鼻にシュッとスプレーを噴霧するだけなので、服用する薬よりも気軽に常用している方もいるかもしれません。しかし、使い過ぎや常用には注意が必要です。「鼻スプレー依存」がなぜ危険なのか、分かりやすく解説します。
鼻づまりは「正常な防御反応」……がまんできる症状なら薬は不要
そもそも鼻づまりは、体がウイルスや花粉と戦っている証拠です。細菌やウイルス、花粉などの異物が鼻腔に入ってくると、鼻粘膜では炎症反応が起こります。鼻粘膜下の血管が拡張して腫れ上がるため、物理的に鼻の通り道(鼻腔)は狭くなります。これは、異物がさらに奥の気道や肺へ侵入するのを防ごうとする、生体防御反応の1つです。
つまり、鼻がつまって苦しいのは、体が正常に機能している証拠でもあります。症状ががまんできる程度なら、薬で解消する必要はありません。鼻づまりの症状を抑えたからといって、感染症やアレルギーそのものが治るわけではないからです。
鼻づまりがあまりに苦しくて眠れない場合や、大事な試験や会議などで特に集中したい場合に、適切に使用してもよいでしょう。
即効性の高さには代償も……成分表でチェックすべき「血管収縮薬」の種類
鼻づまりを劇的に解消する薬の中で、特に注意したいのが「血管収縮薬」です。市販の鼻スプレーを購入する際は、パッケージの成分表示に以下の成分の記載がないかを確認してください。
・プソイドエフェドリン
・ナファゾリン
・フェニレフリン
・オキシメタゾリン
これらの成分はすべて「血管収縮薬」です。鼻腔内の血管平滑筋に直接働きかけて、強制的に血管を収縮させる作用があります。鼻腔の腫れ(うっ血)を引かせることで、スッと鼻の通りがよくなります。即効性が高く、使って10分もすれば鼻づまりがすっきりする効果が感じられるはずです。非常に便利です。
しかしこの「即効性」こそが、鼻がスッとして気持ちいいという依存を招く原因にもなります。そして長期間の使用は、症状を悪化させるリスクもあります。
鼻スプレーの連続使用は2週間まで! 症状が悪化する「薬剤性鼻炎」のリスクも
体は正常な防御反応として血管を広げているため、薬で無理やり血管を収縮させ続けると、「もっと血管を広げなければ」と過剰に反応するようになります。結果として、次第に薬が効きにくくなっていきます。それだけでなく、鼻スプレーを使うことでかえって鼻がつまってしまう「薬剤性鼻炎」を引き起こしてしまうことがあるのです。
鼻スプレーを使う場合、2週間以上の連続での使用は避けてください。血管収縮薬はあくまで「鼻づまり」という症状を一時的に抑える対症療法に過ぎません。もし2週間使っても症状自体が改善しない場合や、鼻スプレーの使用回数が増えていると感じる場合は、使用を中止し、耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
発熱や、目のかゆみ・くしゃみなど、鼻づまり以外の症状を併発している場合、血管収縮薬だけを使い続けても根本的な解決にはなりません。症状に応じて、抗炎症成分や抗アレルギー成分(ステロイドや抗ヒスタミンなど)を中心とした薬を選ぶのが、鼻の健康を守るためにも大切なことです。
▼阿部 和穂プロフィール薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))