かなりシェア率が高いということで、ドルミーレデンタルオフィスの鹿乃さやか院長によると、「ほとんどの歯科で使用されている」といいます。
では、なぜ「オーラ注」は不足しているのでしょうか。
製造元によると、2025年に製造プログラムに不具合が生じ、出荷を制限しました。現在は通常通り出荷を再開しましたが、供給が追いついていない状況です。
もう一つの要因として、医療ジャーナリストの吉澤恵理さんは「『多めに在庫を確保しておこう』という医療機関の動きが不足感を強めた可能性もある」といいます。
「オーラ注」は後発医薬品、いわゆるジェネリック医薬品です。
今回の麻酔薬供給不足の背景には、ジェネリック医薬品の構造上の課題もあるようです。
「薬不足が頻発する危険」 原因は“ジェネリック医薬品”の構造
ジェネリック医薬品の割合は現在85%です。
先発医薬品に比べ、ジェネリック医薬品は莫大な研究費が必要ないため、比較的“安価”です。
また、医療費節約のために、ジェネリックの使用を国が推進してきました。
医薬品政策に詳しい神奈川県立保健福祉大学の坂巻弘之シニアフェローは、「ジェネリック医薬品は、価格と安定供給のバランスが崩れてきている。薬が不足する状況は、今後も頻発する危険がある」と指摘しています。
どういうことなのかというと、保険適用される薬の価格(薬価)は国が決めています。収入や地域によって受けられる医療に違いが出ないよう、公平性を保つために国が価格を定めています。
しかし、病院や薬局は、利益を出すために薬を安く仕入れたいものです。そのため製薬会社は、市場競争で仕入れ値を下げていきます。
国はそういった“市場調査”をして薬の価格を改定するため、どんどん下がってしまうというわけです。
一方で、輸入に依存する原材料費、輸送コスト、人件費が高騰しているため、生産コストはどんどん上がってしまいます。
坂巻さんは「ジェネリックは利益が少なく、生産をやめてしまう企業もある。新規参入を期待するのは難しい」としています。
250成分の供給は1社に依存…需要集中の危うさ
井上貴博キャスター:
なかなか市場原理が働かないので、作れば作るほど収益が減るのであれば、ジェネリック医薬品を作らないということになってしまいます。
また、1社の一つの商品に需要が集中していることの危うさも感じます。
スポーツ心理学者(博士) 田中ウルヴェ京さん:
需要と供給だけの問題ではなく、構造的な問題なのですね。
生産コストがかかれば、ちゃんと価格として上乗せしてあげないとということですよね。
山形キャスター:
実際に、ジェネリック医薬品の供給会社の状況を見ていきます。
【ジェネリック医薬品(789成分)供給社数の状況】※厚生労働省より
1社のみが提供:250成分
2社が提供:93成分
3社が提供:85成分
1社に依存していると、何かが起きたときに薬の供給不足が起きてしまうということがわかります。
出水麻衣キャスター:
サイバー攻撃などいろいろなリスクもあり、命に関わることなので危ないですよね。
ジェネリック供給不足 どう解決?対策は?
山形キャスター:
国は▼最低薬価(=薬価の下限)を概ね3.5%引き上げる、▼不採算の医薬品への薬価引き上げ措置などの対策を打っているということです。
大規模な不足や混乱を防ぐために、坂巻さんは「必要不可欠な医薬品は、薬の価格を維持し、国がある程度の在庫備蓄をしておくことが大事なのではないか」と指摘しています。
井上キャスター:
在庫備蓄は重要になると思います。
この話を聞いていると、原油価格高騰や、中東に依存している石油についても思いを馳せてしまうところがあります。
資源のない国だからこそ、ある程度リスクを取って多角化するという基本は同じなのだろうと思います。
出水キャスター:
医薬品だけではなく、最近は医療機器の問題もあります。医療機器を導入するにも上限金額が決まっており、生産コストが上がっているなかで、なかなか日本という市場が医療機器を作るメーカーにとって魅力的ではないという話も聞いています。
井上キャスター:
海外からの参入がなく、市場が活性化しないという悪いサイクルをどう打破していくのかということですね。
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<プロフィール>
田中ウルヴェ京さん
スポーツ心理学者(博士) 五輪メダリスト
慶應義塾大学特任准教授
こころの学びコミュニティ「iMiA(イミア)」主宰