しかも、今回はただの3連勝ではない。14日土曜日のゲームでは、選手会長である
石川雅規投手(31)がプロ通算100勝目を達成という素晴らしい記録を打ち立てたのだ。この記録は日本プロ野球史上128人目となり、スワローズ球団史上では5人目の快挙で1988年以来23年ぶりというもの。さらに、プロ10年目、259試合目での達成は、日本球界でも400勝投手の金田正一氏に次ぐスピード記録だ。ちなみに、1988年にスワローズで同記録を達成したのは、現ベイスターズ監督の尾花高夫氏。つまり“前任者”の目の前での記録達成という珍しいおまけ付きとなった。
石川といえば「小さなエース」という代名詞が付いて回る。確かに167センチという身長は日本人の成人男性の平均身長172センチからも5センチも小さい。そんな、小さな投手が大成した理由は、頑丈な体躯(とくに下半身)による安定感と、大崩れしない精神的な強さではないだろうか。土曜日の試合は、そんな彼の持ち味が十二分に発揮された試合内容だったといえる。ストレートは基本通りアウトコース低めにズバっと決まり、シュート、スライダー、そしてチェンジアップでバッターのタイミングを面白いように逸らす。やや荒れる日は与四死球も多いのだが、この日はなんとゼロ。107球、奪三振7という見事なピッチングで横浜打線を完璧に手玉に取り、9回まで完封ペースと、まさに100勝目に相応しいピッチング内容での達成となった。
そして、この3連戦3連勝のバッティング面での立役者は、金曜日に1試合3本塁打をブチ込んだバレンティンだろう。今年加入のこの新外国人がまさに“大当たり”となっていて、現時点で13本、.386の高成績を収め現在2冠王なのだ。
こう言っちゃなんだが、スワローズは外国人選手がいいときには、ものすごく強いチームになる。「地球の裏側にもベースボールがあった」という名言を残し、“ホーナー現象”とまで言われた1987年のB・ホーナーから、R・パリッシュ(1989年)、D・ホージー(1997年〜98年)などなど、多彩な助っ人外国人はもはや“お家芸”ともいえる。最近ではA・ラミレス(2001年〜2007年)とR・ペタジーニ(1999年〜2002年)が01年の日本一に貢献したことが最後だろうか。
そんな久々のお家芸の復活もあって、貯金8という磐石の態勢で挑む交流戦。現在、15勝7敗と勝率.682では12球団トップなので、このままの勢いで突き進んで、チーム初の交流戦優勝というタイトルをもぎ取って欲しい。
【TEXT=劇!!空間プロ野球 / 青柳潤】
■筆者紹介
青柳 潤(あおやぎ・じゅん)
元雑誌記者、編集者。野球観戦をライフワークと位置づけるほどの“ボールジャンキー”で、森監督時代のライオンズ黄金期〜現在はスワローズファン。自身がサウスポーなので、幼い頃より正統派右腕と右の大砲に大いなる憧れと尊敬を抱き続けている。
「90年代野球にオマージュを」の言葉の元に集った野球語りたがりの"烏合の衆"。4名が交替制でコラムを執筆します。全員、松坂世代前後の生まれ。