが、他の国と異なるところ。ドイツ人の几帳面さが垣間見える。ただ、キャラクターのローマ字名前をドイツ語読みした結果、翼は「ツバザ」、若林にいたっては「ヴァカバヤシ」に聞こえてしまうのが、日本人にとっては残念なところか。
文●サンプラント