中編
後編は「真
かまいたちの夜」開発プロデューサー、中嶋康二郎さんとシナリオディレクター、伊東幸一郎さんを交えて話していきます。
最大100人で遊べる推理ゲーム
――今回驚いたのがオンライン機能なんですよ。みんなで謎を解いていく「みんなでかまいたち」。
中嶋 せっかくプラットフォームを変えたので、なにか新しいことをやってみたかったんですよ。オンライン上で「
かまいたちの夜」的というか、ミステリ的なことをテキストを使ってやったといっていいのかもしれない。「
かまいたちの夜」らしい感じになっているので、とってつけたと思われない出来になっていると思います。PS Vita版だけの機能ですが「ふたりでかまいたち」という機能もあります。
我孫子 このオンライン機能は、本編をプレイしなくてもいきなりできるわけですか?
伊東 できます。
――最大100人まで遊べるって聞いて、「えええっ!?」って。
中嶋 最初は8人くらいでやろうと思っていたんですよ。でも途中で投げちゃう人がいるかもしれない。ふたり抜けて6人になってしまったらもうゲームとして成立しなくなってしまうんですよ。でも、100人いたら、同じ割合で4分の1いなくなったとしても、まだ75人残っている。
我孫子 でも100人って最大数でしょ? 理想的な人数ってどのくらいですか?
中嶋 多ければ多いほどという感じでしょうかね。
――100人集まってからスタートということになるのでしょうか?
中嶋 前の日に登録しておいて、次の日に始まります。1ルームに100人集まっていれば100人でスタートですし、集まっていなくても10人以上いれば集まった人数でスタートとなります。基本的には1日1回アクセスするゲームですね。
我孫子 あ、そうなんや。1日1回見ればいいってのは僕の理想なんですよ。そういうゲームがやりたかった。
伊東 「
かまいたちの夜」でオンラインをやるときになにが必要かというと、絶対にログは必要だと思ったんです。探偵小説のように、自分のやったことがログとして残っていく。これがないとふつうのオンラインゲームになってしまう。
麻野 ログとして残った行動が物語として読める?
伊東 そうです。ゲームの部分でストーリーが生成されていく。これが今回の試みですね。
邪魔になるので、ぽんぽん切る
――我孫子さんはシナリオ監修と執筆で参加されている。
我孫子 はい。シナリオ1本書きました。
――麻野さんがサイドストーリーの執筆と編集作業。
麻野 まあ演出ですよね。
――サウンドノベルの演出ってどういうものなんですか?
麻野 まず文章があって、それにどんなタイミングで音と文字を出したら効果的なのかを考えるんです。紙芝居ってオッサンがしゃべりながら自分のタイミングで紙を抜いていくじゃないですか。
――あー!
麻野 作家さんが書いた文章をゲーム用に書きかえたりもするんですよ。削ったほうがテンポがよくなったりするからね。
中嶋 今回キャラクターに声が付いているので、ニュアンスが増えていることもあるでしょう。以前までは「大丈夫」ということばは、それを補う文章が必要だった。でも心配そうに「大丈夫」と言えばよくなった。
麻野 そう。まず、台詞が長すぎると読まないからね。脇役が文字ウインドウを5、6枚も使ってどうでもいい話をしてきたら、「お前いつ話をやめんねん」って思うでしょ。
――以前エキレビ!でとみさわ昭仁さん、米光一成さんと3人で「ゲームシナリオ座談会」をやってもらったときにも言っていましたね。
麻野 そうだっけ?
――そうですよ!「ドラクエ」や「トルネコ」の話をしたじゃないですか。
麻野 ああ、そやった。そうそう「ドラクエ」の文章が突出して面白いのは、たいてい文字ウインドウ1枚、長くて3枚で話が終わるんだよね。そのなかに意味があったり、面白い台詞を入れる。堀井雄二さんはちゃんとそのへんを考えている。
――作家さんは?
麻野 やっぱり素晴らしい文章を書くんだけど、ゲームにしたときにくどすぎるのよ。「だが」「あの」「その」ってあっても、文章なら読むほうがテンポを調節できるからいいんだけど、ゲームの場合って読み飛ばしは基本できないでしょ? そうすると邪魔になるので、ぽんぽん切ってしまう。長い文章の場合は、途中の台詞をほかのキャラクターに言わせることで読みやすくするとか。
伊東 すごい気をつかっていますよね
――我孫子さんはどう思いました?
我孫子 「いらないから切りますよ」と言われたときは「別にいいですよ」と。シナリオにも「ここで音が鳴った」とか書いていたところはぜんぶ切られてましたね。その代わりSEが入るので。
まったく違う、へんなものになってしまう面白さが
――「真
かまいたちの夜」では声優を起用して、キャラクターがしゃべるんですよね。
麻野 そう、サウンドの一環として。
我孫子 サウンド大事だよね。文字だからこそ伝わる情報はある。でも、小説書いていると「ここに音欲しいな」と思うこともあるんですよ。
麻野 ええっ! そうなん?
我孫子 気づかないけど、音楽の力ってすごい。泣かせる場面や緊迫する場面でのちょっとしたBGMって、すごい効果を盛り上げるじゃないですか。それがあるのとないのでは大きい。
麻野 「
かまいたちの夜」のときは我孫子さんの1対1でやっていたけど、いま振り返ると文章ほとんどいじってないよね。すごい簡潔だった。我孫子さんはサウンドノベル向きだったのかも。
――フラットに書こうって気持ちはありました?
我孫子 もともとあっさりしているんですけど、当時は一画面に表記される文字数が少なかったんですよ。横19文字×7。これで1ページ。びっちり使うと読みづらいのでちょっとおさえてましたね。
――そういうレイアウトはあらかじめ作家さんに伝えられているんですか?
麻野 いや、自由に書いてもらってます。あとで手をいれればいいやって。でも「こういうページになりますよ」と伝えておくべきだったのかな。それで見せ方変わってくると思う
――シナリオを頼むときってどういうことを伝えているんですか?
我孫子 だいたいみなさん「
かまいたちの夜」はプレイしてくれていますから、ある程度はわかってくれていると思います。今回だとまずメインシナリオを先にあげてもらって、それを読んで、分岐のシナリオを書いてくださいと言っていますね。
――監修ってどういうことをしているんですか?
我孫子 推理の面で説明不足になる部分があれば、指摘します。みなさんプロの作家なので作法は心得てるから、大きく手を入れることはあまりない。麻野さんや伊東さんが手直しているところはあると思いますけど。
伊東 「簡単すぎないか?」とか「もっとヒントを入れてください」とか、そういうやり取りはけっこうしましたね。
――文体を揃えたりとかは?
我孫子 それをするとつまらなくなると思います。わざわざいろいろな作家にやってもらっているので、その個性がないと面白くない。ただあまりに癖が強すぎると、メインシナリオとサブシナリオで登場人物のキャラクターが違いすぎるということにもなるし、そこらへんは微妙なところですね。まったく違う、へんなものになってしまう面白さがありますから。
――作家さんの人選は我孫子さんが?
我孫子 黒田研二さん経由のほうが多いかもしれない。ツイッターがあるから声をかけやすかったんだと思います。
マニアックなキャラクターも登場
――予約特典の「
かまいたちの夜 プレミアムファンディスク」はすごい気になっています。中村光一さんと我孫子さんと麻野さんが「
かまいたちの夜」秘話を語るという。
我孫子 伊集院光さんにひかれている人もいるかもね。
麻野 伊集院光がなにするの?
我孫子 伊集院さんが「真
かまいたちの夜」をプレイする動画を特典で一緒に入れんねんて。
麻野 へえー。初めてきいた(笑)。
――麻野さん、資料よんでください。
麻野 それなに?
――なにって、さっき配られてましたよ。机の上に置いてあったじゃないですか。
麻野 読んでないからな。
――読んでください!(笑)。当時の話が聞きたいというファンが多いと聞きました。「真
かまいたちの夜」のなかにシリーズのファンがニヤっとするポイントとかあります?
麻野 俺が担当したシナリオに、「
かまいたちの夜」に出てきたマニアックなキャラクターをひとり出しています。
――おお、誰ですか?
麻野 内緒。話しちゃいけないといわれているから。けど、ちょいちょい「
かまいたちの夜」ネタを盛り込んでます。
伊東 麻野さんと我孫子さんも出ます。
――え、出てるんですか? 登場人物として?
麻野 出てきて、なんかしゃべります。
我孫子 そりゃしゃべるやろ。
麻野 ボイスはないけどね。ぜひ探してみてください。
(加藤レイズナ)
本日12/21(水)麻野一哉さんと「真
かまいたちの夜」制作スタッフ中嶋康二郎さん、伊東幸一郎さん登場の「夜のゲーム大学7〜裏側SP!〜」を阿佐ヶ谷ロフトAにて開催! チケット、お問い合わせなどの詳細はコチラ。たぶん、当日券もでます!