前回のインディアンス戦では、速球の制球に課題を残したダル。
一説によると、次回は走者なしでの場面では、ワインドアップからの投球となるようです。
いわばメジャー式の投球で、どんなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみです。
実は、私にはダルの登板には、もうひとつ注目している点があります。
それは、試合後の記者会見でのコメントです。
日本ではあまり報道されていないようですが、彼の独自の視点からのややシニカルなコメントは、ひとつには文化の違い、もうひとつには通訳を介していることにより、やや本意が正確に伝わらず、ちょっとした議論を呼ぶことが続いているからです。
具体的には・・・
まずは、初登板のパドレス戦。
2回、先頭のウィル・ベナブルに、フェンス直撃の二塁打を献上しましたが、「そんなにしっかり捉えられた感じはしなかったが、意外に飛んだ。やっぱりアリゾナの空気は乾燥しているんですね」という主旨の発言をしました。
あくまで、「空気の乾燥度」が、伝えたかったポイントでしょうが、これが通訳を介すると、「ベナブルはしっかりと捉えていない。それが、あそこまで飛んだのは乾燥した空気のおかげ」と、コメントの対象がベナブルという打者に置き換わって米国メディアに伝わったのです。
このことには、当のベナブルも不快感を表し、「対戦相手へのリスペクトに欠けた発言」として、ちょっぴり物議を醸しました。
次は先日のインディアンス戦の試合後のこと。
米国メディアに、日米の野球の違いについて聞かれると、「アメリカの選手はあまり練習をしないと聞いていたが、案外と練習することに驚いている」と発言したと、一部の米国メディアは報道しています。
そしてそのメディアは、「持って生まれた素質だけで、メジャーまで登り詰めた選手などだれもいない」と、ダルの発言を言葉を選びながらも戒めていました。
しかし、これとて誤解でしょう。
想像するにダルは、「予想していたより、“全体練習"が多い」と言いたかったのではないでしょうか。
彼ほどの選手が、影の努力なしにスターには成り得ないことは、誰よりも良く判っているはずだからです。
やはり、通訳を介して言いたいことをしっかり伝えるのは難しいことなのです。
次回の登板においては、どんな微妙なニュアンスの発言をするか、またそれがどこまで正確にアチラのメディアに伝わるか、楽しみであり、ちょっぴり心配でもあります。
約四半期世紀前のこと、日本人としては初のフルタイムのF1パイロットとなった中嶋悟は、インタビューにおいては「なんかね、アレじゃないのよ」という難解?な発言をしていたのを思い出しましたが、21世紀のメジャーリーガーには、少々違う対応を期待したいものです。
そう言えば・・・
野茂英雄が、ドジャースでデビューした直後、試合後にアメリカ人記者から、やはり今回のダルビッシュ同様に、日米の野球の違いについて尋ねられたことがありました。
その日の野茂は珍しく饒舌で、「違いこそあれ、同じ野球なんだという意識で取り組むことが重要なんだ」という意味のことを、かなりの時間と言葉を費やしてアツく語りました。
すると、通訳氏はその長いコメントを訳するに、単に「Nothing」(特にナシ)とあっさり切り捨てたのです。
あっけに取られたアメリカ人メディアが、ザワザワし出したのは言うまでもありません。
「オイオイ、もっと何かしゃべっていたろう?」
古い話ですが、ちょっと思い出しました。
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