ニールセン監督は2024年12月、なでしこジャパン史上初の外国人監督として就任した。25年2月、初陣となったシービリーブスカップでアメリカらを撃破して初優勝。幸先のよいスタートを切ったが、その後は白星から遠ざかった。主力を擁して挑んだコロンビア戦(△1-1)、ブラジルとの2連戦(●1-3、●1-2)、スペイン戦(●1-3)、イタリア戦(△1-1)、ノルウェー戦(●0-2)と強豪国との親善試合6試合で4敗2分と未勝利。同年夏に海外組の主力抜きで挑んだE-1選手権も3連覇を逃して3位で終えていた。
一方で、11月に長崎で行われたカナダ戦では2連勝。その勢いのまま、今年3月にオーストラリアで行われた女子アジアカップでは29得点1失点の6連勝で2大会ぶり3度目のアジア制覇を果たす。しかし、女子W杯出場権も手にした直後のアメリカ遠征で、指揮官交代となった。
ニールセン監督の契約は女子アジア杯までだったという。宮本会長は「このタイミングで契約を延長しないことを、日曜の理事会で決議した」と説明。正式には解任でも退任でもなく、契約満了で去る形になった。佐々木氏は契約満了の決議後、ニールセン監督がいるデンマークに出向いて説明。「(ニールセン監督)本人も、そういう状況であれば3月末の契約期間だったのでその分についてはわかったと」(佐々木氏)。本人も承諾したうえでの満了となった。
佐々木氏は「彼は温厚な性格で、人間として非常にすばらしく、僕自身も大好きだった」と振り返る。しかし、その指導力は満足に至らなかった。「スペインなど強豪国とやった際に、かなりイニシアチブを持たれたなかでの敗戦という経過があった。改善しなければいけない要素があるなかで、あまりにも選手たちに対してアプローチが弱かった」と言及した。
また、外国人が指揮官を務めるうえでネックになるコミュニケーションも、ひとつの要因になった。
「どうしても通訳を通して伝えなければいけないということ。語学的に選手も何人かはストレートにわかる感じはある。だが、ミーティングやトレーニングのテンポで、日本のコーチはストレートに伝わる」。国際親善試合での未勝利が続くなかで、昨年11月のカナダ戦からは狩野倫久コーチがニールセン監督と相談しながら指揮。2連勝したことで、その後は徐々に狩野コーチ主導に切り替わった。
ニールセン監督は就任前からなでしこジャパンの戦術を熟知しており、「それは選考の大きなファクターだった」。そう語る佐々木氏だが、「実際にやってみると、もっともっと細かく、なでしこが世界にやらなければいけないディティールを落とし込めなかった」。就任後、改めて現場レベルでの難しさに直面した。
「選手のなかではほとんどそういう(不満の)ような意見はなかった。ただ何人かはW杯(出場権を)取ったけど、W杯優勝を目指すにあたって不安という声もあった」
総合的な状況を見据えたなかで、佐々木氏はアジア杯後に監督交代を宮本会長に進言。「(招へいの)判断をしたのは私なので、私に責任がある。その責任ゆえに、このままではどうなのかということを踏まえたなかでの監督の契約満了という決断をした」と力を込めた。
今後は狩野コーチが監督代行となる。宮本会長は6月までに次期監督を決める考えであることを言及した。佐々木氏は、次期指揮官は再び日本人になる可能性を示唆。「時間のないキャンプ期間で、しっかりとディティールを瞬時に伝えないといけない状況があった場合に、現状はそちら(日本人)のほうが効率的かなと思っている。もちろん、全世界にすばらしい指導者がいるので、それはすべてではない。タイムリーに判断していかないといけない様子であれば、やはり日本の指導者がよろしいかなと考えている」と、持論を述べた。
監督交代の話は選手全員には共有しておらず。その可能性があるという経過をキャプテングループ(主将・長谷川唯、副主将・南萌華、サポート役・熊谷紗希、田中美南)には共有。今回のアメリカ遠征で、改めて選手には話をするという。
あくまで目指すは来年6月の女子W杯優勝。そのうえでの監督交代の決断となった。佐々木氏はアメリカ遠征の意義を強調する。今回のメンバーはニールセン監督退任が決まる前に、同指揮官のもとで構成。女子アジア杯メンバー26人から2人が減ったのみで大幅な変更はなかった。
「今回は新たな選手ではなく、まず現状の力で強豪アメリカとどう戦えるか検証することが一番」(佐々木氏)。FIFAランク2位のアメリカと、日本時間12日、15日、18日で異例の3連戦を行う。
(取材・文 石川祐介)