傷害致死の罪に問われていたのは、福岡県糸田町の無職、松本亜里沙被告(29)です。
起訴状などによりますと、松本被告は 2018年7月、福岡県川崎町の当時の自宅で、生後11か月の長女、笑乃ちゃんの頭部に強い衝撃を与える暴行を加え、3日後に死亡させたとされています。
これまでの裁判で松本被告は「故意に暴行など振るっていません」と述べ、起訴内容を否認、弁護側は「持病のてんかんの発作による事故の可能性がある」などとして無罪を主張していました。
一方、検察は「松本被告は、通報時などにてんかんによる事故の可能性について言及せず、うその説明をして暴行したことを隠そうとした」などと指摘し、懲役8年を求刑していました。
3月3日の判決で、福岡地方裁判所の鈴嶋晋一裁判長は「てんかん発作が起きたこと自体に本人が気づいておらず、結果的に当初と違う説明をしたとしても不自然ではない」と指摘。
「間違いなく暴行したとは言えない」として、松本被告に無罪を言い渡しました。
そして最後に、松本被告に対し「笑乃さんがあなたの動作で亡くなったことは、あなた自身が一番よく分かっていると思います。 そのことを忘れないでください」と語りかけました。
判決後、取材に対して松本被告は「笑乃ちゃんへの思いは簡単には説明できない。責任があるのは自分が一番分かっている。死ぬまで反省、後悔する」と話しました。
事故か暴行か 裁判所の判断は
無罪判決が出た今回の裁判のポイントをまとめます。
争点は、笑乃ちゃんの死亡の原因が「事故か、暴行か」という点です。
まず、無罪主張をしていた弁護側です。
事件前、松本被告は第2子妊娠をきっかけに、持病のてんかんの薬の服用を自己判断で中断していました。
そのため、事件当日はてんかんの発作で抱いていた笑乃ちゃんを落とした、もしくは一緒に転倒した可能性があるとしていました。
これに対し、検察側は松本被告が通報の際、てんかんの発作の可能性に言及せず、笑乃ちゃんが「床に座って遊んでいて横に倒れた」などとうその説明をしたのは暴行を隠す目的だったと主張し、懲役8年を求刑していました。
福岡地方裁判所は判決で、松本被告が通報の際、てんかん発作の可能性に言及しなかったことについて「発作により前後の記憶が失われ、松本被告自身が発作を起こしたことに気付くことができなかった可能性がある」などとして、不自然とは言えないとしました。
その上で「笑乃ちゃんを抱いた状態で、てんかんの発作を起こすことは十分にありえる」として無罪を言い渡しました。
福岡地方検察庁は「判決内容を精査し、上級庁とも協議のうえ、適切に対応する」としています。