また、大型トラックは荷台とドライバーの座席が分かれているため、人や
自転車と衝突した程度の衝撃には気づけません。大型トラックが人や
自転車を事故後に引き摺ってしまうのはこのためです」(前同)
不幸な事故は巻き込み事故だけではない。近年、利用者が増加しているスポーツタイプの電動アシスト自転車(いわゆるe-bike)のスピードにも困っているという。
「トラックは初速が遅いので、よく自転車に右から追い抜かれるんですけど、右後方も死角になってしまうため、やめてほしいです。最近はフードデリバリーが普及して、ロードバイクのように速度の出る自転車も多くなりました。そうした自転車が死角から飛び込んでくるケースは、ここ数年で増えたと感じています」(樋山祥さん)
交差点で左折しようとしている車を右から追い抜くことは、当然対向車が見えにくい自転車にとっても大きなリスクだ。
いつか自分が加害者になってしまうのでは…
青切符導入は自転車側の危険や、歩行者の視点で語られることが多いが、トラックドライバーも加害者になってしまうのでは、と不安を抱えている。ドライバー歴2年の土屋希美さん(26)もその一人だ。
「ライブイベントで都内の繁華街のスタジオなどに機器を搬入することがありますが、道幅の狭い道路では歩行者や自転車が、トラックの真横スレスレを通り過ぎます。
悪気がないことは理解していますが、狭い道で死角から次から次に人が出てくるので、その場から動かせなくなってしまいます…。それでも納品の時間には間に合わせる必要があるので、交通整理がいない状況での搬入出はとても大変なんです」(土屋さん)
「また、うちの会社は鹿児島から青森まで走っていますが、田舎では自転車と歩行者が悠々通行できる大きな歩道のほうが多いです。そのような道でわざわざ自転車が車道を走るのは、車両との接触事故を増やすだけになってしまうんじゃないでしょうか?
車を避けるために歩道に入って、その後、歩行者を避けるために車道に出てきて…という運転をされると、いつか自分が加害者になってしまうのではないか、とても恐怖を感じます」(前同)
歩行者の安全を守るという意味では、自転車の車道走行は大きな一歩だ。しかしそのかげで、大型トラックと自転車の関係には新たな緊張が生まれつつある。
自転車側は「被害者にならない」「加害者を生まない」ためにも、大型トラックの死角を理解しておくことが欠かせないだろう。
カメラなど最新機器の導入など、トラックドライバー側も今より更に安全意識を向上させる必要がある。
そして法律を施行する行政側は路上駐車の取り締まりを厳しくしたり、自転車の走行レーンの拡充など整備を進めるべきではないか。
インフラ整備と安全機器の普及を含めた対策も進んでこそ、青切符導入の狙いが本当の意味で生きてくる。不幸な加害者と被害者がいま以上に増えないことを切に願いたい。
取材・文/福永太郎