ハムデン・パークに背番号14が舞った。
日本代表は後半39分、ダイナミックな左サイド攻撃でゴール前を攻め込むと、FW塩貝健人のパスに走り込んだのは右ウイングバックで同18分から出場していたMF
伊東純也(ゲンク)。スピードに乗った状態でも質の落ちない冷静なトラップから右足でゴール左隅に流し込み、ボックス内に7人が
雪崩れ込む“超攻撃的アタック”を仕上げた。
何よりも冷静なフィニッシュが見事だった。「最初にダイレクトで打とうと思ったけど、上手くかわせるかなと思ってかわせた。(シュートは)もっとサイドに流そうと思ったけど、相手にギリギリカットされずにゴールできて良かった」。24年9月のW杯最終予選・
中国戦以来の得点だった。
スプリントでゴール前に入っても、的確な判断ができるのが伊東の大きな強みだ。後半18分に投入された直後の同22分にもMF
三笘薫のスルーパスに抜け出し、切り返しのフェイントで相手DFを翻弄。この場面ではシュートが相手GKに阻まれる形となったが、ここで光ったアイデアは続く決定機でも健在だった。
「(1度目のチャンスは)薫からいいボールが来て、切り返し2回まではイメージ通りで、あそこでチップでキーパーの上を越すイメージだったけど足元にボールが入りすぎて、最後だけうまくいかなかった。ゴール前で落ち着いてプレーできていると思うし、(1回目も)アイデアはうまく行ったかなと。失敗してもやり続けたことでうまくいったかなと思います」(伊東)
ウイングバックで起用される選手がこれほどのフィニッシュワークを発揮できるチームは世界を見渡しても希少だ。それも得点の場面では普段の3-4-2-1ではなく、2トップの下にMF
三笘薫とMF
堂安律がインサイドハーフとして並び、アンカーにMF
鎌田大地を配置するという超攻撃的な3-1-4-2の布陣。伊東は「相当前に人数をかけていたので、そこで得点までできたのが良かった」と手応えを語った。
そんな伊東だが、実は得点の時点では3-1-4-2の布陣変更に「気づいていなかった」のだという。
「5-3-2(ウイングバックをDFに数える場合のフォーメーション)になっていたけど、それを知らなくて……。守備の時に全然ハマんないなと思っていたら5-3-2でした。点が入った時も5-3-2だったけど、それに気づいてなくて、守備になってハマんないなと思って、5-3-2というのに気づきました」
ミーティングではこの超攻撃的布陣を採用する可能性は伝えられていたというが、ピッチの上では“ぶっつけ本番”。それでも得点シーンではインサイドハーフの堂安がサイドに開き、伊東が中央に絞ってゴール前に侵入するという意思疎通が機能していた。
「律がサイドに流れてきたら中に入って行ってというのは声の掛け合いだけでポジションは臨機応変に変えられる」(伊東)。システムの枠を超えた熟練の連係が、相手を脅威に陥れる結果を生み出していた。
そうして掴んだ敵地
スコットランドでの白星。その立役者となった伊東は、前半に出場していた若手選手の貢献にも目を向けながら手応えを語った。「前半から良い戦いをできていたし、新しく出た選手もいいプレーをしていた。ただ0-0だったので絶対に勝ち切らなきゃいけないというところで、なんとか自分たちが出て点に絡みたいと思っていた。最終的に1点取って勝てて良かった」。2度目のW杯まで3か月。前回大会で際立った驚異の献身性はそのままに、際立つ結果で弾みをつけた。
(取材・文 竹内達也)