──お二人はFC東京で2016シーズンから2年間一緒にプレーしています。当時はお互いをどのように見ていましたか?
室屋 ちょうどプロ1シーズン目で、右に悠平さん、左には(太田)宏介くんがいたんですよ。「悠平さんを超えたい」と思って東京に加入したので、自分にとっては目標の選手でした。もうすべてを盗んでやろうという気持ちで。常に目で追っていたし、とても意識していましたよ。当時スカウトだった浅利(悟)さんからは、「このクラブで右サイドバックのポジションを守ってきた悠平からポジションを奪う選手が出てきてほしい」と言われていました。憧れでもあったし、ポジションを奪い取りたいという目標でもありました。
徳永 お、いいね(笑)。
──徳永さんも当初は加地亮さんに同じような気持ちを抱いて東京に加入した経緯がありました。
徳永 JFA・Jリーグ特別指定選手で東京に加入した時(2003シーズン)は、同じポジションに加地(亮)くんがいました。自分も「日本代表に選ばれていた加地くんからポジションをとれば代表になれる」と思って東京への加入を決めたから、気持ちは一緒かもしれない。分かりやすいというか、この選手からポジションをとれば、一気に代表までいけるという気持ちはあった。FC東京の歴代サイドバックってそういう選手が多かったと思う。(長友)佑都もそうだし、東京には代表クラスのサイドバックがたくさんいたからね。成の第一印象は、すごく頑張る勢いのある選手だなって感じだった。大学2、3年生になったくらいから練習にもよくくるようになったよね?
室屋 そうですね。大学2年生で特別指定選手になって、3年生の2月にプロ契約をしました。リオデジャネイロオリンピック(2016年)の代表に選ばれた時は大学4年生でした。
徳永 そのあたりから自分のライバルになる選手だと思って、すごく意識するようになってた。もう2017シーズンくらいには成に勝てないと思っていたんだよね、これは本当に。オレが勝てないと思った選手は、長友佑都と室屋成。この二人だけだったかな。
──2017シーズンに太田宏介選手が復帰するタイミングで、室屋選手の背番号が6番から徳永さんが背負っていた2番に変更されています。当時のエピソードをあらためて教えてください。
室屋 譲られたというよりは、悠平さんが羽生(直剛)さんの番号を受け継ぐようなことを当時言っていたと思います。だから自分が2番を受け継いだみたいな感覚ではなかったですね。
徳永 どちらかというと、そうだったかもね。でも、背番号2は成が着けたほうがいいんじゃないかと思っていたし、オレも22番を着けたかったからね。
室屋 うれしいですけど、悠平さんっていつもこういう感じで優しいんですよ。背番号のこともそうですけど、ポジション争いをしている時に自分のプレーが良くなくても、「これからは成の時代だから」と言いながら、いつも優しく接してくれた。ライバル意識を持ってくれていたことは初めて聞いたので。ちょっと驚いています。自分が成長するための道を作ってくれて、導いてくれるような存在でした。だから、ポジションを奪ったという感覚は全くないんですよね。むしろ悠平さんがサポートしてくれたような感覚でいました。
徳永 全然そんなことはないけどね。もう普通にライバルとして勝てないと思っていたから自然と道を譲ったんだと思う。パフォーマンスで勝つことができなかったんだよ。
──徳永さんは10年以上守ってきたポジションへのこだわりが強く感じられる選手でした。
徳永 確かにそうですね。でも、いつかはとられるものだと思っていて、それが成で良かった。自分が衰えていってとられることは嫌だったから。まだ自分が動けると思っている時に成が現れた。それから日本代表にも選ばれて、海外でもプレーしてくれたからね。先日の川崎フロンターレ戦のパフォーマンスを見たら、代表に入ってもおかしくないくらいのプレーをしていると思う。やっぱり自分と争っていた選手がちゃんと今も活躍していることは素直にうれしいですね。今はキャプテンとしてチームを引っ張っているし。
室屋 まだぎこちないですけどね(笑)。
徳永 いやいや、キャプテンぽいなって思ったよ。一つひとつのプレーに熱いところとか。仲間が良い守備をした時にハイタッチに駆け寄る場面を見て、すごく良いなと思った。チームの士気が上がるし、見ているほうもテンションが上がって「やるぞ!」という空気になるのでいいなと思ったよ。
──では次に、その“キャプテン”の話を聞かせてください。チームにとってどういう存在であるべきだと思いますか。
室屋 うーん、難しいですね。まだキャプテンに就任して数試合しか経ってないんで(笑)。長年キャプテンを務めたモリくん(森重真人)がいてくれるのは大きい。ただ、試合前に「どんな声を掛けたらいいですか?」と聞いたら、「この間の試合と同じでいいよ。誰も覚えていないから」って言われましたけど(苦笑)。モリくんとか佑都くんがアドバイスしてくれるし、チームにどんどん気合を入れてくれる。自分が腕章を巻いているけど、ピッチ外でわざわざ無理して何かをやろうとは今のところはしていないです。きっとこの先も自分のスタイルを曲げて無理に振る舞おうとは思っていないし、試合が始まれば声を出して戦う姿勢を見せるタイプですし、これから自分なりのキャプテン像を作り上げていければいいなと思っています。
──徳永さんも2010シーズンに1年間だけですが、キャプテンを任されました。
徳永 少し言い訳みたいになるけど、あのシーズンは開幕前にボランチで怪我人が続出して、穴を埋めるために自分がボランチにコンバートされたんですよ。でも、キャプテンとボランチという慣れない役割が重なって、チームも結果を残せずにJ2リーグに降格させてしまった。相当自分も追い込まれました。だから、成には自然体でやってほしいと思う。
室屋 自分では気にしていないつもりでも、どこかで気にしてしまうのかもしれないですね。試合結果や内容もそうですけど、自分のパフォーマンスも「キャプテンならもっとやらなければ」と、どこかで考えてしまう。自然体を心掛けていますけど、もちろんキャプテンとして振る舞わなければいけない部分もあるので、自分もそのバランスを探している最中です。
徳永 試合を見る限り、あの立ち居振る舞いならチームの士気は上がると思うよ。実際のところはピッチの選手にしか分からないけど、外から見ている分にはすごくいいキャプテンだなって見えたよ。
──徳永さんは現役引退後、解説者をする一方で、サッカーとは離れたご実家の仕事もされています。そのなかで大切にしていることはありますか。
徳永 大事にしてきたことですか...意識していることは、まず自分が動くということですね。嫌な仕事とか結構きつい現場であっても、率先して自分から動くようにしています。そうしないと、口で言っても説得力が生まれない。行動で示すという意味では、成の走る姿勢って一番の表現だと思います。そういう想いや球際、強度の高さとかも含めてピッチで一番戦っているというところは見れば分かるし、その姿勢は周りにも伝わっていると思う。
室屋 悠平さんの現役時代もプレーで引っ張る選手でした。自分もその姿を見てきたし、悠平さんと宏介くんは特別指定で練習に参加した時から理想のサイドバックだった。何とかして二人を超えたいという想いで東京にきたから、そういう人からそう言ってもらえるのはすごくありがたいです。今はとにかく東京をもっと良くしたい気持ちでプレーしています。もっと自分自身も、チームも、難しい時期や苦しい時期がくると思うんです。その時に何ができるかだと思います。
──続いてのトークテーマは“リーグタイトル”です。徳永さんは現役時代にリーグタイトル獲得を逃したことが心残りですか。
徳永 ものすごく心残りです。やっぱりJ1リーグのタイトルを獲得してから引退したかった。それが狙えるチームだったから。成には絶対に獲ってほしい。ただ、難しさも理解しているつもりです。シーズンを通じて本当に強いチームでなければ獲れない。カップ戦は一発勝負だからチーム状態や勢いに左右されるけど、リーグ戦はそうじゃない。だからこそ一番難しくて、一番価値がある。それをキャプテン室屋で見たい。もちろんOBとしてもそうだし、サッカー界全体としてもJリーグを盛り上げるうえで首都クラブが頂点に立たなければいけないと思う。常に優勝争いをしてほしいし、この特別大会は期待できるシーズンになるんじゃないかと思っています。
室屋 タイトルを獲れる集団になっていきたいです。常にタイトル争いできるチームになりたいし、ならなきゃいけないクラブだとも思います。そこまでこのチームを押し上げていきたいですね。
徳永 もったいないと言われ続けて、もう10年以上は経つ。もちろん自分は他のチームでほとんどプレーしていないし優勝経験もないので、何が足りないのかは分からない。ただ、大切なことは日々の練習強度と空気感だと思っています。補強もそうだし、どんな選手が揃っているかという要素も必要だと思う。今のFC東京にはレベルの高い選手が揃っているから、あとはそれをどう日々の練習で高みを求めていけるか。激しいポジション争いがチーム全体に広がって、良い競争、良い循環が生まれて、初めて優勝に手が届くのではないかと思う。
室屋 もうとにかく獲るしかないんですよね。一度獲れば、きっと劇的に変わるのではないかと思う。そこに辿り着くまでが一番難しいけど、一回獲れば歴史が変わるし、勝ち方が分かるはず。その最初の一歩を、何とか自分がいる時に刻みたいです。
取材・構成=馬場康平(フリーライター)
【動画】室屋×徳永のスペシャル対談・前編