ウクライナ出身の18歳、エゴール・チュグンさんです。
身長187cm、体重175キロの恵まれた体格を生かし、力士になる夢を追いかけています。
■九州情報大学 相撲部1年・エゴール・チュグンさん(18)
「厳しい練習など成長できる環境に、わくわくしています。」
ウクライナで生まれ育ったエゴールさん。相撲を始めたのは7歳の時です。
■エゴールさん
「ウクライナのクラブで柔道をしていて、柔道をしながら相撲も始めて、やっぱり柔道より相撲が好きになって。」
Q.相撲のどんなところが楽しいですか?
「やっぱり“当たり”が好きですね。気持ちいい。」
将来は日本で力士になりたい。
13歳の時にウクライナのアマチュア代表に選ばれ、世界大会にも出場しました。
しかし、2022年2月。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まり、生活が一変しました。
■エゴールさん
「14歳の時に始まりました。自分は学校で知りました。みんな、何か始まったらしいと言っていて。自分もよく分からなくて、信じられなかったですね。私と同じ相撲クラブに行っていた先輩も2人亡くなりました。いろいろな音も怖くて、(ドローンは)ミサイルをいろいろなウクライナの州に落としていますよね。だからドローンの音が聞こえたら、やっぱりもうやばいなと。」
当たり前だった日常や仲間を失い、音におびえる日々。
■エゴールさん
「みんなと本当に会いたくて、早く(相撲で)当たってみたかったですね。ずっと1人で練習していたから、相手がいなくて寂しかったです。」
チャンスが訪れたのは15歳の時です。東京で元横綱・白鵬が主催する少年相撲の国際大会に、ウクライナチームとして招待され、強豪校である九州情報大学の竹石洋介監督と出会いました。
■九州情報大学 相撲部・竹石洋介 監督
「(当時のエゴールさんは)一言で言うと、まだ体が大きいだけで、日本人の子どもと相撲を取っても技でやられてしまって、正直弱い印象でした。」
それでも、日本語に触れたこともないのに、関取たちの名前までローマ字で覚えていたほどの熱意に魅せられ、竹石監督はエゴールさんを「自分のもとで育てたい」と感じたといいます。
2023年11月、エゴールさんは16歳でウクライナを一人離れ、竹石監督の教え子が監督を務める長崎県の高校の相撲部に入部しました。
■エゴールさん(当時16)
「家族がとても心配で、毎日家族のことを考えている。(日本で生活できて)私はとても幸せで、両親の期待に応えたい。」
故郷にいる家族を思い、不安な気持ちを抱えながらも、エゴールさんは日本語の勉強と相撲の基礎練習に打ち込みました。
努力は結果に結びつきました。2年生の長崎県高総体では、個人戦の100キロ以上級で優勝。そして、去年3月の全国大会では個人戦の無差別級で5位に入賞するなど、目覚ましい成績を残しました。
3月、高校を卒業したエゴールさん。大学進学を機に長崎から福岡に拠点を移し、相撲部の寮に入りました。部屋に飾ったのは、ウクライナを離れる時に兄からもらったメッセージ入りの国旗です。
18歳年上の兄、イルヤさんは今、兵士として戦場に立っています。
■エゴールさん
「頑張れみたいな言葉が全部書いてあって、兄からも一緒に頑張ろうみたいな言葉が書いてあって。」
危険と隣り合わせの生活の中で、自分を応援してくれる祖国の家族や友人たち。
強くなって、伝えたい思いがあります。
■先輩
「プレッシャーなんだよね?みんな期待してるから。」
■エゴールさん
「考えていないですね。考えたらちょっと怖いです。」
■先輩
「プレッシャーに負けないようにしないと。」
■エゴールさん
「そうですね。まずは、みんなに感謝の気持ちを見せないといけないですね。頑張るしかないです。」
調子がいい時ばかりではありません。
■竹石監督
「力出せるなら、やりなさい。どっち?出せるの?」
■エゴールさん
「はい。」
この日、右ひじのケガを隠して稽古に臨んでいたエゴールさん。思いどおりの稽古ができない時には、焦りが生まれます。
■エゴールさん
「全力で頑張れなかった。悔しい気持ちしかないです。」
それでも、エゴールさんは歩みを止めません。
故郷への思い。支えてくれる人たちへの感謝。そして、力士になるという夢があるからです。
■エゴールさん
「練習で一生懸命頑張らなかったら、大相撲に入れない。練習で一生懸命頑張って、大相撲に入って横綱になって、ウクライナの状況をみんなに知ってもらえるように頑張っていきたいと思います。」
前を向いて、ひたむきに。
エゴールさんは福岡で、夢に近づく新たな一歩を踏み出しました。
※FBS福岡放送めんたいワイド2026年4月2日午後5時すぎ放送