◎“女性のヘアカット動画”を販売
男性が運営しているのは、女性の髪をこよなく愛する人々が集う「芳飛剪髪網」(http://www.fhaircut.com/)。ここは、女性のヘアカットの一部始終を動画に収め、ダウンロード販売をしているサイトだ。
モデルの女性は10代後半〜20代半ばが中心で、長身で容姿端麗な煌びやかな女性から、中国の街角でごく普通に見かけるような一般的な女性まで実にさまざま。共通しているのは、彼女たちの美しい長髪がばっさりと切られ、カット前の姿からは想像できないほどの変身を遂げることだ。中にはスキンヘッドや坊主頭、刈り上げといった、女性には少々過激な髪型も含まれる。
四川省出身の潘長平さん(27歳)が「芳飛剪髪網」をオープンしたのは2008年10月のこと。ネットで同様のサービスを提供している日本語サイトを発見したことがきっかけだった。潘さんはそれまで建築現場で働いたり、スーパーの店員をしていたりと職を転々としていたが、そのどれもが収入的には満足な結果を得られず、将来への不安が募るばかり。そうした中、「人とは違うことをやらなければ」と思い、いつの頃からか「芳飛剪髪網」のオープンを真剣に志すようになっていたそうだ。
とは言え、こうしたサイトを運営するためには、さまざまな準備が必要なのも事実。女性の髪を切り、その映像を販売するのだから、最低限ヘアカットの技術を身に付ける必要がある。そこで潘さんは故郷の四川省を離れて上海へ。実際にヘアサロンでヘアカットの技術を学ぶとともに、日本のサイト運営者とメールで連絡を取り、サービスのノウハウを集積していった。そして、知人からお金を借りてビデオカメラなどの必要機材を調達。ようやくサイトの開設にこぎ着けたというわけだ。
◎モデルはすべて素人の女性
「芳飛剪髪網」の動画に登場する女性はすべて素人。そのため、モデル探しは知人の紹介や街頭でのスカウト、チャットなどを通じてスタッフ自らが行っている。彼女たちにサイトの主旨を説明して理解が得られると、繁華街にあるマンションの1室に来てもらい、そこで撮影。室内にはヘアサロンと同様、鏡やシャンプー台といったヘアカットに必要な設備が一通り揃っており、シャンプーやリンスは安全な正規品を使っている。そして、女性が椅子に座って準備が整った段でアシスタントの男性がビデオカメラの電源を入れ、撮影はスタート。潘さんが女性の髪にハサミを入れていく。
サイトで販売している動画は約270種類(5月7日現在)。まだ公開していない作品も含めると、潘さんはこれまでに300人近い女性の髪を切り、その模様を映像に収めてきた。動画はすべて60〜100分程度で、販売価格は1本15〜30ドルほど。価格は内容が過激であればあるほど高くなる。これは、女性に支払われる謝礼(数百〜2,000元)が、スキンヘッドや坊主頭の場合は高くなるためだ。ちなみに、潘さんによると「中国で運営されている同様のサイトの中では、うちの謝礼が一番高いため、比較的モデルは集まりやすい」のだという。
しかし、中国の女性にとって、スキンヘッドや坊主頭になるのは、お金だけで割り切れる問題なのだろうか。その点について潘さんは「もちろん、お金だけでは口説けないこともあります。でも、彼女たちは失恋などをきっかけに自ら『変わりたい』と願うことも。その『変わりたい』という欲求が、時に彼女たちを大胆な行動に走らせるのです」と語る。