『亜玖夢博士の経済入門』は、端的にご紹介するなら、
専門書の解説では厳密すぎて理解困難な、
「経済関連の理論の基礎」
を物語仕立てでわかりやすく解説している本
ということになるでしょうね。
同書には5編の独立したストーリーが収められています。
ただし、それぞれに関連を持たせてあり、
最後には全体が結びつくのですが。
各編では、最近注目されている以下の理論が一つずつ
取り上げられ、それぞれの理論を軸にしながら、
相当ぶっ飛んだ、奇妙な話が展開していきます。
・行動経済学
・囚人のジレンマ
・ネットワーク経済学
・社会心理学
・ゲーデルの不完全定理
主人公は、70歳の亜玖夢(あくむ)博士です。
万巻の書物を読破した亜玖夢博士は、
己の学識全てを傾け衆生を救済するため、
東京・歌舞伎町裏、風俗街の怪しげなビルに
「亜玖夢研究所」
を開設。
歌舞伎町のポン引きがばらまく勧誘チラシを
頼りにやってきた相談者たちが抱える問題を
中国人の助手の手を借りて解決してあげるという設定です。
そのチラシには次の一文が。
「相談無料。地獄を見たら亜玖夢へ」
私が特に楽しかった章は、
やはり私の最大の関心領域である「社会心理学」を
取り上げた第4章(同書では「第4講」)です。
この章では、あらゆる病気に効果があると謳う
「スーパー・バイオニック・ウォーター」
といういかにも怪しげな水を製造するマシン
「ミラクルSBW」
を売りまくるトップセールスマンが、
亜玖夢研究所にやってきます。
そして、あらゆるセールステクニックを用いて、
亜玖夢博士に「ミラクルSBW」を売りつけようとします。
しかし、人類の英知を知り尽くした亜玖夢博士は、
彼が次々と繰り出すセールストークを社会心理学的に
解説してみせることによって、セールスマンを完全に
打ちのめし、無力化してしまうのです。
ただ、結局のところ1台100万円のマシンを
続きはこちら