当人たちの証言から、密かに進む妻たちの“
熟年離婚計画”の実態に迫った。
◆夫に対する不満を押し殺しながら生きてきた
「子供が巣立ってから何十年も2人で暮らすなんて想像もしたくない。下の娘が成人する6年後には必ず
離婚します」
こう話すのは一回り以上年上の夫(61歳)と高校生の長女、中学生の次女と暮らす高木裕美さん(仮名・48歳)だ。結婚したのは27歳。直後にマイホームを購入し、温かい家庭を築いてきたように見えたが……実際には長年にわたって夫に対する不満を押し殺しながら生きてきたという。
「
離婚を考えるようになったのは次女が生まれてから。育児に参加せず、家事も手伝わずに飲み歩き、酔っぱらって帰ってきては、『子供をおとなしくさせろ』と文句を言っていた夫の姿を鮮明に覚えている。ほかには『メシ』『風呂』など単語しか発さない夫が嫌になり、それ以降、寝室を別にしました。1年前に夫が定年退職してから再就職先を見つけるまでの1年間はずっと自宅にいたので地獄でした。死んでも夫の介護なんてしたくないので、娘と母には『もう
離婚する』と伝えてあります。それ以来、娘たちは気を使って、家族4人で外食に出かけるときなどは、私と夫が並んで歩くことがないよう、脇を固めてくれるようになりました(苦笑)」
現在、裕美さんは
離婚後の生活を視野に仕事を増やすことを検討しているという……。
◆コロナ禍をきっかけに
熟年離婚が増加
このように長年連れ添った夫婦の
離婚が増え続けている。厚生労働省の人口動態統計月報年計を見ると、’02年をピークに
離婚件数は減り続けているにもかかわらず、’14年頃から同居期間20年以上の夫婦の
離婚件数はじわじわ増加。近年は4万件超で高止まりしているのだ。
離婚カウンセラーの岡野あつこ氏が話す。
「’08年から
離婚後の財産分与の対象に年金が含まれるようになって女性の
離婚のハードルが下がり、コロナ禍をきっかけに
熟年離婚が増えました。リモートワークの浸透で日中も自宅で過ごす旦那さんが増えて、夫婦で過ごす時間が増えたことが原因と考えられます。『朝夕の食事を用意するのは我慢できたけど、毎日、夫の昼食まで用意しないといけないのが苦痛でしょうがない』と話す奥さんから、
離婚相談が多数寄せられました」
◆積もり積もった旦那に対する不満が原因に
こうした
熟年離婚の7〜8割が「妻から」だという。その原因の多くは、積もり積もった旦那に対する不満だ。夫婦問題診断士でFPの寺門美和子氏が解説する。
「
熟年離婚の理由として最も多いのは性格の不一致なんです。
モラハラや相手の不貞行為などが重なることもありますが、感覚のズレからくる小さな不満が長年にわたって積み重なり、
離婚に結びつく。だから、自分に問題があるとしっかり認識できる男性が少ないという特徴があります。先日、相談に来られた70代の男性は、急に
離婚届を突きつけられて絶望したうえに、財産分与で自宅を手放し、地域のコミュニティを離れて一人さみしく老後を過ごすことになりそうと号泣していました」
◆
モラハラ夫には共通点がある
離婚問題に詳しい堀井亜生弁護士は「
モラハラ夫には共通点がある」と話す。
「大手企業に勤め、稼ぎも資産もある男性ほど、『自分が一番賢くお金を使える』『妻に渡すとムダに使われる』と考えるのか、わずかな生活費しか渡さない経済的DVで奥さんを締めつけることがあります。そうした男性は交友関係が狭いという共通点があるため、その反動で家庭内では威張り散らすことも少なくありません。妻にはその不満が溜まり続けるため、子育てから解放されるタイミングで爆発して、
熟年離婚を決める」
岡野氏は「
熟年離婚は“衝動”ではない」と強調する。
「子供の独立を待つ、
離婚後に備えて貯蓄するなど、計画的に進める女性が増えています。女性の相談者の中で多いのは3年ほど前から準備をする人。長いと5年以上、
離婚計画に費やす女性もいる」
気づいていないだけで、あなたの奥さんも
熟年離婚計画を練っている……? 既婚男性は自らの振る舞いを一度振り返ったほうがよさそうだ。
【
離婚カウンセラー 岡野あつこ氏】
1990年に
離婚し、日本初の
離婚カウンセラーに。以降、4万件もの相談に対応。『なぜ「妻の一言」はカチンとくるのか?』など著書多数
【夫婦問題診断士・FP 寺門美和子氏】
3年の調停・裁判を経て48歳で
離婚した経験を生かし上級プロ夫婦問題カウンセラー兼FPに。著書に『
熟年離婚 女性がお金で損をしない本』
【弁護士 堀井亜生氏】
離婚・家族問題、医療問題に精通。YouTube「弁護士堀井亜生チャンネル」で
離婚問題について発信中。著書に『
モラハラ夫と食洗機』
※2026年3月10日号より
取材・文/週刊SPA!編集部
―[夫は見てはいけない 妻たちの[
熟年離婚]計画]―