和田豊監督、有田修三ヘッドコーチ、関川浩一外野守備走塁など心機一転で臨む2012年シーズン。だが、監督やコーチを変えただけで、チームの弱体化は解決するのだろうか。在阪テレビ局の関係者がこう嘆く。
「暗黒の1990年代を経て、野村監督が種をまいて下地をつくり、星野監督が大幅な“血の入れ替え”を断行して優勝を果たしたのが2003年。結局、その後の阪神はあの頃の遺産を食いつぶしているだけなんですよ」
ではなぜ、2003年以降にチーム力が成長しなかったのか。パ・リーグ某球団のスカウトが、理由をこう分析する。
「ドラフトも外国人も、阪神は思い切った獲り方をしない。保守的な体質が浸透している。だから、いい選手も育ってこないんだよ」
ドラフトでいえば、ここ10年の1位入団選手(希望枠、自由枠など含む)のうち、02年の安藤、04年の鳥谷、05年の能見、06年の岩田、今年の榎田あたりはきっちり戦力になった。ただ2位以下を見てみると、主力級に育ったといえるのは03年5巡目の久保田と、同年7巡目の林威助(リン・ウェイツ)くらい。つまり、1位以外のドラフト戦略は、10年間ずっと失敗続きだったと言わざるを得ないのだ。
「今、期待されている野手といえば大和(やまと)、俊介、柴田、上本(うえもと)……。俊足好打だが悪くいえば“小物”ばかりで、大和以外は大学卒。結局、高校卒の粗削(あらけず)りなスラッガータイプを獲って育てる自信が球団幹部にないんだよ。だから自然と大学卒で、そこそこやりそうな無難なタイプばかり獲るんだ」(パ某球団スカウト)
また、外国人選手の獲得も決してうまくない。たまたまマートンが大当たりし、ブラゼルやシーツ、アリアスなど“他球団経験者”が活躍しているためそんな印象はないかもしれないが、野手でマートン以前の“新規の当たり”は99年まで遡(さかのぼ)ってもゼロ。投手でも新規で本当に助っ人といえる活躍をしたのは、ここ10年でもウィリアムスとムーアくらい。あとはせいぜいボチボチの成績で2、3年で退団というパターンが定番だ。
「実は08年オフ、阪神はホセ・バティスタを獲れたはずなんですよ。あの年、阪神は野手の候補者を最終的に3人に絞った。その中にバティスタがいたんです」
そう語るのはメジャーリーグ関係者。バティスタといえば、今季は打率3割2厘、43本塁打を残し、2年連続本塁打王に輝いたブルージェイズの主砲だ。当時の経緯を前出の在阪テレビ局関係者が明かす。
「確かに、バティスタの名前が浮上していた時期がありました。しかし、球団は『素行に問題がある』という理由でリストから外したと記憶しています」
しかし、前出のメジャー関係者はこう否定する。
「素行が悪いなんて、噂すら聞いたことがない(苦笑)。阪神は特定の代理人から選手を獲る傾向が強く、ほかの代理人からの売り込みがあっても、ハズレを怖がって獲ろうとしないんです」
代わりに獲ったのが、結果的に出場わずか15試合、打率1割台で本塁打ゼロに終わったメンチだったとは笑えない。
若手育成では濱中や桜井を育てられなかった“大砲トラウマ”。外国人獲得ではハズレを怖がる及び腰。“猛虎”のイメージとは程遠い、この弱気を球団が払拭しない限り、阪神の再建は遠いかもしれない。
(写真/益田佑一)
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